関西大学 人間健康学部

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ジャパンスタイル?

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なでしこジャパンが、女子サッカーW杯優勝の快挙を成し遂げた。

新聞では、「米国が相手でも恐れず「なでしこスタイル」を貫いた。個々の身体能力で劣る分は、運動量と足元の技術、判断の速さと連動性で補った」と称賛された。

 

思い返せば、岡田武史前日本代表監督も同じように、体格やフィジカルの劣勢を前提に、すばやく人とボールを動かすスタイルで世界で戦うと宣言していた。就任会見では、「日本人の良さを生かす」ためのキーワードとして「展開・接近・連続」をあげていた。

 

実は、この「展開・接近・連続」は、岡田氏の母校早稲田大学の元ラグビー部監督大西鐵之祐氏が、今から40年ほど前に日本代表監督を務めたときに編み出した戦術である。ラグビーはサッカーよりも身体接触が激しく、大西監督にとって、体格差のハンディをいかに克服するのかという課題は切実であった。そこで日本人を「短刀」に、外国人を「長い槍」にたとえて、「短刀」である日本人の良さを生かせるように「展開・接近・連続」の戦術を生み出した。

 

1968年オールブラックスジュニア(ニュージーランド23歳未満代表)に勝利、1971年イングランド代表をよもやのところまで追いつめ惜敗。体格に劣る日本人が、すばやい展開で相手を「ゆさぶり」勝利するという戦術イメージは、日本人に合った「日本人らしい」スタイルとして、2011年のラグビーW杯を戦った日本代表にまで受け継がれている。

 

でも、この話には続きがある。

1971年、英国の記者たちは、日本代表の戦術を称えつつも、そのプレイスタイルを「英国本来のお株を奪ったもの」、「英国ラグビーの典型的動き」と伝えていた。そして、実は、今回の女子サッカーW杯でのなでしこジャパンのスタイルも、海外メディアでは、「日本人らしい」ものとしてよりは、「バルセロナ」のようだと評されていた。

 

日本人らしく戦ったのか、そうでもなかったのか。誰の見方が正しくて、正しくないのか。あるいは、プレイスタイルが日本人らしかったのかどうかを「正しく」見極めることなどそもそも不可能なのではないか。だとすれば、なぜ、だれが、代表のプレイスタイルと国民性を結びつけて語るのだろうか。