法学部で学術講演会を開催いたしました。
【日時】2025年10月21日(火)16:20~17:50
【場所】千里山キャンパス 第1学舎5号棟E503教室
【講演タイトル】
Trump's Innovations in Corruption: Implications for A Vanishing Democracy
(トランプが生みだした腐敗:消滅しかけている民主主義への含意)
【講演者名】
バリー・ボーズマン博士
アリゾナ州立大学名誉教授
オハイオ州立大学政治学Ph. D
「公的立場にある人物が、その職務の正統な目的とは無関係の個人的利益を追求するために、意図的に社会の核心的価値に反したり、法を無視したり、捻じ曲げたり、あるいは確立している倫理規定に反したりすることを、政治的腐敗と呼ぶ」――こう定義した上で、バリー・ボーズマン先生は危機に直面するアメリカの民主主義の現状について分析した。
政治的腐敗には、民主主義が存在しない国における専制的リーダーによる腐敗もあるが、民主主義国が懸念すべきは、見えない形で行われる腐敗、行われていることはわかるが意図がつかみにくい腐敗等である。これに加えて、ボーズマン先生はトランプ大統領が新たなタイプの腐敗を生み出したことに焦点を当てる。つまり、腐敗を恥ずべきものと認識すらしないことで、正々堂々と行われる腐敗である。
ボーズマン先生は、なぜトランプの腐敗が止められないのかという疑問に対し、本来、三権分立の下で制約を加えるべき立法府や司法府、さらには行政府内の高官らが、トランプへの支持または恐怖心、あるいは自己利益から何もしないことで、腐敗の共犯者となっていることを指摘する。民主主義を守る立場のアクターが、民主主義が崩されていくのを等閑視する中で、腐敗が深化していくのである。
このように展望の持てない中で、それでもアメリカが民主的な社会を維持できるとするならば、その鍵はアメリカを構成する人びとの手中にある、とボーズマン先生は結論づける。抗議運動を展開する多くの人々の声で、来年の議会選挙で多数派が逆洗することも、腐敗の深化を留める一つの可能性である。
トランプ大統領の来日を一週間後に控える中で行われた講演は、私たち自身の民主主義のあり方を再確認する機会ともなった。
