マイノリティ研究センタープロジェクト総括
「国際関係とマイノリティ」研究班
このプロジェクトが始まった時、私たちは大きな問題を抱かえていた。そもそも私たちの研究目的である「マイノリティ」とは何を意味するかについて、一致していなかったからである。一般的には、マイノリティとは、マイナーな人々のことであり、すなわち、支配的な価値や権利・統治組織などから構造的に排除されている人々のことを指すだろう。そうであるとすれば、中心的な問題はそのような排除の否定であり、そのようなマイノリティが、支配的な価値や権利・統治組織などに主体的に参画しうるような世界を構成するということになるだろう。しかし、そのような主体的な参画が可能となった世界においては、もはやその人々はマイノリティではない。つまり、マイノリティとは、克服されるべき何か、ということになる。
果たして、私たちの「マイノリティ研究」は、例えば「奴隷研究」とか「拷問研究」
と同じように、克服されるべきものの研究なのだろうか。それとも、現実世界の認識やあるべき秩序の構成の条件となるような積極的な意味を持つ概念としてマイノリティを私たちは研究しているのだろうか。
私たちは、このような問いを常に念頭に置きつつ、具体的な研究を推し進め、その成果を検討してきた。その答えについては、いまだ一致は見られないかもしれない。しかし、このような問い自体が、私たちの世界認識の幅を広げてきたことを確かである。
西 平等(主幹 研究統括)
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