
GoLDプログラム(台湾)の学生は現地で学びを深めています
12月8日(日)から渡航しているGoLDプログラム(台湾)ですが、10日(火)は台湾の政治体制と歴史教育について各施設の見学・講演を通じて学びを深める1日となりました。政治(統治)の動揺は経済の動揺にも繋がるため、学生たちは"経済学の視点"をもって向き合っています。
本プログラム担当の北川亘太准教授からの現地のレポートが届きましたので、写真とともにお伝えします。
GoLDプログラムの3日目(12月10日)は、権威主義体制下での抑圧の歴史と民主化の過程を学びました。午前中、二二八国家記念館を訪問し、まず、1947年2月末、民衆の抗議活動に対する政府による弾圧(「二二八事件」)二二八事件の常設展について職員から説明を受けました。
その後、台湾史研究の第一人者で台湾で最も使われている高校教科書の編者、薛化元先生(二二八国家記念館理事長 政治大学教授)の講演を聞きました(政治大学教授 李為楨先生による代読)。学生たちは、講演から台湾の民主化と歴史教科書の変化について学び、国民党政府の編集する「中国史」ではなく、調査研究の事実の積み重ねにもとづくより公平な「台湾史」が生徒に教えられるようになるまでの流れを知りました。質疑応答では、台湾のこうした教育改革をふまえて、李先生と話しながら自国の歴史教育について見つめ直そうとする学生がいました。
この事件をきっかけに、国民党政府は戒厳令を発令し、38年間の戒厳令下の時代(1987年)では、政府による民衆の政治的弾圧(「白色テロ」)が不透明なかたちで続けられました。私たちは午後から国家人権博物館景美権園区を訪問し、拘留施設と軍事法廷を見学しました。私たちにとって戒厳令はなじみがないものですが、わずか1週間ほど前に韓国で戒厳令が発令され、その後6時間後に解除されるという事件が起こり、学生たちの関心が高まりました。くわえて、近年、世界的にみて民主主義という政治体制が後退していることも、こうした戒厳令に興味をもつ背景になっていました。今日、日本でも台湾が民主主義のお手本のように見られることもありますが、そうなったのは、こうした昏い過去、ストロングマン権威主義体制から抜け出そうとした知識人や民衆の苦闘があったからであり、現在でも、民主主義を育成しようとする人たちの強い志があるからだと理解しました。
施設を見学した後、実際に10年間この拘留施設に政治犯として捕らえられていた陳中統さんの話を聞きました。陳さんの話にぐいぐい引き込まれ、質疑応答では、学生たちは次々に、拘留施設での陳さんの気持ち、政治や賠償についての想い、戒厳令解除までの諸要因、苦境の中でのご夫婦の強い絆、などなどについて尋ねていました。陳さんは、「長いあいだいろいろな大学生に話をしてきたけれど、関西大学のみなさんの質問は抜群にいいですね!」と、それぞれの質問に熱心に答えてくださいました。
こうして1日中、政治体制と歴史教育について台湾の歴史にどっぷり浸かりました。もちろん、政治(統治)の動揺は経済の動揺ももたらすので、学生たちは、その時々の価格(米価暴騰や価格統制など)や失業のことについても、それぞれの施設の職員さんに尋ねていました。 夜は、台北最後の夜、心身を緩めて、饒河街夜市をゆったりと散策し、屋台料理を味わいました。
【記事・写真提供:経済学部 北川亘太准教授】