関西大学 人間健康学部

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おとなりの国、台湾

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9月の初旬、台湾へ行ってきました。外でよく見かけたのが、ちいさな子どもを連れた年配の女性。聞くところによると、台湾では女性の9割以上が出産後も仕事を続けており、日中は子どもを両親に預けることが多いそうです。なかには、子どもを両親に預けて別々に生活し、週末など1ヶ月に数回だけ子どもと逢う家庭や、数か月間ずっと別々に暮らしている家庭もあります。日本でも、最近は出産後も仕事復帰している女性が多くいますが、さすがに9割以上ということはないでしょう。子どもと別々に生活をして仕事しているという話はあまり聞いたことがありません。台湾ではどこにでもある風景で、びっくりしている私に台湾人はびっくりしていました。

 

そもそも、台湾には「専業主婦」という考えがありません。日本で結婚や出産を機に仕事を辞めて家庭で家事や子育てをしている女性がいることに台湾人は驚いていました。台湾では、仕事に価値を置いているキャリアウーマンが多く、最近では女性管理職が増えているそうです。女性の政治参加や職場での管理職比率や所得などを数値化したジェンダーエンパワーメント指数(Gender Empowerment Measure)が20070.726で世界22位。日本は58位であり、その差は顕著です。台湾では、性別よりも仕事ができるかどうかが評価されているそうです。

 

仕事にやりがいや生きがいを感じている女性にとって、女性が仕事をすることが社会的に受け入れられていることや、性別に関係なく仕事が評価されること、家族が子育てや家事に協力的であることはとてもありがたいことだと思います。ただ、女性が出産後も仕事を続けている背景には、本人の希望というだけではなく、共働きではないと生活することが大変という経済的な事情もあります。仕事をしていない女性は社長夫人クラスの人たちであり、仕事をしていないとそれだけで贅沢だと思われることもあるそうです。

 

共働きが社会問題にもつながっています。台湾自殺防止学会が2009年に発表した調査によると、台湾の青少年による自殺件数が増加しており、その最大の原因が人間関係でした。共働きで両親不在の家庭が多く、親子のコミュニケーションが極端に少ないため、子どもが孤独を感じたり、インターネット漬けになる傾向が多いことが明らかになりました。

 

 人生の中で何に価値を置き、優先順位とするのかは、一人ひとり異なります。台湾文化に触れて、日本との違いに驚いたり、すばらしさを感じたり、考えさせられることが多く、個人の価値観や生き方が、その人の生まれ育った環境や文化によって大きな影響を受けていることを改めて感じました。海外へ行くと、五感からたくさんのことを吸収し、眠っていた思考が目を覚まし、感覚も研ぎ澄まされ、たいせつなことに気づく自分と出逢います。