関西大学 人間健康学部

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「感性」と「ゾーン」を考える

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「モーツァルトとアインシュタイン、どちらがより天才か?」

突然ですが、皆さんはこの問いにどんな答えを出されるでしょうか。

 これは、私が授業で毎回のように出題する命題の一つです。今年は学生の皆さんの答えは2つに分かれましたが、どちらかといえばモーツァルトが多かったようです。

実は、この質問は、2001年にノーベル物理学賞を受賞された小柴昌俊先生が、受賞式のために現地を訪れた際、海外メデイアから受けた質問です。小柴先生は様々なメディアでご自身の見解を述べておられますが、ここではあえてお伝えしませんので、是非、皆さんなりのお答えを出して頂きたいと思います。

私がこの問いかけをする理由は、この質問に対する答えを出そうとする過程では、必ず「感性」と、いわゆる「ゾーン」を考える必要性に迫られるからです。みなさんは、「ゾーン」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?最近では、プロゴルファーの石川遼選手が、ツアー最年少記録の58というスコアを出して優勝した時、「ゾーンに入っていた」と振り返ったことが記憶に新しいところです。「ゾーン」とは、人間の能力が最高に発揮される領域のことで、当事者のみならず、そのパフォーマンスに触れた周囲の人々の幸福にも貢献するものだと、私は考えています。

私は、十数年前から主にスポーツの観点から「感性」にアプローチをし、トップアスリートやその指導者たちを対象として、「感性」と感性的体験である「ゾーン体験」に関する調査を中心に研究をしてきました。最近は、芸術家や華道家、俳優、ダンサー、パティシエ、作家、科学者、映画監督といった各界で活躍する人々の「感性」と「ゾーン」について、多様な資料を利用しながら、スポーツ以外の様々な分野の研究にも取り組んでいます。私の授業では、このような研究をご紹介しながら、「感性」とは何か、「ゾーン」とは何かについて、皆さんに考えて頂き、一緒に語り合うような授業をしています。