学部概要

学部理念

情報化社会の到来と総合情報学部の設立理念

総合情報学部が開校した1994(平成6)年ごろ、コンピュータの利用は研究分野だけではなく、事務的な仕事にまで広まってはいたのですが、操作できる人はまだ主として技術職の人が中心でした。しかし、情報技術者は既に不足していましたし、コンピュータを活用した情報が企業や官庁のあらゆる仕事において利用される時代が近いと予想されていたことから、技術者の育成だけでなく、ビジネス現場などでも対応できる人材の育成が急務と考えられていたのです。

こうした社会的要請に対応して、本学部の教育理念は、それまでの専門にとらわれず、人間と社会についての問題を「情報」という視点から探求すると同時に、情報・メディア・コンピュータの理論的知識を習得しながら、コンピュータ・リテラシーやメディア・リテラシーをも身に付けるというものでした。そして、文系・理系の枠を超えた入試制度を導入して広く将来性ある学生を受け入れ、それぞれの「夢」を実現するために、文系から理系までの多彩な講義科目を用意すると共に、「メディア情報モデル」「知識情報モデル」「組織情報モデル」という3パターンからなる履修モデルを提示して、自由にカリキュラムを設計できるようにしました。

旧文部省は1998(平成10)年に学習指導要領を改訂して2002年から「情報」という科目が開始されていますが、これを構成する3つのカリキュラム体系が総合情報学部の3つのモデルに対応している点で、本学部の先進性がうかがえるでしょう。この結果、本学部で学んだ多くの卒業生たちが、IT関連企業はもちろん、製造業、金融・保険業、教育・マスコミ関連企業、公務員など多彩な社会の第一線で活躍しているのです。

情報社会の進展と教育システムの改革

しかし、近年における情報をめぐる環境の変化は非常に大きなものがあります。特に、専門性を高めることが急務と考え、1998(平成10)年には博士課程前期課程(修士課程)、2000(平成12)年には博士課程後期課程を設置し、情報スペシャリスト・情報パイオニアの養成を行いました。この結果、より高度な専門職や研究職への人材を輩出しましたが、さらにこの専門教育を学部教育にまで拡大することが求められていると考えるようになりました。

そこで、学部レベルで専門性を高めると共に学生の選択肢が広がるように展開科目(旧来の学部の専門科目に相当)を増やし、しかも1年次から履修できるようにしました。そして、近年の学際的な研究領域の広がりに対応するため、専門領域を横断するような科目も設定しました。さらに、実習科目についても、より専門性の高い内容の実習を用意すると共に、より早い段階でそれらの実習科目も選択できるようにしました。

しかし、多彩な開講科目の中での自由なカリキュラムでは、専門性が身に付かないかもしれません。そこで、モデルを「メディア情報」「コンピューティング」「社会情報システム」という3つの「系」に再編し、高い専門性を目指す人がカリキュラムを設計する場合の指針となるようにしました。そして、指定された科目群の中から一定科目数を習得することで、その「系」の修了を成績証明書に記載し、就職の際などに専門性の高さを外部に示すことができるようにしています。

これらの改革の具体的な例として、メディア情報系では、カリキュラムを体系化すると共に、放送や新聞などメディアの第一線で活躍している人材を特別任用教員として採用し、より実践的な指導ができる体制を構築しています。コンピューティング系では、オンライントランザクション処理などのソフトウエアの企画・設計・開発ができる人材の育成のために、展開科目を増やすと共に早い時期から実習の選択が可能な体制を整えています。さらに、社会情報システム系でも、社会調査士の資格が取得できる体制を整えると共に、マーケティングなどの展開科目の充実を図るなど、より実践的なテーマの開拓に取り組んでいます。

新しい時代に向けて

このように、総合情報学部は常に時代の変化に対応して、それに相応しい教育システムを心がけてきました。しかし、最近のような情報環境に関連する技術の進化が激しい時代においては、現在の技術はすぐに陳腐化してしまいます。このため、確かに最先端の技術を追っていくことは必要ですが、そこだけに目を奪われると情報についての価値判断を誤ってしまう恐れがあるのです。

つまり、変化が早く不安定な時代であるからこそ、目先の技術的な変化にとらわれない本質を見抜く能力が必要だろうと思うのです。そうした能力は、それぞれの学問領域の古典や幅広い教養によって養われるのではないかと考えます。総合情報学部では、こうした学問の基本を大切にしつつ技術の進展に対応できる教育体系を今後とも模索していこうと考えています。

総合情報学部長 名取 良太

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