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社会調査の方法論

松本 渉

(丸善出版/2021年9月/264頁)

社会調査の方法論

内容紹介

社会調査の教育は、社会学に限定されません。多くの分野に広がっています。もともと海外では、政治学、経営学、文化人類学、統計学など幅広い学問で取り扱われていますので、これはあたりまえのことです。ですので、社会調査を理解したいと思う人であれば、どの学問領域を専攻する人にも、この本を手にとってほしいと思っています。なぜならこの本は、既存の学問領域の枠組みにしばられない内容になっているからです。

また、本書の内容は、筆者がこれまで培ってきた社会調査に関する実践経験と社会調査教育の経験に基づいて執筆されています。筆者の経験が特色をだすのに一役買っている一方で、一般社団法人社会調査協会が認定する社会調査士資格のA科目とB科目の両方のカリキュラムに対応させていますので、ある程度標準的な社会調査の学習内容で構成されています。

社会調査に関する良書は、これまでにも刊行されています。その中で本書を刊行する意義は、社会調査士科目の標準を目指しながらも他の類書にない特色を打ち出したことにあります。例えば、現在の世論調査報道で非常に利用されている電話調査や、市場調査で普及しているウェブ調査の両方について俯瞰した解説がなされている書物はまだ多くありません。これに対し、本書では、実際の手順を意識させながら、面接調査や郵送調査といった伝統的な調査手法と同時に、電話調査やウェブ調査といった比較的新しい調査手法の両方を実践的に理解できるように解説しています。難しく思われがちなサンプリングについても、図や表を活用し、数学が苦手な人でも理解できるような工夫に努めています。

著者からのひとこと

世間では、アンケートと称して、質問文を用いた調査が数多く実施されています。しかし、質問文を作成して調査を適切に実施することは、簡単そうにみえて意外と難しく、気をつけるべきことがたくさんあります。

少し厳密な手順を踏まえて実施した社会調査を、お手軽そうなイメージの強いアンケートと区別して、調査票調査と呼ぶことがあります。本書では、この調査票調査の手順をかなり具体的に示しています。そのため、教科書としての利用だけでなく、調査の実務的な場面においても役に立つはずです。日本の社会調査のやり方は独自の深化の歴史があるのですが、海外の調査方法論との関係についてもかなり意識して書いています。国内の調査でも海外の調査でも、社会調査を最初に始める上で有用な一冊です。

目次

  1. 1 章 社会調査とは何だろうか
    1. 1.1 社会調査の広がり
    2. 1.2 社会調査士
    3. 1.3 学べばいつか役に立つ
  2. 2 章 社会調査の実際例と結果の読み取り
    1. 2.1 社会調査の実際例
    2. 2.2 もうすこし深く読み込んでみる
    3. 2.3 新聞記事など各種報道の読み取り
  3. 3 章 社会調査の目的と意義
    1. 3.1 社会調査と呼ぶことができるのはどこからどこまでか?
    2. 3.2 社会調査の意義
    3. 3.3 社会調査の実施に伴う社会的責任
  4. 4 章 調査企画とテーマ設定
    1. 4.1 社会調査の企画・テーマ設定
    2. 4.2 目標母集団の明確化
    3. 4.3 スケジュールの確認
    4. 4.4 予算の確保
  5. 5 章 調査項目の選定と仮説構築
    1. 5.1 調査テーマの設定から調査項目の選定へ
    2. 5.2 より意義のある調査を目指して
    3. 5.3 仮説構築とクロス表
  6. 6 章 社会調査の分類と種類
    1. 6.1 様々な社会調査の分類方法
    2. 6.2 データの構造の有無による分類
    3. 6.3 調査対象の単位による分類
    4. 6.4 調査の内容による分類
    5. 6.5 調査対象の地理的な範囲や規模による分類
    6. 6.6 調査の用途による分類
    7. 6.7 調査の主体が統一化されているかどうかによる分類
    8. 6.8 母集団からの抽出の範囲による分類
    9. 6.9 実施される調査の回数が異なる場合の分類
    10. 6.10 調査の手段(モード)による分類
  7. 7 章 面接調査の種類
    1. 7.1 データ収集方法(モード)としての面接調査
    2. 7.2 面接調査とは
    3. 7.3 個別面接調査と集団面接調査
    4. 7.4 指示的面接調査と非指示的面接調査
    5. 7.5 その他の面接調査法
  8. 8 章 定性的な調査研究法
    1. 8.1 定性的研究
    2. 8.2 非指示的面接
    3. 8.3 ブレインストーミング
    4. 8.4 KJ法
    5. 8.5 エスノグラフィー
    6. 8.6 社会調査における位置付け
  9. 9 章 調査票調査の一巡
    1. 9.1 調査票調査の全体像
    2. 9.2 調査の企画・立案(予算の確保)
    3. 9.3 調査内容の決定
    4. 9.4 目標母集団の決定
    5. 9.5 調査方法の決定
    6. 9.6 標本抽出の実際
    7. 9.7 調査票・質問文の作成
    8. 9.8 予備調査から実査完了まで
    9. 9.9 コーディングとデータ入力
    10. 9.10 データの集計と分析
    11. 9.11 報告・公表
  10. 10 章 個別訪問面接聴取法
    1. 10.1 個別訪問面接調査の実査場面
    2. 10.2 個別訪問面接調査の特徴
    3. 10.3 個別訪問面接調査の事例
  11. 11 章 留置調査と郵送調査
    1. 11.1 留置調査
    2. 11.2 郵送調査
  12. 12 章 調査実施方法の発展
    1. 12.1 技術進歩がデータ収集法へ与える影響
    2. 12.2 電話調査
    3. 12.3 インターネット調査
  13. 13 章 調査方法の決定
    1. 13.1 二種類の意味がある「調査の方法」
    2. 13.2 調査票調査におけるデータ収集の方式の決定
    3. 13.3 質問紙調査の実施方式に関する基本的な区別
    4. 13.4 主要な調査モードの比較
    5. 13.5 調査方式に関する比較実験
    6. 13.6 混合モード調査
  14. 14 章 全数調査と標本調査
    1. 14.1 母集団からの抽出範囲
    2. 14.2 全数調査の概要と例
    3. 14.3 標本調査の概要と例
    4. 14.4 全数調査と標本調査の比較
  15. 15 章 調査対象者の選定とサンプリング
    1. 15.1 調査対象の単位と選定
    2. 15.2 非確率抽出の限界
    3. 15.3 確率抽出に基づく標本調査
    4. 15.4 無作為抽出の意味
    5. 15.5 大数の法則と中心極限定理
    6. 15.6 不偏性
  16. 16 章 単純無作為抽出・系統抽出
    1. 16.1 単純無作為抽出
    2. 16.2 無作為抽出の実際 -乱数の生成―
    3. 16.3 系統抽出・等間隔抽出
  17. 17 章 二段抽出・集落抽出
    1. 17.1 二段抽出
    2. 17.2 集落抽出(クラスターサンプリング)
  18. 18 章 層化抽出・層化二段無作為抽出
    1. 18.1 層化抽出
    2. 18.2 層化抽出の計算例
    3. 18.3 層化二段無作為抽出
    4. 18.4 層化二段無作為抽出の実際
  19. 19 章 サンプリングのまとめと実践
    1. 19.1 サンプリングのまとめ
    2. 19.2 サンプリングのための抽出台帳の閲覧
    3. 19.3 抽出台帳に関わる主要な出来事
    4. 19.4 抽出台帳を利用できない場合のサンプリング
  20. 20 章 調査票作成の基礎
    1. 20.1 調査票と質問文の作成についての基本姿勢
    2. 20.2 論理と直感の違いに注意
    3. 20.3 調査票の作成の手順
    4. 20.4 調査票(用紙・媒体)の事前準備についての注意事項
  21. 21 章 質問文作成の基礎
    1. 21.1 選択肢法と自由回答法
    2. 21.2 ワーディングの重要性
    3. 21.3 質問文作成の原則と例外
  22. 22 章 質問文の配列と調査票の完成
    1. 22.1 調査票全体の構成
    2. 22.2 質問群の内部構成
    3. 22.3 質問文の並べ方
    4. 22.4 調査票の完成に向けて
  23. 23 章 調査データの整理
    1. 23.1 コーディング
    2. 23.2 アフターコーディングとプレコーディング
    3. 23.3 コーディングの留意点
    4. 23.4 複数回答の質問文におけるデータの整理
    5. 23.5 データの入力と点検
  24. 24 章 海外調査事情と国際比較調査
    1. 24.1 海外における社会調査
    2. 24.2 海外の継続調査の事例
    3. 24.3 国際比較調査の考え方
    4. 24.4 国際比較調査の実際例
  25. 25 章 社会調査の課題、調査倫理と法
    1. 25.1 社会調査の課題
    2. 25.2 よりよい社会調査を目指して ―信頼の獲得・回復―
    3. 25.3 社会調査に関連する法律
  26. 26 章 社会調査の歴史
    1. 26.1 社会調査前史
    2. 26.2 近代日本の人口調査
    3. 25.3 アメリカの選挙予測とサンプリング
    4. 26.4 戦後日本における社会調査の展開
    5. 26.5 情報化社会における社会調査
    6. 26.6 社会調査士資格認定機構と社会調査協会
    7. 26.7 統計法の改正
  27. 27 章 これからの社会調査
    1. 27.1 社会調査の役割の再考
    2. 27.2 社会調査の要件
    3. 27.3 社会調査の変容
  28. 参考文献
  29. 索引

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