人は「あるがまま」の姿でいることができる。太っていても痩せていても、髪が縮れ毛でも直毛でも、まぶたが一重であっても二重であっても問題はない。けれど、人々は髪にパーマを当てたり、ダイエットで体型を変えたり、厚底の靴を履いたりする。時に美容外科手術や美容医療にまで手を伸ばす。
なぜなのか。それは、私たちが美容社会に煽られ、自由を奪われているからである。美容外科手術の多くは一重まぶたを二重まぶたにするのだが、その逆はほとんどないことから分かるように、目指すべき身体は社会によって相当に規格化されている。
しかし同時に外見を変えることで、自分を変えることもできる。「どのような身体に
本書は、「規格化」と「自由」議論をふまえつつ、より日常生活によりそった調査を行い、美容整形の議論をより進化させることを試みた。前著(『美容整形と化粧の社会学』新曜社)で、美容整形経験者たちが「コンプレックスを解消したいから」「異性にモテたいから」ではなく、あくまで「自己満足のため」に整形を受けると語ることを発見したが、その「自己満足の議論」をさらに深めたのが本書である。そもそも、彼女たちが美容整形へと背中を押された「きっかけ」は、いったい何なのであろうか。
なお、中日新聞・東京新聞(2018年8月5日)、ダ・ヴィンチニュース(web)などに書評が掲載されました。
本書ではさまざまな調査手法を組み合わせています。
まず、いわゆる「量的調査」として調査票調査(アンケート)を2003~2013年にかけて合計4225名に行なっています。同時に、いわゆる「質的調査」として、インタビュー調査を計35名(プレインタビューを含めると37名)に対して行なっています。どちらかに偏ることなく、調査票調査とインタビューを組み合わせることで、より美容整形の実態に迫りたかったからです。
例えば、インタビュー調査から美容整形経験者が「コンプレックスを感じていた」と語ったとしましょう。しかし非経験者もコンプレックスを感じているかもしれません。実は、「美容整形経験と何が結びつくか」を見いだすためには、非経験者と比較しなければならないはずなのです。その点、調査票調査は力を発揮します。とはいえ、数字からは見えにくくなっているリアリティやニュアンスも見ていかなければなりません。これらは、インタビィーを通じて経験者たちの「生の言葉」に寄り添うことで、見えてくるものです。
さらに、本書ではメディア分析も行なっています。広告や雑誌などの内容を、テキストマイニングという手法や、より質的な手法の両方を用いて明らかにしています。
大事なのは、研究対象に迫る際に、どうやったらよりよく調べることができるかを考えることだと思います。本書の場合、様々な方法論を組み合わせることが最良だと考えました。