研究の意義とその独創性
本研究の意義と独創性は、次の2点にある。
まず第1に、「マイノリティ」を扱う新たな視角・方法論である。従来の「人権」論的アプローチ、社会学的アプローチをふまえつつ、それらの限界を超えるべく21世紀国民国家論(グローバル市民国家論)とマイノリティ、に焦点をあてる。第2に、新たな「グローバル市民」の形成とマイノリティにかかわる研究である。周縁的存在から境界的存在へ、そして「境界」そのものの「溶解」へとつながる(つながるべき)「マイノリティ」は、従来の「国境」と国家の内実を大きく変容させる。
すなわち、本研究は、国民国家(Nation-State)が、「国民(Nation)」から「グローバル市民」へのみならず、「国家(State)」が法制的・心理的「状態(State)」へと脱構築されていく緊張状態についてマイノリティを手がかりに考察することにその意義と独創性を有するものである。
関西大学の特色としての
「マイノリティ研究」
この特色を体系的、継続的に発展させ、「マイノリティ研究」の研究基盤を確立するものとして本研究は位置づけられる。
まず第1に、「アジアの法文化とマイノリティ」という研究内容は、本大学が採択されたグローバルCOEプログラム「東アジア文化交渉学」と「周縁からのアプローチ」などの点で密接な関係をもち、両共同研究が相乗的に発展することを目指すものである。
第2に、「マイノリティ」論に関する本共同研究と、関西大学人権問題研究室(1985年設立)における「人権」研究の蓄積が有機的に結合し、国内外に発信しうる「マイノリティ」研究の基盤が形成される。このことにより、学部・大学院における「マイノリティ」論関連の教育・研究が充実し、特色ある先端的研究教育基盤の形成に資する。