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ゼミ紹介(Research FOCUS)黒上ゼミ

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research13  黒上 晴夫 教授 「考えることを教えたい。」

考えをまとめるコツや、考える手順を子どもたちに教えたい。

子どもたちが学校を出るまでには「言葉を自在に使えるようになる」「文字を読んだり文章を書いたりして考えを伝え合う」「日常生活で必要な計算ができるようになる」など、これらは最も大切なことで、学力の基礎といえます。でもそれだけではなく、それらを核にして、社会や自然についての知識を身に付け、インターネットやテレビから入ってくる情報を正しく理解し吟味する力も必要です。新しい情報や知識を得て理解するためには、その知識について疑問を持ったり、いままで持っていた知識と関係付けたり、実際に行動してみて納得するさまざまなプロセスが必要です。

何かについて考え調べていくと、それがもっと深く理解され、また新しい疑問が浮かんできます。そしてまた新たに調べ知識を得ることで、物事を深く理解するようになります。人がものを学ぶとき、それは知識として記憶するのだけではなく、さまざまな「思考のプロセス」を通して身につけていくはずです。さらに、自分の知っていることを人に伝えるとき、何をどう伝えたらよいかを考えます。持っている知識を整理し、どのように組み合わせ表現すれば伝わるのかを頭の中で考えます。これもまた「思考のプロセス」を通して人に伝えることになります。

このようにさまざまな知識を整理し、関連付けるために、起きた事象を時間軸で順序立てる、同じ背景を持つものを関連付けることも考え方のひとつです。いろいろな考え方を組み合わせながら、複雑な思考が形成され、それにつれて高度な知識も積み上げられていきます。一見関係がないように見えるものでも、起こった順に並べる、影響の大きな順に並べる、原因と結果の順に並べるなど、何かの軸に沿ってそこから新たな関連性を見つけるような「考えるプロセス」を手順として示すことで、子どもたちはその手順を使って考えを進めることができるのではないでしょうか。そして何度もその手順をたどっているうちに、どんどん力を付け、やがて自分のものにできるのではないでしょうか。

日本の教育では、自分の考えを話す・表に出すことの大切さを教えられてないのではないか。

これまでの日本の授業では、"アイデアや問題を視覚化する"、"考えや情報を整理する"、"意見を友だち同士で共有する"、"考えを評価する"といった「思考のパターン」を重視してきませんでした。一斉授業での話し合いで、賛成意見と反対意見を黒板に書き分けて、クラスとしての結論を導き出すことはやってきましたが、一人ひとりの頭の中にある思考を表に出す重要性に気がついていなかったのです。

考えを進める手順やイメージさせる図として、シンキングツール探究マップといったツールを開発しています。⼩さい頃から自分なりの考えを表す訓練をすることで、自分自身の考えを他の人に対して話すことできるようになるでしょう。そして、正しい、正しくないを気にするのではなく、考えを話す・表に出すことそのものに自信が持てるようになると考えています。

私は20年以上、週2回は全国を回って実際の授業を見、現場の先生とディスカッションをし、より「考える力」を身につけるためにはどうしたら良いかを一緒に考えるという活動を続けて来ました。教育学は、物理学や化学、天文学などの理学のように一つの真理を追究するという分野とは違って、現場で実践したことで起きる「結果」を重視する学問です。いくら立派な理念や哲学があっても、現場にそぐわなければ意味がありません。上から目線で意見を述べても、現場を変えることができなければ意味がないということになります。

ゼミの授業では、遠隔授業が余儀なくされる中、初等中等教育で普及しているロイロノートという思考支援アプリによって、各自の考えを容易に共有できるようになるという劇的な変化がありました。学生はまだまだ発想の幅が狭く、知識が不足している面が否めません。研究テーマを選ぶにしても、興味深いテーマや分野がたくさんありますが、学生はまだそこに気づきません。だからといって、強制的にテーマや考えを押しつけるのではなく、新たなツールや環境、コミュニケーションを通じて、少しずつ刺激や気づきのチャンスを与え、発想そのものを変えていきたい。そして、考える力を身につけ、ぜひ社会で自己実現して欲しいと願っています。

students' COMMENTS

「ダメといわない」「否定をしない」「学生の主張を尊重してくれる」先生。

黒上先生はひと言でいうと「ダメと言わない」「否定をしない」「学生の主張を尊重してくれる」先生です。こうしなさいとか、こうしなければダメだということは、よほどの事がなければ言わない方です。一人ひとりの意見を尊重してくれた上で「それならこんなのどう?」って学生の気持ちを乗せてくれる先生です。逆にいうと、先生からこうしなさいという強制がない分、こちらからの行動が求められるということでもあります。この1年半はリモート授業がメインでしたので、ゼミ生同士のコミュニケーションのために、Zoomの授業に「はぁって言うゲーム」を取り入れて盛り上げてくださったりと、あんまりベラベラしゃべるタイプではありませんが、ユーモラスでお茶目な先生です。

キットパスで 『楽がき文化』 の創造

メルボルンに行き、向こうの学校で授業をするのが、このゼミの恒例行事。

私たち4年次生は、今は卒論の仕上げの段階。それぞれが興味あるテーマを掘り下げる形で決めています。例えば「漫才の台本を使って勉強をすることは記憶学習にどんな関わりがあるか」や「美術教育にICT機器を導入して、美術への苦手意識を改善する」など。
黒上ゼミは3年次生の時に、全員でオーストラリアの第二の都市メルボルンの学校に行き、そこで2週間、理科と日本文化を融合させた授業をするというのが恒例行事になっています。私たちも授業計画を立てて、よし!いくぞ!という段階で新型コロナウィルスの影響で中止になりました。とても残念でしたが、黒上先生が卒業旅行でメルボルン行きを計画してくださっています。英国風の建物が連なる街並み、おしゃれなカフェ、街を行き交うトラムなど、みんな今からワクワクが止まらないほど楽しみです。

学食まっぷ