本書は,「データの科学の新領域」(松原望監修)というシリーズの第二巻です。「データの科学」の原点を思いださせ、さらなる進化を遂げるポテンシャルがあることを強調する本リーズでは,第一巻『科学方法論としての統計技法』で,統計学の発展的な方法論を示しました。第三巻の機械学習に入る前に,第二巻では社会調査を取り上げています。プライバシー意識の高まりなどにより,科学的に信頼できるレベルで実施することがますます難しくなっている社会調査の変遷を振り返りつつ,海外の調査研究の動向,認知的な質問紙研究や行動観察研究と調査の関わりなどを紹介しています。
従来,メディアの読み手や聞き手でしかなかった私たちは,インターネットの発展により,自ら情報を発信するようになりました。そのような中だからこそ,私たちは,調査結果を無批判に受け入れるのでなく、科学的でない調査は「調査」とはいえないという健全な「批判的視点」を私たちの中に育てなければなりません。社会調査が人々の生活に関する様々な意思決定のための判断材料を提供するものとして重要な役割を担っていることは言うまでもありませんが,公正・公平で科学的に信頼できる調査は,簡単に実施できるものではありません。年々社会環境が大きく変化し,様々な実施上の問題も多くなっています。本書では,そうした中で得られるデータからいかに情報を読み取るかという観点に立ち,社会調査の考え方や,現場の課題に対する様々な対策の具体例をあげています。これまでに確立した現状把握と課題解決の方法に加え,新たな試みによる研究の成果が数多く紹介されています。
本書に限らず本シリーズでは,専門書というより,より広範な読者を意識して,読み物風に書かれています。あまり堅苦しく身構えずに,読書を楽しんでください。そして,本書を読み終わったとき,「調査のなぜ」をつかみとってもらえると同時に,なぜ本シリーズでは「データサイエンス」と言わずに,「データの科学」という表現を用いているのかということも理解してもらえることを期待しています。
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