Think&Act! 関大生 タオルがセンサーに!? 日常を"測る"技術で社会課題に挑む関大生 理工学研究科 システム理工学専攻
博士課程前期課程 2年次生
川延 美裕さん 

 「圧電組紐センサー」を共同開発し、社会実装に取り組む田實佳郎教授の計測物性工学研究室。理工学研究科の川延美裕さんは、企業や団体などと連携した多彩なプロジェクトに携わり、取りまとめ役を担っています。日々、技術で人の暮らしを支えることに熱意を注ぎ、新たな可能性を模索する川延さんにお話を伺いました。

創るチカラを学びたい!その想いが理工学部の扉を開く

—関西大学理工学部を目指したきっかけは?

 高校時代、私は地元で強豪校として知られるバスケットボール部に所属していました。部活に専念するため、一般受験ではなく3年間の学力の積み重ねで進学できる方法を探していたときに関西大学の「高大接続パイロット校推薦」を知り、オープンキャンパスに参加しました。数学教諭を目指して数学科への進学を考えていたのですが、そこでシステム理工学部・田實佳郎教授との出会い、大きな転機となりました。
 帝人フロンティアやソフトバンクとの共同開発の話を聞き、「大学ってこんなこともできるんだ!」「自分も何かを作り上げてみたい!」と強く思い、システム理工学部への進学を決意しました。

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—研究内容について教えてください。

 田實教授の研究室では、柔らかい材料を用い、曲げ・引っ張り・ねじりなどの動きに反応して信号を発するセンシングデバイスの研究を行っています。帝人フロンティアと共同開発した「圧電組紐センサー」は、圧力を加えると電気を発生するポリ乳酸繊維を導電繊維と組み合わせ、組紐状にしたウェアラブルセンサーです。布や衣服に縫い付けることができ、縫い方の違いによって複雑な動きを検知し識別できるのが特長です。

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睡眠時のバイタルセンシングへの応用にあたっては、学生が何度も検証を行ったそう

 既存の硬いセンサーでは難しかった柔軟素材への応用を可能にし、衣服やタオル、シーツなど身近なファブリックをセンシングデバイスへと変えることができます。この技術は教授や先輩方が長年にわたって研究を重ね築き上げてきた成果で、現在は応用や社会実装に向けた複数のプロジェクトが進行中です。

—理工学研究科での研究活動の魅力は何ですか?

 研究室を見学した際、応援タオルを活用した圧電組紐センサーの実演を見て、さまざまな用途で展開できる研究であること、そして社会課題の解決に直結する実践的な研究スタイルに魅力を感じました。
 実は学部時代に就職活動をし内定もいただいていたのですが、「田實先生と研究できるのは今しかない!」と思って大学院への進学を決めました。

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 現在はプロジェクトの取りまとめ役として企業との会議にも参加し、学生の立場で社会に新たな価値を生み出す過程に携わることに大きなやりがいを感じています。複数のプロジェクトが同時進行する中で、教授からの指示内容を正確に確認し、進捗状況を院生同士で必ず共有するなど、互いに支え合う意識を大切にしています。

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研究への熱意と挑戦心は、身近な悩みを解決することから

—圧電組紐センサーは、どんな場面で活用できるんでしょうか?

 私が携わる「応援度の可視化」「睡眠中のバイタルセンシング」「術後犬のバイタル計測」「生物の命のリズムの可視化」の4つのプロジェクトは、いずれも実装の目処が立ち、現在は調整段階にあります。

 例えば「応援度の可視化」では、観客が振る応援タオルの動きを解析し、その熱量をスクリーンに映し出す実証実験を行いました。「睡眠中のバイタルセンシング」では、シーツや衣服に組み込んだセンサーで、睡眠中の心拍や寝返りを計測できます。「術後犬のバイタル計測」では、センサーを縫い付けた衣服を犬に着せることで、術後の健康状態をリアルタイムで把握可能になりました。さらに「生物の命のリズムの可視化」では、絶滅危惧種ハクセンシオマネキの求愛行動をテーマに、装着したリストバンドを通じて身体の動きを映像や音に変換し、没入型の体験を可能にしています。この研究は、大阪・関西万博のBLUE OCEAN DOMEのパビリオン催事で発表することができました。
 今後はセンサーの信号から心拍数を自動抽出する方法や、体動を正確に識別しデータを補正する手法など、必要な情報を効率的かつ正確に取得するための手段やデータ解析方法を模索していきたいと考えています。

251029_kt_think04.png 圧電組紐センサーを縫い付けたタオル 251029_kt_think03.png 圧電組紐センサーを用いたセンシングマットレス

—研究への熱意が伝わってきます。

  膨大な準備と時間をかけ、細心の注意を払って何度も実証実験を繰り返しても、予想外の結果が出ることは少なくありません。それでも新たな発見につながったときの喜びや楽しさは格別です。自分たちの研究成果が社会から評価され、ポジティブな反応をいただけたときには大きな達成感があります。

専門用語を誰でも分かる言葉に変換?!

—プロジェクトの取りまとめ役として苦労したことは?

 研究員として企業と連携しプロジェクトを進める中で、さまざまな立場の方に研究技術を正しく伝えることの難しさを実感しました。過去の発言との食い違いや、専門用語の多用によってうまく伝わらないことがあり、コミュニケーション面の課題に気付きましたね。

—現在はどのように工夫していますか?

 相手の立場や役割に応じ、わかりやすい言葉で伝えるよう心がけています。専門用語を避け、具体的で身近な例えを使うようにしています。 また研究室内でも、教授に指示を仰ぐ際は単に作業内容を聞くのではなく、「企業は何を求めているのか」という本質を意識し、相手の期待に応えるためにどうするべきかを自分で考えて行動するようにしています。

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—川延さんの今後の目標や夢を聞かせてください。

 研究室で多様な分野のデータに触れる中で、新しい発見をする楽しさを知り、データに関わる仕事を志すようになりました。大きなイノベーションよりも、身近な人に喜んでもらえる開発にやりがいを感じています。 卒業後はコンサルティングとIoTを融合した企業への就職が決まっています。データ分析を生かしたコンサルティングを通じて、一人ひとりの話に耳を傾け、課題解決を共に考えることで、身近な人のお困りごとを支えたいと思っています。

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—今、後輩に伝えたいことは?

 私は関西大学での6年間で、多くの経験や学び、人とのつながりを得ることができました。学生の起業を支援する「HACK-Academy」にも参加し、起業を考えていた時期もあります。 さまざまな学生の要望に応えてくれる環境と、親身に寄り添ってくださる教職員の存在があり、自分の可能性を広げられるのは総合大学である関西大学ならではだと思います。
 少しでも興味を惹かれることがあり、それが「今しかできないこと」なら、迷わず挑戦してほしいです。きっとそれが大きな成長につながります。

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理工学研究科 システム理工学専攻
博士課程前期課程 2年次生
川延 美裕さん

静岡県 浜松開誠館高等学校出身