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第3回国際シンポジウム

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第3回国際シンポジウム
カントリーレポート(午前の部)要旨    

松原 禎夫(法務省法務総合研究所国際協力部・教官)

 午前の部の国別報告セッションでは、インド・デリー高裁のA・K・Sikri長官代行、日本・知財高裁の武宮英子裁判官、韓国のKyu-Hong Lee裁判官からの報告がなされた。


(A.K.Sikri氏)

Sikri長官代行は、インドの知財保護における裁判官の役割の重要性を中心に報告した。Sikuri長官代行によれば、インドの裁判官は、知財の適切な保護のため、既存法の解釈に当たり、従来の概念を発展させ新たな理論を展開してきた。例えば、従来、一般的名称は商標として保護されないと考えられてきたが、判例の発展を通じて、現在ではその名称が独自の意義を得て特定の商品を意味するに至れば商標保護の対象となり得ると理解されており、その例として、“Century”、“HolidayInn”などを挙げた。また、インドの裁判官は、既存法の想定しなかった新たな問題に対処するため刷新的な手法を採用しており、知財侵害により得られた財産や証拠の保存を目的とした差止命令、侵害者が得た利益相当額を被害者の損害額と推定することなどがその例である。最後に、Sikri長官代行は、今後の課題として、迅速な紛争解決のため、ADR、特に調停、仲裁などの更なる活用を指摘した。


(武宮 英子氏)

武宮裁判官は、日本の特許法改正について報告した。同改正法は、2011年6月に公布されたが、武宮裁判官は、改正目的として、(1)ライセンス保護の強化、(2)共同研究・開発促進を目的とした発明者の適切な保護、(3)紛争の迅速な解決を目的とした特許審判・訴訟手続の見直し、(4)出願者・特許権者等の利便の促進を挙げた。武宮裁判官は、ライセンス保護の強化に関し、同改正により、通常実施権について登録なしで第三者に対抗できるようになった旨紹介した。次に、発明者の権利保護に関し、同改正により、真の権利者は冒認者等に対し特許権の移転請求ができるようになった旨説明した。次に、迅速な紛争解決に関し、再審の訴え等における主張制限、審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止、訂正請求・訂正審判の請求単位及び審決の確定範囲の明確化、無効審判の確定審決の第三者効の廃止について述べた。最後に、出願者等の利便促進に関し、特許料減免期間の延長、新規性・進歩性喪失の特例拡大などについて言及した。


(Kyu-Hong Lee氏)

 Kyu-Hong Lee裁判官は、主として、韓国の裁判制度について報告した。韓国では、高裁レベルの裁判所として特許裁判所があり、主たる地裁及び高裁には知財専門部が設置されている。特許裁判所は、特許審判院による特許権等の発生、消滅、訂正等に関する審決に対する不服の訴えを管轄し、侵害差止請求・損害賠償請求などは通常裁判所で審理される。Lee裁判官によれば、特許裁判所や通常裁判所知財部に勤務する裁判官の異動サイクルを比較的長くすることや海外・国内研修の実施などにより裁判官の専門化を図っているとのことである。Lee裁判官は、特許裁判所のような特殊裁判所の長所として、専門化した裁判官による迅速かつ予測可能な判決、集中審理などを挙げた。また、一般的な短所として、経済性や遠隔地居住者に与える不便さなどを指摘したが、韓国では相当数の事件数があることや迅速な解決が期待されることなどからこれらは問題となっていないとのことである。


(松原 禎夫氏)

 

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カントリーレポート(午前の部) 要旨
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