関西大学 人間健康学部

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すこやか教養講座(第2期)の第5回を開催しました。

  • ■日時

7月2日(土)に、すこやか教養講座(第2期)の第5回を開催いたしました。

講 師:京都大学大学院文学研究科教授 伊藤公雄
テーマ:高齢社会と男性の生き方

 現在の日本の男性には、ある種の社会的な「生きにくさ」が知らず知らずのうちに
目に見えない形で強いられてきました。今回は、男性の視点からのジェンダー
(社会的な性差)の問題に関心を持って研究を続けてこられた伊藤先生とともに
「日本の男性の生き方」について考えてみました。

 かつての日本では親・子・孫の三世代の「大家族」が中心となって農業や自営業を
営む産業社会でしたが、やがて都市に人口が集中して核家族化が進行し、男性が
主な稼ぎ手となる雇用労働の社会に移行します。さらに、サラリーマンとしての所得が
急増したことによって、現在の日本では男性が主な稼ぎ手となって家庭生活を支える
ことが一般的な家族のモデルとして浸透していきます。

 諸外国では1970年代にオイルショック等の影響で国際的な不況が訪れた際、
社会の中の女性に対して積極的な社会参加を促すことでこの不況を乗り切ろうと
しました。日本では男性の労働時間を延ばすことで対処する方途が選ばれました。
結果、週60時間以上働く男性の数は増加し続け、1990年の調査では753万人にも上り、
さらに諸外国と比較した場合、東京では実に6割の男性が夜8時以降に帰宅すると
いう調査結果も出ています。このように男性の労働時間が伸びれば伸びるほど男性が
家庭にいない時間が増えることになり、夫婦・家族間のコミュニケーション不足による
家族関係の悪化、ひいては子どものしつけや教育等に問題を抱えることにもつながります。
今や「過労死」は"Karoshi"という国際語にもなっています。これには、「男は弱音を吐かず、
ひとりで問題を解決するものだ」という意識の上での「男性性の縛り」が遠因になっている
とも考えられます。

 現在の日本は、超少子高齢化社会への道を突き進んでいます。女性の社会参画を
推進してきた欧米の社会では社会的サービスの整備が進み、少子化の問題が解消
されてきつつあります。講義では、日本においても「潜在的な労働力」としての女性を
活用することが、これまでの「男性の生き方」に変化をもたらす可能性があることを
指摘されました。

 講義の最後には、今後の男性の生きる道として「支配することなくたくましく」という
言葉を受講者の方々に贈られました。

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次回以降も充実した講師陣でお届けしますので、
ご期待ください。ひきつづきご応募お待ちしております。

すこやか教養講座(第2期)ご案内
http://www.kansai-u.ac.jp/Fc_hw/2011/04/2-2.html