関西大学 人間健康学部

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北風と太陽

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 超高齢社会を迎えた我が国では、「豊かな高齢社会を実現するためには、介護老人を減らすことよりもまず、元気な高齢者を増やすことが重要である」を目標に、各地方自治体主導で健康増進事業(健康づくり事業)の推進を図っています。

しかし、地域住民を対象とした健康づくり事業は、なかなか根付かないのが現状のようです。といっても、事業への参加人数は年々増加しており、それなりの成果もあるようです。では、何が上手くいっていないのでしょうか?!

それらの事業へ自主的に参加する住民の多くは、自分の健康に対する意識レベルが高く、更に他の事業へと参加の枠を拡げていきます。そして元気な人は一層元気になり、そうでない人は何もしないまま・・・つまり、健康の「格差」が生じており、本来、参加を促したい「未病(半健康で、病気に進行しつつある状態)層」と言われる健康への自己啓発が必要な層には受け入れられていないようです。

今、日本中の関係者が知恵を絞ってこの問題の解決策を検討中です。私は、この問題を考えていると、イソップ物語の『北風と太陽』《北風と太陽が旅人の上着を脱がせることができるか!という勝負をする物語》を思い出してしまいます。元来、運動が好きでない人に、いきなり「運動をしましょう」といった健康の押し売りは、かえって心を閉ざしてしまうことになりかねません。私は、この問題解決の糸口は、指導目標と指導者にあると感じています。指導目標である「生活機能低下の防止および改善」や「社会参加を促す」を大きく振りかざし過ぎで、まるで「北風」による暴風のようです。もう少し柔軟な目標の設定が必要に思います。また指導者には「エンタティナー的要素」が望まれます。健康づくりの現場が地域住民の交流の場となり、誰もが楽しめる居場所にするためには、それを心得た魅力的な指導者が必要です。「楽しい!面白い!」と評価され、参加者にまた来たいと思わせるような指導者がいれば健康づくり事業は浸透していくのではないでしょうか。

私は、関西大学の人間健康学部では、このような人材を育成できるのではないかと考えています。なぜなら、今までの日本の大学にはない「笑いと健康」というテーマを掲げている学部だからです。今後の人間健康学部が楽しみです。