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現象数理学入門

三村昌泰 編
友枝明保 著 西成活裕 著 
第3章「社会の現象数理-渋滞学入門-」

東京大学出版会/2013年9月刊/216頁

現象数理学入門

内容紹介

動物の模様、感染症の流行、交通渋滞や経済不況など、私たちの身のまわりにあるさまざまな現象を数理的に解明する方法とは?それぞれの分野の第一人者が、「シミュレーション」「数値解析」「モデリング」の3つの視点から初心者向けにわかりやすく解説!

「渋滞」と聞くとどのようなことを思い浮かべますか?なかなか進まない交差点を思い浮かべる人もいるでしょうし、大型連休のときにニュースで流れるような高速道路の渋滞をイメージする人もいると思います。これらのイメージは、車の渋滞に関するものですが、実は、車以外にも様々な「渋滞」が存在します。例えば、テーマパークのアトラクションや大型スーパーのレジなどでは「行列」と呼ばれる渋滞が発生していますし、物流の世界では「在庫」という渋滞が発生しています。このような身の回りに散見されるあらゆる渋滞に対して、数理の武器を使って渋滞解消を目指す学問が「渋滞学」です。

本書の第3章では、この渋滞学に焦点を当て、「渋滞」を理解するための数理モデリング、解析手法について説明しました。章の前半では数学の理論パートとして、確率セルオートマトンの一つであるTASEPの重要な性質について、確率過程における計算手法を用いて解説しています。後半では、発展的な話題として、確率を組み込んだ車のモデルやアリの行列行進のモデルに関する研究について紹介しています。

著者からのひとこと

時々刻々と変化する状況を記述する数理モデリングでは、解析手法が豊富である「微分方程式」を用いることが多く、実際に渋滞現象でも、微分方程式を用いた数理モデル研究によって多くの知見が得られてきました。一方で、本書で解説している「セルオートマトン」は、理解したい現象(のようなもの)を再現できたとしても、その仕組みを説明するところまで至らないことも多く、これまでモデリングの道具としてはあまり取り上げられてきませんでした。しかし、車の渋滞をはじめとする大きさをもった粒子が移動するような系では、セルオートマトンでのモデリングも力を発揮することができ、様々なセルオートマトンを用いたモデリング研究が発展してきています。本章を通じて、セルオートマトンを用いた数理モデリング研究にも興味を持っていただければ幸いです。

目次

  1. はじめに(三村昌泰)
  2. 序 章 現象数理学への誘い――自己組織化と反応拡散方程式(三村昌泰)
  3. 第1章 生命情報処理の現象数理――粘菌の迷路解き(中垣俊之)
  4. 第2章 生物集団の現象数理――アリの集団行動(西森 拓)
  5. 第3章 社会の現象数理――渋滞学入門(友枝明保・西成活裕)
  6. 第4章 脳の現象数理――ニューロン,ニューラルネットワーク,行動のモデル(合原一究・辻󠄀 繁樹・香取勇一・合原一幸)
  7. 第5章 伝播の現象数理――インフルエンザ・パンデミック(斎藤正也・樋口知之)
  8. 第6章 経済の現象数理――バブルの発生と崩壊の数理(高安秀樹)

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