KANDAI HEADLINES ~ 関西大学の「今」

液体はどう流れるか。可能性を秘めた基礎研究に挑む

研究

繊維層や多孔質体を流れる液体の動きを研究。実用につながる知見を積み重ねる
/システム理工学部 機械工学科 流体工学・バイオメカニクス研究 大友涼子助教

 フィルターやスポンジのような多孔質体を、液体がどう流れ、どのような動きを見せるのかを、実験と解析、理論計算から解き明かす。基礎研究ゆえにその用途は未知数ですが、大友助教は「いかに応用できるか」を常に考え、結果にこだわりながら研究を続けています。少数派である理系女子学生のために懇談会を主催するなど学生との距離も近く、その細やかな目配りや指導に男女問わず厚い信頼が寄せられています。

隙間を透過していく液体に、一定の法則を見つけ出す

 大友助教が取り組むのは、フィルターなどの繊維やスポンジのように多数の穴が開いた物質の極めて小さな隙間を、液体がゆっくりと流れる現象の解明です。例えば砂水のように液体の中に微粒子が混ざっていると、粒子はゆるやかに拡散しながら流れるといった特有の動きを見せることがわかっています。大友助教の研究テーマでは、粒子のサイズや液体の流速、流路の幅などの条件をさまざまに変えながら、より詳細に観察。どのような流路にどのくらいの時間で流せばどんな流れになるのか、地道に実験を重ね、データを蓄積・解析しています。「基礎研究は何の役に立つのかとよく聞かれるのですが、これと特定するのは難しいんです。でもその分、可能性が広がっているとも言えます」と大友助教。フィルターとは物質を振り分けるものです。研究で得られた知見は、液体中の特定の物質だけを濾過し捕集するあらゆる領域に有益です。小さな研究室で行われた実験が、さまざまな場に大きなヒントをもたらします。

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予想通りの結果なら安心。でも違っていてもおもしろい

 流路を作るところから一から始める研究を学生に任せ、失敗しても一度はやりたいようにさせるのが大友助教の方針です。「研究室の学生はまじめで、こうやれと示されるとその通りにし、言いたいことも我慢しがち。だから指示を出す前に、まず自分で考えてもらいたいんです」。当然、プログラムの不具合や実験での水漏れ、計算のつまずきなどさまざまなハードルに直面します。しかし失敗を乗り越えて有用なデータを得、現象を正しく解析できた時には大きな達成感を得られます。「仮説通りにいくと安心。でも、違っていてもその時点で考え直す、それもまたおもしろいんです」。研究室の学生も「結果を予測し、そのための方法や条件も自分で整える。失敗だらけですが、主体的に実験できるので大きなやりがいを感じます。自分で作った流路で結果を出したい」と意欲的です。

 大友助教にとって関西大学の印象は、ロケーションも研究室の雰囲気も「自由で大らか」。機械工学科は複数の教員で一つの研究室を持つ講座制ですが、「ドクターを取った後、1年のポスドク研究員を経てノウハウがほとんどないまま助教になったので、自由に研究させてもらえ、先生方に相談でき、ゼミも一緒にさせてもらえる今の環境はとても恵まれていますし、勉強になります」。狭いエリアに多くの大学が集まる大阪は、多様な研究会に参加しやすく、外部の研究に触れる機会も多く持てる、と大友助教。今後はそんな立地面のメリットを最大限に生かし、学内外と協働して研究をさらに進展させ、新たな現象についても研究を広げたいと考えています。「自分が知らないことはたくさんある。今想像していないようなテーマにも挑戦したいですね」。

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技術職とは、性別に関わらず、どれだけ自分が努力できるか

 何かと注目される理系女子。だからといって実力があるというわけではない、と大友助教は自戒します。「結局は性別に関係なくどれだけ努力できるか、自分次第です」。自分を持ってがんばり続ければ結果につながるという信念で、そういう主体性を持った学生は性別に関わらずサポートしてきました。先の男子学生も「全部自分でやらせてもらえ、親身になってアドバイスもくださる。研究室は居心地がよく楽しいです」と話してくれました。

 ただ、機械工学科の女子学生がマイノリティであることも事実。クラスに女子が一人となればおとなしくもなりがちです。そこで、大友助教は機械工学科の全学年の女子学生に声をかけ、年に1~2回、カジュアルな女子会を開いています。「女子の就活は男子とは視点が異なるので、そういった情報も先輩や仲間から得てもらえれば」。

 自身の学生時代も理系女子は少数でしたが、大学院へ進んでよかったと大友助教は言います。「大学での座学は受動的ですが、院での研究は自発性が必要です。自分で考え、論理的に思考を組み立てて、人にわかりやすく伝える力がつきます。これは理系で就職するなら絶対に必要なスキル。2年間を通してその訓練がかなりできます」。結婚、出産、子育てと仕事を両立している人も少なくありません。学会に託児スペースを設けるなど、女性が研究職を続けられる環境も整ってきています。「実績を残していれば、技術を持っていることが強みになり、代わりのいない人として大切に扱ってもらえます。手に職を持ちたいと願う女性にもいい選択肢。男女とも臆することなく理系の勉強に挑戦して欲しいですね」と大友助教は学生たちにエールを送ります。

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