Spanish スペイン語

1.21ヶ国、5億人のことば、スペイン語

■地中海の町 ミハスの白い家並
■地中海の町 ミハスの白い家並

 スペイン語は名前のとおりヨーロッパの国スペインの言語です。けれどもそれはスペイン人だけのものではありません。世界には約5億人の母語発話者がいます
 スペイン以外にこの言葉を公用語としているのは、おもにラテンアメリカの諸国です。メキシコ、アルゼンチン、ペルー、コロンビア、チリ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、ベネズエラ、エクアドル、ボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、エルサルバドルといった国が挙げられます。アフリカの赤道ギニア共和国でも公用語の1つはスペイン語です。
 アメリカ合衆国にも約6,400万人ヒスパニックと呼ばれるラテン系の人々がいます。ヒスパニックパワーは大統領選挙の行方すら左右し、アメリカ文化に強い影響を与えています。公共施設では英語と併記されるなど、スペイン語の重要度は高いです。この言葉を身につけておけば、アメリカ留学をしようという時にも、現地で役立つはずです。
 なお、スペイン語は中国語、英語、フランス語、ロシア語、アラビア語とともに国連の6つの公用語のひとつです。EUユネスコなど、各種国際機関でも相互理解に不可欠な言語です。

2.スペイン語はおぼえやすい

 スペイン語を耳にしたことがありますか。「いいや、知らないよ」という人も、明るくにぎやかなことばだというイメージをお持ちでしょう。スペイン語は明快でとても発音しやすいことばです。読みはローマ字とほぼ同じ。母音の数も日本語と同じ5つです。注意がいるのはqui「キ」やque「ケ」、あるいはgi, ji「ヒ」、ge, je「へ」のつづりなどです。
 たとえば、朝のあいさつは“Buenos días(ブエノス ディーアス).”。お昼になると“Buenas tardes(ブエナス タルデス).”。そして「おやすみなさい」が“Buenas noches(ブエナス ノーチェス).”。ね、おぼえやすいでしょう?
 発音がわかりやすく、単語もスーッと頭にはいります。身の回りにもスペイン語がありますよ。ピリッと辛いsalsa(サルサ)とはソースのこと。楽器のcastañeta(カスタニェタ)は小さな(カスターニャ)の意味で、楽器のカスタネット。taxi(タクシ)「タクシー」、tren(トレン)「列車」、cultura(クルトゥラ)「文化」など、英語と共通する語彙もたくさんあり、ちょっと難しいものでも sistema(スィステマ)「制度」のように辞書いらずの語が少なくありません。
 英語と違うのは、動詞の語尾のかたちが変わること。たとえば、vivir(ビビール)「生きる」。Vivo(ビボ).は「わたしが生きる」ですが、Vive(ビベ).とすれば、「彼は生きる」になります。“¿Vives en Osaka?”(ビベス エン オーサカ)なら「きみは大阪に住んでいるの?」と、語尾の違いで主語が変わるのです。

■ゆかいな雑貨屋さんのショーケース
■ゆかいな雑貨屋さんのショーケース
■焼きたてのパン 甘い物好きにはたまりません
■焼きたてのパン 甘い物好きにはたまりません

 スペイン語はポルトガル語、イタリア語、フランス語、ルーマニア語などラテン語(古代ローマの言語)から分かれたことばの仲間です。そのため、スペイン語を通じてさらにほかのことばへ近づくことも可能です。ことにイタリア語やポルトガル語とはとてもよく似ており、ネイティブ同士であれば、それぞれのことばで勝手に話していても互いに理解できるそうです。

3.多様な産業・広がる経済圏

■首都マドリードには歴史と斬新さが共存する
■首都マドリードには歴史と斬新さが共存する

 スペインといえば、オリーブやヒマワリなどの農業が盛んなイメージがあるでしょう。しかし国が振興する観光をはじめ、機械、化学、畜産、水産、食品、医療機器など多様な産業が経済を支えています。ファッション界での躍進も目覚ましく、ZARA(サラ)、シビラ、カンペールといったカジュアル衣料から、ロエベ、ヤンコ、カレラ・イ・カレラなどの高級ブランドまで幅広く日本に紹介されています。バレンシアの有名な陶器工房リヤドロは、雛人形や五月人形も扱います。食料品では、オリーブオイルや魚介の缶詰、ハムにチーズと豊かな食材が輸入されています。お酒も気楽なテーブルワインから発泡酒のCAVA(カバ)まで何でも手に入ります。世界的な再編がつづく自動車産業では、日本では並行輸入だけですがSEAT(セアト)があります。バイクメーカーのGASGAS(ガスガス)もあります。
 ラテンアメリカも巨大な経済圏です。日本はメキシコ、チリ、ペルーといった国々とFTA(経済連携協定)を締結しています。近年、アジア諸国のラテンアメリカ進出の動きが加速。両者の関係はいっそう強化され、経済協力の仕組みが整いつつあります。
 ところが、こうした世界におけるスペイン語の需要の高まりに比して、スペイン語の知識をもつ日本人の数はまだまだ不足しています。国の未来の展望のためにも、ぜひ解決しなくてはならない課題です。

4.おいしいもの自慢

 この頃、街中でよく見かけるスパニッシュ・バルでイベリコ豚をためしてみればわかるように、スペインの食べ物はこの上なく美味。エビやムール貝など魚介たっぷり、サフランの香りゆたかな米料理パエーリャや、バゲットにウナギの稚魚やアンチョビなどをのせた流行のおつまみピンチョス、タパスの定番ハモン・セラーノ(生ハム)やトルティーリャ(スペイン風オムレツ)など、ごちそう揃い。満腹になってもデザートは別腹。クレマ・カタラナ(クレーム・ブリュレ)の注文は忘れずに。
 ラテンアメリカも美食の宝庫。薄焼きのトルティーヤ(トウモロコシ・パン)に牛肉などを包むメキシコのタコス。ペルーの新鮮魚介類のマリネ、セビーチェ。アルゼンチンの肉詰めパイ、エンパナーダなどおいしいものがいっぱいです。お酒の種類も豊富。ワインやビールのほかに、強烈なテキーラやラムといったスピリッツも好まれます。

5.文化世界遺産

■おしゃれなデザインのグエル公園(バルセロナ)
■おしゃれなデザインのグエル公園
(バルセロナ)

 スペインと聞いて思い浮かぶのがフラメンコ闘牛。それもこの国の一面に違いありません。でも、もっとすてきな魅力にあふれています。まずは音楽。スペインはギターの生まれ故郷。ロドリーゴ「アランフェス」やターレガ「アルハンブラの思い出」は、きっとどこかで耳にしたはず。ファリ「恋の魔術師」も心躍る名曲です。
 スペインは美術の国でもあります。ピカソダリベラスケスゴヤといった画家たちが迎えてくれます。首都マドリードのプラド美術館は、ルーブルやエルミタージュとならぶ世界三大美術館のひとつです。スペイン第二の都市バルセロナにあるサグラダ・ファミリアは、カタルーニャの建築家アントニ・ガウディが140年以上前に建築を始めた教会ですが、完成は2026年と言われています。
 一方のラテンアメリカ。ここではアステカ、マヤ、インカといった過去の文明の神秘と出合えます。メキシコの太陽の神殿チチェンイツァー、ペルーでは空中都市マチュピチュナスカの地上絵など。さらに希少動物たちの棲息地ガラパゴス、世界最大となるイグアスの滝など、たくさんの世界遺産がみなさんの訪問を待っています。
 スペイン語をおぼえて、ぜひスペイン語圏の国々を巡り歩いてみてください。

■古代ローマの水道橋(セゴビア) 高さ30メートル
■古代ローマの水道橋(セゴビア) 高さ約30メートル
■標高2500メートルに築かれたインカの空中都市 マチュピチュ(ペルー)
■標高2500メートルに築かれたインカの空中都市 マチュピチュ(ペルー)

6.スポーツ

 La Liga Española(ラ・リーガ・エスパニョーラ)といえば、スペイン・サッカーリーグのこと。イギリスのプレミアリーグやドイツのブンデスリーガ、イタリアのセリエAなどとならんで欧州最高のプレーを誇ります。レアル・マドリードバルセロナセビージャバレンシアを加えたリーガのチームは、UEFAチャンピオンズリーグの常連です。2010年のワールドカップでは、悲願の世界一の栄光を手にしましたが、前回の2022年大会ではベスト16にとどまっています。王国の復活が望まれます。ちなみに、同じくスペイン語圏の国であるアルゼンチンは3度、ウルグアイも2度優勝を果たしています。

レアル・マドリードの本拠地 サンティアゴ・ベルナベウ・スタジアム
試合の1コマ
■レアル・マドリードの本拠地 サンティアゴ・ベルナベウ・スタジアム(左)と、試合の1コマ

 サッカーのほか、水泳、テニス、モータースポーツ、バスケットボール、ゴルフなど、多くの一流スポーツ選手がスペイン出身です。テニス界には、全仏オープンでは五連覇を達成、生涯グランドスラムも獲得している男子テニス界の王者ラファエル・ナダルがいます。自動車レースの最高峰F1には、スペイン、メキシコから参戦中(2023年シーズン)。ブエルタ・ア・エスパーニャは、約200名の選手たちが三千キロ以上の険しいコースを走破する、ツール・ド・フランスと並んで著名な自転車レース。このようにスペインは欧州随一のスポーツ王国です。
 また日本球界で活躍したゴンザレスやカブレラの出身地ラテンアメリカは、ベネズエラ、ドミニカ、キューバなど、野球の強豪国ばかり。メジャーリーグにも多数の逸材を送り出しています。

7.授業のあらまし

 ここからは、関西大学でスペイン語をどのように学べるかをお話しましょう。

1.千里山キャンパス

 千里山キャンパスにある法学部、文学部、経済学部、商学部、社会学部、政策創造学部、システム理工学部、環境都市工学部、化学生命工学部では、入学年度にスペイン語Ⅰa/b、スペイン語Ⅱa/bを履修します。スペイン語Ⅰでは共通教科書を用いて初級文法を学び、聞く、話す、読む、書くことの基礎力を身につけます。スペイン語Ⅱでは担当教員による特色ある授業で、基礎力アップを目指します。2年次にはスペイン語Ⅲa/b、スペイン語Ⅳa/bに進みます。スペイン語Ⅲおよびスペイン語Ⅳでは、1年次に学習したことをもとに、スペイン語によるコミュニケーションにつながる理解力、表現力の向上を目指します。
 ところで、スペイン語ⅢとⅣには、コミュニケーション・クラスがあります。さらなる会話力の訓練をします。3年次以降には自由科目のスペイン語Ⅴa/bスペイン語Ⅵa/bが設けられており、作文や講読などでスペイン語の強化が可能です。
 また、同じく千里山キャンパスにある外国語学部については、他学部とは異なり、入学年度にプラスワン外国語(スペイン語)Ⅰa/b、プラスワン外国語(スペイン語)Ⅱa/bを履修します。さらに、スタディー・アブロード(SA)から帰国後の3年次には選択科目として、プラスワン外国語(スペイン語)Ⅲa/b、プラスワン外国語(スペイン語)Ⅳa/bを履修することができます。プラスワン外国語(スペイン語)Ⅰ、プラスワン外国語(スペイン語)Ⅱはコミュニケーション能力のための素地作りとして、スペイン語文法の基礎知識を身につけます。プラスワン外国語(スペイン語)Ⅲ、プラスワン外国語(スペイン語)Ⅳは、初級文法の要点を復習しながら主にプレゼンテーションを主とするコミュニケーション活動を行います。
 なお、高槻ミューズキャンパスの社会安全学部と堺キャンパスの人間健康学部でも、千里山キャンパスに通うことで履修が可能です。

図A.千里山キャンパスでのスペイン語履修のイメージ
図A.千里山キャンパスでのスペイン語履修のイメージ

2.高槻キャンパス

 高槻キャンパスの総合情報学部では、第二外国語として1年次にスペイン語Ⅰa/b、2年次にスペイン語Ⅱa/bを履修します。3年次には選択科目として、スペイン語Ⅲa/bを履修することができます。スペイン語Ⅰは共通教科書を用いて初級文法を学び、聞く、話す、読む、書くことの基礎力を身につけます。スペイン語Ⅱでは担当教員による特色ある授業で、基礎力アップを目指します。選択科目のスペイン語Ⅲは応用学習のクラスです(スペイン語に限らず、外国語の力をしっかり身につけようという方は、選択科目まで履修することをぜひお勧めします)。詳細はシラバスを参照してください。

図B.高槻キャンパスでのスペイン語履修のイメージ
1年次 スペイン語Ⅰ(基礎学習)
2年次 スペイン語Ⅱ(基礎発展学習)
3年次(選択科目) スペイン語Ⅲ(応用学習)

8.辞書案内

 辞書は外国語学習に欠かせない大切な道具です。お薦めのものを下に紹介します。なお、電子辞書は便利ですが、ことばの上達のためには書籍のかたちの辞書を一冊、ぜひ手元に置きましょう。近年はウェブ上の無料の辞書やアプリも利用できるようですが、メリットとデメリットを確かめたうえで利用してください。

西和辞典
(スペイン語から日本語)
まずは宮城昇他編『現代スペイン語辞典 改訂版』(白水社、1999年)。初心者にも使いやすく、在学中、不自由しないはずです。収録語数は減りますが、持ち運びやすいコンサイスの辞書には鼓直他編『プログレッシブスペイン語辞典』(小学館、1999年)があります。高垣敏博監修『西和中辞典』(小学館、2007年)は、新聞や小説を読むのに手元におきたい一冊です。また、山田善郎他監修『スペイン語大辞典』(白水社、2015年)も、最大の収録語数を誇る西和辞典です。
和西辞典
(日本語からスペイン語)
担任者の指示に従って用意してください。有本紀明他編『和西辞典 改訂版』(白水社、2000年)、上田博人他編『クラウン和西辞典』(三省堂、2004年)などがあります。

9.自主学習・課外学習

 学内の公認サークル、スペイン語研究部では、検定試験の対策を練ったり、留学に備えたりと活動も盛んです。仲間と部室に集って切磋琢磨することで、楽しくことばが身につきます。
 ところで、自宅での勉強にはどのような手段があるでしょうか。最近はインターネットの会話教室やPCのソフトウェアも利用できますが、ラジオ・テレビ講座と自習書もお勧めです。NHK・Eテレの『しあわせ気分のスペイン語』では、文法説明といっしょに文化紹介が楽しめます。2023年度は、木曜日 午後11:30~11:53に本放送、再放送は金曜日午後:3:00〜3:20でした。リスニングやリーディングの勉強にはラジオが好適です。『まいにちスペイン語(入門編)』は月曜~水曜の午前7:15~7:30、『まいにちスペイン語(応用編)』は、木・金曜の同じ時間にNHKラジオ第2放送で流れています(放送時間は変更の場合がありますので、番組表で確認してください)。ラジオはインターネットのストリーミングも利用できます。
 入門書にはたくさんの種類があり、それぞれ特徴があります。ここでは福嶌教隆『くらべて学ぶスペイン語』(朝日出版社、2010年)を紹介しますが、書店で相性のよいものを探してみましょう。
 スペイン語を学んだら、もっとたくさんのことを知りたくなるはず。西村君代『中級スペイン語読みとく文法』(白水社、2014年)は手元に置くと便利な文法の案内です。東谷穎人『はじめてのスペイン語』(講談社現代新書、1994年)と福嶌教隆『スペイン語の贈り物』(現代書館、2004年)もスペイン語についてのためになる楽しい読み物です。また、西川喬『わかるスペイン語文法』(同学社、2010年)は頼れる解説書です。

10.検定試験と留学制度

 スペイン語の検定試験には、日本スペイン協会主催のスペイン語技能検定(1級~6級)、通称スペ検と、スペイン教育・職業訓練省公認で、インスティトゥト・セルバンテスが実施するスペイン語検定DELE(A1入門・A2初級・B1中級・B2中上級・C1上級・C2最上級)があります。
 また、DELEと同じく読解、聴解、文章表現、口頭表現の4種類の問題が出題され、合否ではなく1点~1000点の点数で評価が出るSIELE(A1~C1)もあります。
 サンティアゴ・デ・コンポステラ大学をはじめとするスペイン語圏の協定校への交換留学制度もあります。交換留学制度の詳細は国際部に問い合わせてください。

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