関西大学 人間健康学部

お知らせNews

超高齢社会の進行と介護保険制度

  • ■日時

 20116月に介護保険法等の一部改正が国会で成立し、20124月に施行されました。今回の改正の柱は、介護、予防、生活支援のサービスを医療、住まいに関する施策と連携させ、包括的に提供する「地域包括ケア」を推進することです。また、認知症対策の推進ももう一つの重要な柱となっています。この二つの目標は関連しています。地域包括ケアでは、高齢になって心身の機能が低下しても、本人の希望に沿って、できるだけ地域社会で普通の生活を営めることが目標です。認知症の予防、医療、介護を充実させることはその重要な条件といえるでしょう。

 

 地域社会で生活を継続するためには、在宅ケアが重要となりますが、在宅か施設かと二分法で選択する考え方は古くなっています。自宅での生活が困難になっても、居住サービスと医療と介護とを一体的に提供できる仕組みを、地域社会の中に作り出すことが課題です。そこでは家庭的雰囲気の中でその人の希望に沿える在宅ケアの良さと、24時間体制で専門職員のケアが受けられる施設ケアの良さの両方を取り入れたケアが目指されます。

 

 そのため、2006年度から介護保険制度の中で「地域密着型サービス」がスタートしました。その中には、通い・泊まり・訪問を組み合わせて提供する小規模多機能サービスや、認知症の人向けのグループホーム、デイサービスなどが含まれています。2012年度から、さらに介護職と看護職が24時間体制で訪問するサービス、訪問看護を付け加えた小規模多機能サービスも制度化されました。

 

 こうした新たなサービスが制度化されても、それが普及しないことには「地域包括ケア」は実現できません。そのためには、介護や看護、福祉を担う人材の確保、適切な報酬制度、利用する側や地域の人々の理解といった条件も整わなければなりません。今後、数十年の間に急速に進む人口の超高齢化にむけて、研究も、人材育成のための教育も加速されねばなりません。併せて、無縁社会と呼ばれるような現実に立ち向かいながら、地域社会における新たな支え合いの仕組みをどう作り出すか、という大きな課題が問われています。