北川ゼミの新しい試み(ゼミ内インタビュー)

北川ゼミでは、自分たちが日常的に行っていることや悩んだりしていることを研究テーマにすることがあります。

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杉原さん・田中さん・豊里さん・荒瀬さんの班は、「良好な人間関係の築き方―こころの知能指数(EQ)と承認欲求の観点から」というテーマで発表しました。この班の面白い点は、良好な対人関係をつくる土台として自分のこころをいかに安定させるかを考えるという発想をしたことです。よく「承認欲求」という言葉を聞きますが、彼らは、それを自己による承認と他者からの承認に分け、自己承認だけだと批判に左右されにくいが現状に満足してしまう恐れがあり、他者承認だけだと挑戦の意欲は高まるが失敗や批判に弱くなる恐れがあると考えました。このように思考したうえで、彼らは、心の安定と失敗を経ながらの成長とを両立するためにはどのような考え方が必要か、という問いを立てました。

彼らなりの答えは、自己承認という日々の生活の糧(「月給」)をきちんと与えられていれば、 他者からの承認は「あれば嬉しいボーナス」になり、心に余裕が生じる、というものでした。なるほど、給与体系という誰でも想像しやすい経済的なしくみを、自分の心をよい方向にもっていくためのアナロジー(比喩的表現)として用いたところがこの班の工夫です。

この班は、心に余裕をもたせることで、他者を理解し、「相手の」他者承認欲求を満たしてあげることができ、良好な人間関係をつくることができると考えました。たしかに! わたし(北川)はいつも自分のことを考えているので、相手のことを見ているようで見ていませんでした。ゼミ生の発表に教えられるときほど、面白いことはありません。

完成度が高く、また、話の進め方が丁寧であるという印象を受けましたが、実は、1週間前までは、まだまだまとまりきっていなかったとのこと。この班はずっとみんなで議論したり、調べたりしてきて、最後の最後にそれを消化しきり、自分たちのユニークな発表としてかたちにすることができました。

質疑応答では、「自分の悩みを相談させてください」、「こんな人にはどう対処する?」、「こころの知能指数の格差にはどう対応する?」といった質問だけでなく、この発表を聞きながら自分自身のこころの働きを意識し、見直してみた、という感想までありました。この班の発表が、他のゼミ生の思考を刺激できたことを、よく表しています。

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こうした日常の事柄についての研究の他にも、ゼミでは次のような研究をしました。 

郭さんはエジプト旅行の経験をもとに、「各観光地における非公式経済と観光トラブル」を分析しました。郭さんの観点や手法はわたしと似ています。 

趙さん・仇さん・ダンさんの班は、中国の「ネット民」の勢力図を作成してくれました。日本と比較すると、結束の際の価値観や、他の勢力と対立する際の軸の違いが印象的で、興味深く聞き入りました。もっとも、中国の方々から見れば、日本のネット民の勢力図もまた面白く映るのかもしれません。彼らは、私にとって中国の実情を教えてくれる大切な「先生」のような存在です。わたしからは学究肌に見える梅野さんは、AIと雇用について真剣に考えて発表してくれました。AIによる雇用減少の対策としてベーシック・インカムなどが提案されますが、梅野さんは、いろいろな対策を書籍などから綿密に調べたうえで、「では、仕事に自分の価値を見出している人は一体どうしたらよいのだろうか」という問いを出してくれました。答えがすぐ出るわけではないのですが、調査検討から最後に問いをつくることも、研究の大きな成果の一つです。


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これで全班、質の高い発表を終えたので、その後、ゼミ内の「達人」に私やみんなからインタビューするという新しい試みをやってみました。

先日、山中健史さんが、6月6・7日に開かれたポケモン日本一決定戦「PJCS2026」のポケモンカード マスターリーグ(世界予選)で第3位になりました。8月に、サンフランシスコで開かれる世界大会に招待選手として出場するとのことです。今やポケモンは日本のソフトパワーを担うコンテンツの一つになっており、ユーザーの多いポケモンカードでトップクラスの成績を収めることは驚くべきことです。経済学部の教員としても、カードゲームでの優れた成績は、おそらく経済学的思考と類似した、論理的な思考力や判断力の賜物であろうと想像し、山中さんからじっくり話を聞いてみたいと思いました。

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下記の写真はみんなで山中さんにインタビューしているところです。

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「幅広くいろんな可能性を考えて、評価値をみたときに一番ましな選択肢を選びます。」時折勝ちに向かうための「強気の選択」をとる。「でも、それが上手くいかなかった場合のことも考えています。」こうした意思決定は、経済学部で教えている合理的選択の考え方と共通しており、また、「ゲーム理論」が当てはまることもあるとのことでした。

しかし、ここからがインタビューの面白いところでした。「いま説明するとそうなりますが、やっているときはそのことを考えているわけではありません。感覚です。」「試合直前までほとんど準備はしません。むかし、没頭していた時期はありますが、いま、普段はあまりカードを触りません。もちろん情報は集めます。頭の片隅で考えていて、新しいことを思いついたら友人にしゃべって意見をもらうだけです。」ここらへんから、みんなが(私が?)びっくりして黙ってしまいました...。「海外の人ともSNSのメッセージで意見交換しています。」

ゼミ発表で同じ班だった前田さんが、「そういえば(山中)タケシくん、ゼミ発表の準備でも、発表の少し前に、ばばばーっと話して、それを内田くんが、分からないところを聞き返しながら内容を詰めていったよね」と言いました。山中さんは、「あたまの片隅で日頃から考えておいて、そのとき一気に話した」とのこと。どうやら、ゲームの準備の仕方も研究の準備の仕方も、山中さんの頭の中では似ている取り組みのようです。

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インタビューも終わりかけたころ、山中さんが、「話は変わりますけど、先生、これまでのゼミ生の卒論で面白かったものって、どんなものがありますか」と聞いてきたのが、なんだか印象的でした。さて、北川ゼミは、卒論執筆にかかります。

【記事・写真提供:北川亘太教授】

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