関西大学 人間健康学部

お知らせNews

ハワイで学んだ「福祉は人なり」

  • ■日時

"We honor these former Employees....(私たちはこれまでの職員たちに敬意を表します)"

この夏、ハワイで見学訪問した50年以上の伝統を誇るハレ・ナニ・リハビリ&ナーシングセンターの入口に掲げられた言葉です。玄関の外側には、入居者と職員の絵が壁一面に描かれており、内側には、10年、20年、30年、40年・・・という勤続年数別に長期就業者の貢献を称える名前入りの金色のプレートが並んでいました。

センターでは、職種や資格の有無、勤務形態の違いに関わらず、職員の離職率は非常に低く、これまで人材が不足したことはないといいます。職員の多くは、ナーシング・アシスタントと呼ばれる看護助手であり、日本の介護職にあたる職種です。ハワイにおいて、看護助手は有資格者であっても決して給与の高い職業ではありません。しかし、ハワイは従事する産業が少なく、主だった仕事が観光業などに限られているため、看護助手は資格の有無に関わらず選択可能な職業として選ばれてきました。また、医療保険への加入が大きな課題となっているアメリカでは、保険加入資格が与えられ、比較的手厚い福利厚生が保障される医療福祉関係の企業は、魅力的な仕事だと考えられているようです。

一方、近年、超高齢社会を迎えている日本では、介護人材の確保が困難になっており、介護職の離職率の高さが深刻な課題となっています。2008年以降、介護人材確保のための政策として、介護労働者の処遇改善交付金や処遇改善加算を行うことで、介護従事者の賃金を上昇させるなど、処遇の向上を図る政策的な取り組みを行ってきましたが、未だ十分な効果があがっていません。

私は冒頭のメッセージボードを見たとき、「福祉は人なり」という糸賀一雄の言葉を思い出し、惹きつけられました。職員の多くが、自信に満ちた表情で楽しそうに仕事をしていたことも印象に残りました。このセンターでは、入居者の声を聞き、入居者の選択や決定を尊重することを大切していますが、同時に事業者が職員を敬い尊重していることを強くアピールしていました。

施設を支える人材を育てること。よりよい人材確保とサービスの質の向上を目指す取り組みは、入居者だけでなく、職員の権利を尊重し、入居者と職員がともに敬い、信頼し合うことができる組織づくりから始まります。このような関係こそが働き手の仕事の喜びにつながるものであり、就労意欲を高めるものになるのだと感じました。大切なことを改めて学ぶことができた貴重な機会になりました。

 
H2610sawada.jpgのサムネイル画像

(写真:ハレ・ナニ・リハビリ&ナーシングセンターの玄関に掲げられたボード)