関西大学 人間健康学部

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人間行動とスポーツ科学

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現代社会は、ますます質の高い生き方が求められ、健康で活力のある明るい社会の創造に向け、そのあり方・問題の所在を、人間とスポーツ、身体運動、健康生活等のかかわりを通して総合的に考えなければならない。運動やスポーツのこれまでを考え、同時にスポーツ現象や人間・社会・文化への理解を深めるということである。具体的には、理系分野を視野に入れながら、身体行動に関する様々な文系分野である生活文化、スポーツ行動を生活設計へ応用することを考えることである。すなわち、人間のメカニズムと人間行動事象を融合することも一つの考え方でもある。

 スポ-ツ競技で超人的な50㎝を超える記録が出ると「人間の限界」という称号が与えられる。しかし、常にその壁は突破され、「限界」を口にできなくなっている。その一因は、スポ-ツ科学が浸透されたことによるものである。これ以上の記録更新はあるのであろうか。それは、いつなのであろうか。例えば、1968年のメキシコ市オリンピックスタジアムで優勝候補でなかった米国のボブ・ビ-モンが幅跳びで信じがたい記録を打ち立てている。物理学者たちは、高地であることで引力1㎏につき1g軽く、空気抵抗が少ない、空中で10㎝、助走の加速で20㎝得をしている。脳科学者たちは、高地で酸素不足では、特殊な刺激を受けると中枢神経の感度が急激に鋭敏になりの好記録ではないかとしている。それゆえに記録は、高地世界記録として扱われている。俗に言う「一発屋」として扱われているしかしながら、別の説もあげられている。実は、「失敗ジャンプ」であり、助走からの踏切と空中動作が、今までと違っている。この後、ビ-モンは目立った記録もなく引退した。

「鳥は、想像以上に飛べない」詩人、寺山修司の言葉が思い浮かぶ。現代科学は、「足の高さが低い」「腕の角度がよくない」などと人間の動きをデ-タ化しカメラ撮影でコマ送りにされたフォームを分析する。これらの分析を加えれば加えるほど、選手たちの想像力は枠にはまっていくのではなかろうか。科学者やスポ-ツ関係者は、とても科学的に現実的であるということである。例えば野茂選手のトルネ-ド投法やイチロ-の振り子打法といった型破りなフォ-ムの選手達が野球界を変えたことや陸上界にも、とんでもない走り、跳躍する選手が出ている事実を無視することは出来ない。科学は後追いであるといえよう。日常生活の中においても、人間行動から得られる文化的考えは、科学的な考えと融合することで新しい考えを創造していく糸口であるといえる。