7月9日(月)に関西大学客員教授 杉原薫氏による講演会を開催しました!

 経済学部主催の客員教授 杉原 薫 氏(総合地球環境学研究所)による講演会「グローバル・ヒストリーと地球環境の持続性」を7月9日(月)16時20分~17時50分(第5時限)に第2学舎4号館F401教室において開催しました。

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 杉原氏からは、アジアの急速な経済発展が与えた環境と経済の長期的な関係性の大きな変容について、グローバル・ヒストリーの観点からご講演頂きました。まずモンスーン・アジアにおける数世紀の歴史を大きく3つの段階に分け、アジア全体に占めるGDPの割合の変化からアジア経済を牽引する役割を担っていた地域がどのように移り変わったのか、その要因は何であったのか、様々な実証研究を踏まえてご指摘頂きました。その上で1500年から1820年にかけてモンスーン・アジアがどのような発展経路を遂げていったのか、地球環境の持続性という観点から、これまでの歴史像に一定の修正を迫る新たなかたちの歴史像を提起して頂きました。具体的には、近世の段階までに稲作を中心とした農業技術を通じて共通の地域性を持つ経済発展経路をある程度まで形成しつつあったモンスーン・アジアでは、それまでより力強い人口扶養力を獲得しただけでなく、その後のスミス型成長への道筋もこの時期に固めつつありました。特に長江下流域や日本の畿内といった地域で見られた小農家族経済を基礎として土地生産性を志向する労働集約的技術と労働吸収的制度を発達させた「勤勉革命型発展経路」は、この地域の生活水準が18世紀末の段階で大陸ヨーロッパと同程度の水準を達成していました。結果として1820年段階で中国とインドのGDPが占める割合は当時の世界全体のGDPの約5割に達していたのに対して、イギリスは約5%の規模でしかなく、杉原氏からは「仮に1820年の段階で世界が滅亡して一人だけ歴史家が生き残って世界史を執筆したとすれば、第1章は中国となり、第2章がインド、そして第3章でイギリスを含めたヨーロッパになるであろう」と分かり易い表現で御教示頂きました。しかしながら、西ヨーロッパで発達して世界経済に及ぼした様々な影響について、特に科学技術や制度の点で軽視できると言うものでもなく、良質な石炭へのアクセスの観点からも西ヨーロッパの果たした役割はある程度大きかったことを杉原先生は否定されておらず、あくまでモンスーン・アジアとは異なる発展経路を辿ったものとして比較史的観点から今後も引き続き議論していく重要性を強調されていました。

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 このように今回は19世紀前半までを中心にご講演いただきました。それ以降の時期、特に20世紀から21世紀にかけて激しく変化し続ける世界経済を歴史的な視座からどのように考えるべきか、今年度中に予定される次回の講演会において改めてご講演頂く予定です。

以 上

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