関西大学 人間健康学部

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世界とのつながりから考える

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 福島では未だに予断を許さない状況が続いているが、関西

は原発問題への関心が薄れつつあるのではないかと心配してい

る。四月の統一地方選の時には「京都や大阪には原発が無いの

だから、原発を選挙で持ち出すのはおかしい」というような声

もあったが、とんでもない話だ。甚大な放射能汚染が関西にま

で及ぶ可能性は低いのだとしても、福島原発の問題を遠くの出

来事として済ましてはいけない。

 

 関西に住む我々も、電力のかなりの部分を原発に依存して

活している。主に関西の都市部が必要とする電力を供給するた

めに、福井県に原発の危険が押しつけられている。原発労働者

の被曝の問題もある。我々の生活のために離れた土地で何が起

きているかを知り、問題解決のためにどうすべきかを我々も考

える必要があるはずだ。

 

 遠くの出来事と思えることでも、我々の生活と深く関わって

いる場合が少なくない。

 

 筆者はアフリカで野生チンパンジーの調査をおこなってきた。

野生の大型類人猿は、熱帯雨林の伐採や密猟などにより数が減

少し、絶滅の危機に瀕している。類人猿の棲むアジアやアフリ

カの熱帯は、日本に暮らす多くの人にとっては「どこか遠く」

の場所に思えることだろう。しかし、彼らの危機的状況は我々

の生活とも深く関わっている。たとえば、伐採された熱帯雨林

の木材は日本に輸入されている。我々が洗剤や食用として使う

パームオイルを採るため、熱帯雨林を伐採してアブラヤシのプ

ランテーションが作られてきた。また、日本で携帯電話などに

使われる希少金属(コルタン)の採掘のために森林地帯に人が

集まり、ゴリラの密猟が増えたと言われている。

 

 我々の生活は、世界中のさまざまな問題とつながっている。

自分の生活や行動が世界にどのような影響を与えているのか、

さらに未来の世代にどのような影響を与えるかを知ること、想

像すること、そして考え、行動することが大事だと思う。