関西大学 人間健康学部

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笑い祭り撮影苦心譚

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日本には笑い祭りという、たぶん世界どこにもない、けったいで愉快な祭りがある。神様に笑いを奉納して喜んでもらい、パワーアップしてもらって、その分余計にありがたいご加護にあずかろうという、厚かましい願いのこもった祭りである。たとえば、山口県防府市の小俣八幡宮に800年前から伝わる笑い講や、名古屋市熱田神宮に(社伝によれば)1300年も前から伝わる笑酔人神事(えようどしんじ)はその代表的なもので、もともとカーニバルという、ヨーロッパのある種の笑い祭りを探検していた私は、なんだか面白そうなものがあると人づてに聞いて、こちらに転戦してきた。

 あとで録画した映像を見ると、それぞれに個性もあってとても面白いが、撮影するのは大変である。いくつもの理由がある。①多くが冬か早春に五穀豊穣を願って行なわれるので、なにしろ寒い。ビデオカメラを持つ手が降る雪にかじかんで震えるのである。②多くが非常に辺鄙なところで行なわれるので、交通手段にえらく不便する。不精で運転免許を持たない私にとってこれは致命的にこたえる。公共交通機関がなかったり、あっても一日に23本とか、タクシーを呼ぼうにも携帯が通じない、などというのが普通なのだ。③私は頻尿体質で、これがかなりのハンディキャップになる。せっかく早く来て確保した撮影の好ポジションが、トイレに立つと奪われるので、たとえ漏れそうになっても、祭りが終わるまで動いてはならないのだ。④たいてい祭りはやたらに長いが、笑いは一瞬である。何時間も電車に乗り、前泊し、早起きし、険しい山を越え、撮影現場にいち早く到着し、ライバルたちを蹴散らして好位置を確保し、待望の笑いをじっと待つこと数時間、だが笑いは数秒、あっという間に終わることも珍しくない。なにしろ我慢強くなければならないのだ。

 こんなに大変でも見学に行きたくなるのは、笑い祭りがそれだけ楽しく魅力的だからである。これを読んで興味をもった、寒さに強く、車の運転が得意で、頻尿でなく、カメラワークが巧みで、辛抱強い若者たちよ、だれか一緒に笑い祭りに行きませんか?