概要
今や世界中に猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界で死亡者数27.9万人、感染者402.4万人、国内死亡者数624人(2020年5月10現在)という甚大な被害をもたらしています。さらに、感染防止のために人と人との交流が遮断され、日常の活動も長期にわたり制約を受けるなど、社会には大きなストレスと閉塞感が蔓延しています。一刻も早くこの状況を克服し、人類の健全で文化的な暮らしを取り戻すことが、最大の課題となっています。
本学においても、総合大学としての強みを活かし、この最重要課題の解決に向けて、迅速に取組むことで、社会的な責務を果たすことが重要であると思料いたします。
つきましては、今般の新型コロナウイルス禍の克服に資する研究課題を下記のとおり緊急募集いたします。
なお、今回の課題募集は、事態の緊急性に鑑み、2020年度「教育研究緊急支援経費」予算から措置(今年度限り)しますが、次年度以降についても、「教育研究高度化促進費」の募集において、今回と同様の研究課題を含めることを予定しています。
また、審査は原則として、関西大学教育研究緊急支援経費取扱規程に基づいて行うものとします。
研究課題
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の克服に向けての社会的課題の解決に資するものに限る
具体的な研究アプローチの例示:
- 大地震が発生し避難所への避難が必要になったときの感染症対策(複合災害発生時の問題)
- 公衆衛生の立場から見た感染症対策の研究
- ウイルス感染症の予防・治療につながる医薬品の開発
- 医療崩壊を回避するための社会資源の研究
- 経済界・産業界に与える影響に関する研究
- ポスト・コロナに予想される時代の変革(働き方を含む生活様式の変化など)
- 罹患者への差別や社会的孤立の解消に向けての研究(社会学的・心理学的アプローチ等)
- SNSによるデマ拡散などを分析する社会行動学的アプローチ
- 感染症対策にかかわる現行の法制度の限界と課題
- エビデンスに基づいた修学困難な学生への支援について
- 緊急事態宣言下(行動制約下)における学生の生活行動パターンについて
- オンライン教育の功罪
- 過去のスペイン風邪の研究(歴史研究)
- 感染症と人類の戦いの歴史からみた時代の変化
- 文化(活動)の復興 等
助成対象
区 分 | 個人研究 | 共同研究 |
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募集形態 | 本学の専任教育職員(特別契約教授を含む)が単独で行う研究 | 本学の専任教育職員(特別契約教授を含む)が共同で行う研究 |
研究期間 | 2020年7月1日(予定)~2021年3月31日 | |
助成額(1件あたり) | 100万円以下 | 300万円以下 |
採択予定件数 | 4件程度 | 2件程度 |
申請
教育研究緊急支援経費計画書(COVID-19)を、所属長を経て、学長に提出。
(申請される場合は、あらかじめ研究支援・社会連携グループ(研究支援担当)にご相談ください。)
審査会
大学執行部において審査を行う。
タイムテーブル
課題の発生時点 | 「計画書」等の作成 |
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審査会の開催 | 採択および支給額の決定 |
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決定後 | 支出開始 |
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当該計画等の終了後 | 「決算報告書」の作成 |
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終了後1カ月以内 | 「研究報告書」の作成 |
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終了後1年以内 | 「成果」(出版・刊行物)の提出 |
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様式ダウンロード
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採択実績・成果概要
2020年度(令和2年度) | 採択一覧 PDF | 成果概要 PDF |
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No. | 研究代表者 | 研究課題 |
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1 | 小井川 広志 教授 (商学部) |
東南アジア諸国におけるコロナ対応と世界経済復興の役割に関する研究 [研究概要] 本研究は、新型コロナウイルス感染症対策に関連したこれまでの東南アジア各国の取り組みと今後の課題および展望を、政治経済学的視点から整理・分析することを目的としている。東南アジア諸国は、2003年のSARS感染を教訓に、今回の新型肺炎の感染拡大を抑え込むことに一定程度成功している。世界でもいち早く入国制限の緩和などを打ち出し、経済正常化に進み始めているが、これは未だ感染拡大が続く欧米諸国とは好対照をなしている。同じくコロナ禍が収束しつつある台湾、韓国を含めて、コロナ後の世界経済回復は、アジアが中心的役割を果たすことになるであろう。本研究では、主に東南アジア諸国に焦点を当て、日本が果たすべき役割にも言及しながら、コロナ後の世界経済回復の課題と可能性を検討していく。 |
2 | 越山 健治 教授 (社会安全学部) |
COVID-19における日本の対策本部活動状況の資料分析 [研究概要] 本研究は、都道府県の感染症対応情報を材料に、都道府県の災害対応の違いを速報的に明らかにするものである。今回の危機対応は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく感染症対策であり準備されていた行動計画について自治体間に大差はない。しかしながら、首長の意思決定、組織体制・マネジメント方法含め、地方自治体の特色が大きく現れている。これらの事実を踏まえ、感染症患者情報の推移、災害対策本部資料、実行施策など比較できるデータを用いて、国・地方自治体の初動時における一連の活動について、全体状況を整理し、国の垂直型統括の実行性の実態、地方自治体の独自戦略の有無、対策本部運営組織の特徴等を相互比較する。 |
3 | 和田 隆宏 教授 (システム理工学部) |
数理モデルによる新型コロナウイルスの感染性の探求 [研究概要] 新型コロナウイルス感染症の特徴のひとつとして、自覚症状のない感染者(無症候感染者)が多いことがあげられる。今後、抗体検査が広く行われることで、感染者の実数が明らかになり、無症候感染者数を推定できるようになる。本研究では、無症候感染者を考慮した数理モデルによって感染者数の推移を解析することで感染拡大のメカニズムを考察し、拡大防止に貢献する。第一段階では、感染者を有症候者と無症候者に分け、それぞれ異なる感染力を仮定することで、感染者の推移を微分方程式によるシミュレーションから求める。第二段階では、単純なグループ分けでなく、感染力が確率的にばらつくとして乱数を用いたシミュレーションによる解析を行う。 |
4 | 佐藤 知広 准教授 (システム理工学部) |
銅含有樹脂を用いた3D造形による材料開発と抗菌性の検証 [研究概要] 新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、一時的にマスクなど身の回りの衛生用品の不足が深刻となった。今後しばらく衛生用品の大量消費は継続し、衛生用品など生活に身近なモノの抗菌化が進むと考えられる。 そこで、本研究では「抗菌性を有するマスクや衛生用品を迅速に提供する方法を開発すること」を目的とする。具体的には、家庭用の3Dプリンターなど汎用的な装置を用いて銅配合樹脂による造形を実施する。銅は抗菌性を有することが知られており、その銅を配合した樹脂フィラメントを用いて従来の樹脂のみの場合と同様の造形性の実現を目指す。銅配合樹脂による造形物の抗菌性や銅配合樹脂による3D造形条件の最適化が本研究の課題となる。 |
No. | 研究代表者 | 研究分担者 | 研究課題 |
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1 | 内田 慶市 特別契約教授 (外国語学部) |
藤田 高夫 教授 (文学部) 岡田 忠克 教授 (人間健康学部) 林 武文 教授 (総合情報学部) |
「コロナアーカイブ@関西大学」を核とした新型コロナウイルス感染症およびスペイン風邪の記録と記憶の収集発信プロジェクト [研究概要] 本研究では、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)および約100年前のスペイン風邪の流行に関する、関西大学関係者の記録と記憶を収集したデジタルアーカイブを構築することを目的としている。このため、コミュニティアーカイブの手法を活用し、関西大学の構成員がCOVID-19流行下の日々に感じたメモや、街や大学のスナップ写真や動画、音声ファイルの投稿を受け付けるユーザ参加型のデジタルアーカイブを構築する。また、本学のイベント参加者にCOVID-19またはスペイン風邪に関するモノ資料の持参してもらい、その場でのデジタル化も検討する。本研究によって、将来、このコロナ禍の時代を研究するうえで必要かつ本学にしかないユニークなアーカイブコレクションを得ることができるようになるだろう。 |
2 | 土田 昭司 教授 (社会安全学部) |
元吉 忠寬 教授 (社会安全学部) 近藤 誠司 准教授 (社会安全学部) |
新型コロナウイルス感染症とその対策にかかる社会における情報流通の問題点と市民の行動:国際比較も視野に入れて [研究概要] 新型コロナウイルス感染症流行による自粛生活は、市民に強い心理的ストレスをもたらした。心理的ストレスは、第1派流行期のSNSなどにおける差別的情報行動や自粛警察などの独善的行動の主要な原因ではなかったかと推測される。 本研究では、①第1派流行期以後の緩和された自粛生活(今後の推移によっては第2派第3派流行期を含む)における心理的ストレスと、市民の行動、特に、差別的・独善的情報行動の実態を調べると共に、これらの関係を明らかにする。②日本とは経済状況、医療体制、文化的背景が異なる諸外国との比較を行う。③知的障がい者、聴覚障がい者、視覚障がい者などの災害時要配慮者にかかる新型コロナウイルス感染症流行における情報行動の実態を明らかにして、望まれる支援の在り方を検討する。 上記のためにオンラインによる国内外の一般市民への質問紙調査、諸外国に居住する日本人駐在員への聞き取り調査、災害時要配慮者関係者への質問紙調査を実施する。 |
3 | 大矢 裕一 教授 (化学生命工学部) |
葛谷 明紀 教授 (化学生命工学部) |
高分子ミセルを用いた対コロナウイルス経鼻型ワクチンの開発 [研究概要] この研究では、鼻腔粘膜を介してウイルスの抗原タンパク質をデリバリーするナノサイズの微粒子状キャリヤーを開発します。このナノ粒子は生分解性ポリマーからなるプラスに帯電した粒子を、免疫担当細胞に親和性を持つマイナスに帯電した多糖で被覆した構造をしており、鼻粘膜を介して効率的に免疫を誘導できる可能性があります。成功すれば、ナノ粒子溶液を鼻に噴霧するだけという実に簡便な方法で、ウイルスに対する免疫をつけることができます。これにより、高齢者や基礎疾患保有者、妊婦、乳幼児などの「弱者」に対しても、極めて簡便・安全・低負担・低侵襲なワクチン接種が可能となり、医療体制が脆弱で感染爆発が危惧される途上国や難民キャンプ等において、熟練した医療従事者でなくともワクチン接種できる体制を提供できます。 |
英文表記
制度名の和英対照表
和文:関西大学教育研究緊急支援経費(COVID-19)
英文:Kansai University Contingency Fund for Education and Research Outlay Support(for COVID-19)
成果発表の注記及び英文による謝辞
和文:「本取組(又は本取組の一部)は、20XX年度関西大学教育研究緊急支援経費(COVID-19)において、課題「△△△△△△」として支援経費を受け、その成果を公表するものである。」
英文:This is a product of research which was financially supported (in part) by the Kansai University Contingency Fund for Education and Research Outlay Support(for COVID-19), 20XX"△△△△△△"