
GoLDプログラム(台湾)の参加学生が全行程を終えて帰国しました
GoLDプログラム(台湾)の参加学生は、12月13日(金)に高雄科技大学でワークショップを行い、12月14日(土)に帰国しました。
本プログラム担当の北川亘太准教授から13日、14日のプログラムの様子が届きましたので、写真とともにお伝えします。
12月13日は交流の大詰め、高雄科技大学(NKUST、以下高科大)とのワークショップ(英語でのプレゼンテーション大会)です。高科大と関大、それぞれの4つの班が、「観光」「地震」「労働問題」「半導体」という4つのテーマについて発表しました。
渡航前の事前学習では、発表スライドを何度も作り直し、内容を仕上げてゆきました。英語での発表についても、自分の発表を動画に撮り、他の学生に見てもらうという方法で改善してきました。残念ながら、この時点では、ほとんどの学生が、お経のように英語を読み上げるだけで、何を話しているのか、さっぱり伝わらないという段階にいました。
学生たちは、前日のホテルでみっちり練習していたようです。高科大に向かうバスの中でも、お互いに発表を聞いてもらいながら、発表の仕方を細かく調整している班もありました。これは私にとっては驚くような変化です。というのも、事前授業の時点では、自分の英語を他の人に聞いてもらうのを恥ずかしがって、ほとんど人前で英語をしゃべろうとしませんでした(お気持ちはよく分かります)。しかし、いつの間にかそうした恥ずかしさも無くなっており、しかも、この2週間ほどの練習の積み重ねで、英語で伝える力は劇的に上達していました。
高科大に着くと、なんと関大生一人ひとり名前が書かれた大きなネームプレートを持った学生たち(関大生一人につき高科大生一人のバディ)が、私たちを出迎えてくれました。早速、このワークショップのためにつくられたタオルをギフトに頂戴し、私たちは、恐縮しつつも、心からの歓迎を感じました。
キャンパスツアーでは、ホストのソフィーさんが、高科大の概要と見どころを説明してくださいました。彼女の手に持っている紙を見ると、関大生に伝えたい情報が細かく書かれており、プレゼンテーション大会以外の綿密な準備に頭が下がりました。購買も案内してくださいました。
会場となる図書館のディスカッション・スペースに案内してもらいました。数年前、図書館の1階を改装し、広々とした、形式ばらない雰囲気になれる空間をつくったとのことでした。鬼滅の刃や名探偵コナンなどの漫画や可愛いぬいぐるみが置かれていました。
ワークショップでは、関西大学にいらっしゃったことのある徐先生が、TSMC熊本工場に言及しながら、近年の台日経済の強い結びつきのなかでの学生交流の重要性を強調しました。
最初の発表は関大の1班からでした。堂々とした見事な発表で、ワークショップの雰囲気をつくってくれました。途中、マイクの音が途切れるも、よく通る声で伝え通し、良い流れをくずしませんでした。高科大の黃先生は、「彼らはミクロとマクロの両方を目配せしている」と驚いていました。
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2班は、上級生たちが少しつまるも、下級生が持ち直すという微笑ましい展開になりました(この上級生たちは、その後の交流で大活躍し、和気あいあいとした場をつくっていました)。徐先生は、彼らの発表をゆったりと頷きながら集中して聞いてくださり、「私も新しいテーマで発表するときは、ナーバスになるんだよ。何も問題ないよ」とおっしゃっていました。
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3班は、どの学生もマイクへの声ののりがとても良く、聞いていて心地のよい発表でした。4年生が、紙も持たず、スライドのほうも見ず、ボディランゲージを使いながら丁寧にしゃべり通しました。聞いている人たちがざわざわしているので、耳をそばだてると、この発表に驚いて、両校の下級生たちが「先輩、かっこいい」「cool!」「スゴイデス」と口々に言っていました。
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関大経済学部の日常では、とても残念なことに、素晴らしい発表をする人を賞賛したり、それを格好良いと感じ、あこがれるような雰囲気は、ゼミナール大会などを除いて、あまり見られません。深みのある内容を考えることができ、それを伝えることができる人は格好良いと思えた下級生たちは、これから、大学に戻り、語学・専門科目・演習などを意欲的に取り組み、ぐんぐん力をつけてゆくことになると思います。
4班は、半導体の(現在の)本場、台湾で半導体を語るという重責を担いました。日台の半導体産業の特徴を綿密に調べたうえで、米中貿易対立のなかで日台の協力をいかに高めてゆくかについて発表しました。彼らは、渡航前に、何度もスライドを修正した結果、半導体工場の立地としての関西圏の魅力を示すという独創的な主張に至りました。徐先生は、何度もうなづき、発表に引き込まれていました。黃先生は、最後の講評で「一つひとつのスライドの内容がとても深い(very deep)」と称賛してくれました。
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発表が終わると、黃先生が、「関西圏は半導体工場の建設候補地として優位性がありますか。進出するにあたり負の要素はあるか」と私に尋ねたり(私は素人ですが考えを伝えました)、彼の考えをおっしゃってくださいました。バスに乗るまで、ずっとその議論は続きました。発表を通じて相手大学の教員の着想が刺激されたということは、本学学生の発表が研究として優れた水準に到達していたことの証拠だと思います。
最後に、関大の学生の代表が、高科大側のプレゼンテーションの素敵なところをみんなに伝えてくれました。そのあと、「自分たちはところどころうまく伝えられないところがあり、そのことを恥ずかしく思いました」と付け加えました。(全然恥ずかしいレベルではなく、上出来だとは思いましたが、)こうした感覚があれば、これからの学生生活でも就職後でも、考えを深め、伝える技術がますます高まってゆくと思います。
ワークショップ後、高科大の学生の案内で、世界一美しい地下鉄駅と言われることもある美麗島駅を見学したあと、レストランで交流を深めました。私は黃先生、博士課程の学生、そしてガイドの陳さんと共に、日本・台湾・欧米の歴史の話(この歳になって、ようやく、それぞれの歴史が有機的に結びついてきました)に花を咲かせいたところ、いつの間にか、学生たちのテーブルがにぎやかな雰囲気になっています。シェフ(英語も日本語も分からないのに...)や店長さんも会話に巻き込んで、なにやら大騒ぎしていました。この1週間、交流を重ねてきて、彼らの心が開放的になり、見知らぬ人、言葉の通じない人も巻き込んでしまえるようになりました。そういえば、美麗島駅や八田與一記念館、ホテルの前の歩道でも、学生たちがすれ違うおばあさんやおじさん、そして同世代の人たちとおしゃべりしている姿を目撃しました。
レストランでの交流のあと、両校の学生たちは、引率者(私と高科大の黃先生)から離れて、高雄の夜市を楽しんだようです。
帰国日(14日)、午前中は寿山に登り、世界的にみても取引量の大きな高雄港を見学しました。山をおりて愛河で少しゆったりしたあと、高雄国際空港に到着しました。
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1週間ずっと一緒にいて、私たちの仲間のようになったガイドの陳さんとの別れを惜しんで、保安検査場に入りました。
16人全員それぞれが、交流や発表の場や道中で、(時には予想外の)見せ場をもつことができ、力を出しきることができました。私も引率者として、それぞれの新しい能力が日々引き出されてゆくのを楽しく見せていただきました。関空で解散します。お疲れさまでした!
【記事・写真提供:経済学部 北川亘太准教授】