Chinese 中国語

1.さあ、始めよう!第二外国語を

中国風の飾り
中国風の飾り

 外国語を学ぶということは、どういうことでしょうか。
 人は言語によって考え、思考は言語に規定されます。人は各々の属する社会の言語を用いて、現実世界の森羅万象を切り取り、それを把握します。母語以外の言語を知ることによって、その言語を用いて思考している人々の宇宙の切り方と把握の方法を、私たちは追体験することができるのです。それだけでも新たな発見を得るでしょうし、知的好奇心を満たされるはずです。もし、そのことが「教養」という名にふさわしいとすれば、私たちが外国語を学ぶ理由は、この点にもあるでしょう。
 むろん、言語のもっとも大切な機能は思想交流の手段なのですから、外国語を手段にして、その言語の話し手と直接コミュニケーションできるようになってこそ本物といえます。ですから外国語学習は、教養のためでもあり、実用のためでもあるのです。

2.十数億人と友達に!

 では、何語を学ぶか。上述のことを考えれば、既修の英語とは異質な文化を担うアジアの言語に取り組んでみるのも、世界認識の新たな発見につながるでしょう。なかでも、中国語は、東アジアにおける漢字文化圏の中心言語として巨大な文化的影響と悠久の歴史をもつことは、みなさんご存知の通りです。このこと自体が中国語を学ぶ者にとって既に大きな魅力の一つとなっています。また、現実の世界を見れば、中国語は世界中でもっとも多くの人々に使われている言語であり、国連公用言語の一つでもあります。中国や台湾はもとより、東南アジアをはじめ、世界各地の華僑や華人の社会でも使用されています。いわば地球上で十数億の友人ができる可能性を持つ言語を学ぶこと、それもまた魅力的でしょう。実際、関西大学に学ぶ留学生に目を向ければ、もっとも多いのが中国語を母語とする人たちです。
 これから私たちが学ぼうとする「中国語」は、多民族国家・中国で人口の90数パーセントを占める漢民族の言語です。日本の26倍もある広大な国ですから方言の差が激しく、広東語(香港でも使用)、福建語(東南アジアでも使用)、上海語など、同じ中国人同士でも通じないのが当たり前。そこで共通語が必要になります。公の席はもとより、学校や公共放送で、また文学、映画、演劇などの芸術やマスコミで日常的に用いられている共通語です。これは北方の方言を基礎にして成立したもので、中国語で普通話プートンホアと言います。私たちが学ぶのも、この共通語なのです。

3.言葉は音!

 では次に、これから学んでゆく科目の内容を学部ごとにごく簡単に紹介しておきましょう。

(1)法、文、経済、商、社会、政策創造、システム理工、環境都市工、化学生命工学部

 原則として1年次で学ぶ中国語Ⅰa・Ⅰbと中国語Ⅱa・Ⅱbは、2つ併せて「入門篇」です。この2科目の目標は、大きく区分すれば次のように位置づけられます。

中国語Ⅰa,b 音声言語を中心にして、基礎語彙と表現文型を体得する。
中国語Ⅱa,b 単文を中心にした基礎文法、主として構文を体得する(書面語を含む)。

 この2科目の目的は、相互に関連させながら、中国語の骨組みを頭で理解するだけでなく、身体にたたきこむことにあります。どちらの科目も、まずなにより発音練習が第一です。
 どんな言語であっても、正しい発音を身につければ、自分の言いたいことが伝わりやすくなりますし、相手の言っていることもよくわかりますから、発音は大事です。中国語の発音は難しいと言われることがあります。しかし、世界の言語の中でも特に難しいというわけでは決してありませんから、それほど恐れる必要はありません。「間違った発音をしない」ということが大事なので、繰り返し練習していれば、必ず言えるようになります。
 この時期は、ひたすら模倣、繰り返し、暗記といった作業が欠かせません。将来、自分から発信したり、運用したりするためには、どうしてもそういった単純なインプットの時期が必要だからです。なお、学習到達レベルとしては、習得語彙数は800前後で、中国語検定試験準4級合格程度とします。
 次に、主として2年次で履修する中国語Ⅲa・Ⅲb中国語Ⅳa・Ⅳbの2科目は、原則として中国語Ⅰa・Ⅰbと中国語Ⅱa・Ⅱbの内容を理解し、さらには運用しうるものという位置づけで置かれる科目です。これも、中国語Ⅰa・Ⅰbと中国語Ⅱa・Ⅱbの延長として、

中国語Ⅲa,b 書面語の読解力を養成し、文法力と語彙力を増強する。
中国語Ⅳa,b 音声言語あるいは口語的な文体に親しみ、運用力を増強する。

 という区分を考えてはいますが、この4科目は「基礎篇」ということができます。ここまで学び終えれば、中国語の基礎ができたといえます。基礎力があるということは、ひとりで飛躍することもできるはずだということです。学習到達レベルは、1年次と併せて習得語彙数は1,400~1,600で、中国語検定試験3級合格をめざす程度とします。
 さらに、中国語では運用面の強化をはかり、コミュニケーションのクラスを開設しています。次にコミュニケーションクラスの概要を紹介しますので、希望する場合は忘れないように登録をしてください。使える中国語をめざす諸君には是非履修していただきたいクラスです。

□コミュニケーションクラス

 これは希望者が選択して登録するクラスです。
 Ⅰab,Ⅱabでは,週2回の授業を2人の教師が担当しますが,同一の教科書を用い,リレー式に授業を進めるので,実質的には,同一の授業が週2回あるのだと考えてよいでしょう。
 コミュニケーションクラスの特徴は,基本的な語彙や文法の学習と同時進行で,口頭でのコミュニケーションを行う訓練を重点的に行うことです。ですから,このクラスは,通常クラスよりもやや小規模なクラス編成になっています。また,成績評価も,期末の筆記定期試験は行わずに,すべて通常の授業の成果で評価します。つまり,どれだけ積極的に授業に参加し,どれだけコミュニケーションスキルを身につけたかで評価されます。このクラスに参加すると,ことばの学習とは,教室にすわっておとなしく聞いているだけではだめだということ,自分で積極的に口を開いて何かを発信しなければ,コミュニケーションの能力が身につかないことが理解できると思います。
 Ⅲab,Ⅳabでも引き続き、音声言語を対象とした中国語の能動的な運用能力をつける訓練の場として聞き取り、作文、会話を中心とした授業を行います。成績評価についてもⅠab, Ⅱabのコミュニケーションと同様に定期試験ではなく通常の授業時における評価で行いますが、授業の進め方は2人の教師のリレー方式ではなくそれぞれの教員が、それぞれ別の教科書を用いて進めます。
 ※希望者は、各年度ごとに登録してください。

 さらに上級をめざす諸君には、中国語Ⅴa, bと中国語Ⅵa, bを開講しています。ここは、学習レベルを考慮に入れた教科書中国語から飛び出し、書面語であれ音声言語であれ、「生」の中国語に挑戦する訓練の場です。さらに高く飛翔したい人、中国語をものにしたい人のための「応用篇」といえます。学習到達レベルとしては、習得語彙数は2,000前後で、多くの人が中国語検定試験3級に合格し、しっかり勉強した人なら2級をめざす程度とします。
 以上の履修方法をチャートで示すと、次のようになります。

(2)外国語学部

 1年次で学ぶプラスワン外国語(中国語)Ⅰa・Ⅰbとプラスワン外国語(中国語)Ⅱa・Ⅱbは、中国語の発音を一から学習したのち、日常的な基本語彙と、簡単な文のパターンを使って、初歩的なコミュニケーションを行う練習をします。この2つの科目は、同じ教材を用いてリレー式に授業を行います。
 次に、スタディー・アブロードから帰国後の3年次に、選択科目として履修できるプラスワン外国語(中国語)Ⅲa・Ⅲbとプラスワン外国語(中国語)Ⅳa・Ⅳbは、基礎を復習したうえで、語彙を増やし応用力を身に付け、中級レベルの読解力と会話力を養うことをめざします。
 以上の履修方法をチャートで示すと、次のようになります。

(3)総合情報学部

【1年次】中国語Ⅰa,b 音声言語を中心に、基礎的な力を身につける。
【2年次】中国語Ⅱa,b 1年次で学んだ中国語Ⅰa, bを基礎に、応用力を養成する。
【3年次】中国語Ⅲa,b(選択科目) 中国語Ⅰa, b~Ⅱa, bで学んだ事項をもとに、更なる応用力を養成する。

 以上をチャートで示せば、次のようになります。

(4)社会安全、人間健康学部

 中国語Ⅰa・Ⅰbと中国語Ⅱa・Ⅱbを選択科目として受講することができます。
 中国語Ⅰと中国語Ⅱは、同一のテキストを用いてリンクさせながら授業を行うことにより、中国語の基礎を着実に身につけることをめざします。中国語検定試験準4級合格が、学習到達目標の目安です。

4.積極、とことん、やるのは君

紹興東方山水公園玄宇園
紹興東方山水公園玄宇園

 さて、教室にただ座っているだけでは、どんな天才でも外国語をマスターすることは不可能です。結局、自分が勉強しなければ、何も始まらないのです。外国語マスターの秘訣と言って、特別な方法があるわけではありません。やる気と根気と、そして持続さえできれば、だれでも中国語の基礎くらいマスターできます。
 また、授業だけでは絶対的に時間不足なので、さまざまな機会を利用して中国語を耳にし、声に出すようにしましょう。以下思いつくままに。
 関西大学の協定大学である北京大学、復旦大学(上海)、静宜大学(台湾)等への交換留学もあります。情報を収集するには、国際部に足を向けてください。
 暗唱大会・弁論大会に出てみるのもいいでしょう。何種類もありますが、上位入賞者を中国や台湾旅行に招待したり、さらには1カ年留学させてくれる場合もあります。こんな有り難いものに挑戦しない手はありません。しかも、これまでに多くの先輩たちが、いろいろな大会に参加して、しかも毎年のように上位入賞を果たしています。
 また、NHKのラジオ・テレビ中国語講座もずいぶん工夫がこらされており、信頼できますから、これも利用すべきです。要するに、利用できるものは何でも利用しましょう。
 積極、果敢、とことん、徹底こそ、外国語マスターの特効薬なのです。

5.辞書─自分だけのこの1冊を

 外国語といえば辞書ですが、現代中国語の中型辞典で学習辞典としても使えるのは、

  • 『中日辞典』 小学館(第3版)
  • 『白水社中国語辞典』 白水社
  • 『講談社中日辞典』 講談社(第3版)
  • 『東方中国語辞典』 東方書店

 などです。ちょっと値段が張りますが、ひとつ奮発して買っておくほうが覚悟ができていいでしょう。電子辞書の場合も、これらの辞書が収録されていることを条件に選んでください。なお、基本語だけを収めた学習辞典に、

  • 『標準中国語辞典』 白帝社(第2版)
  • 『中国語学習辞典』 朝日出版社

 があり、基礎語彙の意味用法を自分の「ものにする」ための辞書です。
 とにかく、辞書はこれ1冊で足りるというものではありません。辞書の不足をあげつらうのは容易ですが、このような世上の俗論に耳を傾ける必要はありません。それぞれに苦心の成果であり、互いに相補い合うものですから、本格的にやろうとする時には、辞書は多いほどいいに決まっています。ただし、入門や基礎の段階でいちばん大切なことは、自分自身が引きこなすことのできる「自分」だけの辞書をはやく持つようにすることです。また、最近では、インターネット上に公開され無料で利用できる辞書もあります。詳しくは、担当の先生に聞いてみて下さい。

6.参考書

夕暮れの柯橋古鎮
夕暮れの柯橋古鎮

 参考書は枚挙にいとまがないとはいえ、文字通りの玉石混淆ですが、石と玉を見分ける能力は、教室で真剣に取り組んでいるかどうかによります。でも、そう言ってしまうと身も蓋もないので、文法関係のほんの一部のみあげておきます。
 次のような参考書は、初級の人だけでなく、さらに上をめざす人が読んでも面白いでしょう。

  • 木村英樹『中国語はじめの一歩』(ちくま新書)1996年 新版(ちくま学芸文庫)2017年
  • 中川正之『はじめての人の中国語』(くろしお出版)1996年
  • 佐藤晴彦他『中国語表現のポイント99』(好文出版)1997年

 文法書は、初級用のものに、

  • 守屋宏則『やさしく くわしい 中国語文法の基礎』(東方書店)1995年
  • 相原茂、石田知子、戸沼市子『Why?にこたえるはじめての中国語の文法書』(同学社)1996年 新版 2016年

 があり、中国語Ⅰ~Ⅳをしっかりやった人以上なら、杉村博文『中国語文法教室』(大修館)1994年、丸尾誠・李軼倫『中国語解体新書』(駿河台出版社)2017年があります。多くの入門書は基礎文法の解説書になっていますから、目次や索引の充実したものを手元に置いておけば、役に立つことでしょう。また、最近ではウェブ上でも様々に工夫された教材があります。自分に合ったものを見つけてください。
 また、そもそもは中国の大学生たちの中国語学習のために編んだものの翻訳ですが、

  • 『中国語文法用例辞典』(東方書店)2003年
  • 『現代中国語総説』(三省堂)2004年

 などがあります。もっとも、このような本を参考にするような人はもはや中級から上級に向けて飛躍しようとする人です。

7.検定試験

 中国語の検定試験には、年に3回(3月、6月、11月)開催される日本中国語検定協会による「中国語検定試験」や、中国の教育部が認定する「漢語水平考試」(通称HSK)などがあります。このような試験によって、自分の中国語の力を客観的に測ってみるのも良いでしょう。

 最後に一言。初級段階でいちばん大切なことは、積極的な授業への参加と教科書を完全に理解することです。さらに嫌になるほど繰り返し音読することができれば、あなたの一生の知識となるかもしれません。

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