関西大学 人間健康学部

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スポーツ 一筋の光

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私自身、けっして自慢のできるような選手ではありませんでしたが、中学、高校時代は陸上選手、大学時代はラグビー選手としてスポーツ実践を体験しました。その後大学院に進み大学教員となり、スポーツ科学研究者としてヒトの身体運動の仕組みを研究するようになりました。同時に、スポーツを実践する選手をコーチする立場も体験し、日本代表のラグビーチームのトレーニングコーチを7年務めた体験が今に生きています。

 

大学の授業ではスポーツ種目の実技授業を担当しました。学術研究とスポーツ指導の複数の仕事を、毎日スイッチを切り替えながら体験していくなかで、否応(いやおう)なく思い浮かぶことがありました。それは、ヒトの身体運動の仕組みを研究してわかるスポーツ科学の知と、人間を対象としたスポーツ現場の実践の知は別である、ということです

 

スポーツ科学の講義を担当するにあたって、最初は、観察の世界、つまり科学の学術世界の話をしなければならない、と思いました。でも、講義を聴く学生たちの眼はあまり輝いていないのです。自分自身にも、スポーツをするときのようなあの燃え立つ心が出てきません。自分がノッテいないのだから、学生もノッテこないのか・・と思いました。

 

ある日、スポーツ現場の話もしてみよう。実践の知の話をしよう。こう思い立ちました。ここまでは運動制御の筋、神経系の学術の話。これは表の話。じゃあ、今から裏の話をするよ、と言って、私が自分で選手として体験した動作感覚の話や、体育教師、コーチとして感じた運動者(選手)のナマの動作感覚の話をしてみたのです。学生たちの目が生き生きとしてきたのです。さっきまで寝ていた学生も、気配を察知して起きて聞き耳を立てているのです。

 

スポーツ科学や観察の世界と、スポーツ動作実践の世界を区別して考えてみたい。そして、両者の関係性、つまり対応関係をみていきたい。そうすれば、科学の世界と実践の世界の間に橋渡しができ、それぞれが互いに相補う関係になり、互いが互いをなくてはならない存在になることが見えてきたのです。

 

関大に来て1年が経ちます。関大の学是が目にとまりました。学の実化(じつげ)。学理と実際の調和です。関大の学是は、人間健康学部にこそありと思うと、あたたかな一筋の光が差し込んできました。