【漢籍】『徂徠山人外集』

文庫>善本・貴重書

 11巻9冊 荻生徂徠撰 写本
 泊園文庫蔵 (LH2*4.02**129)

荻生徂徠(1666-1728)は江戸に生まれ、苦学の後、元禄9年(1696)、柳沢吉保に見出されてこれに仕え、将軍綱吉にも謁見して名を成した。朱子学に反対し、言語の考察にもとづく「古文辞学」の立場から中国古代思想の研究を行なうとともに、詩文の制作にも積極的にとりくんだ。門人に太宰春台、服部南郭、菅甘谷などが出て、いわゆる蘐園(けんえん)学派を形成したことは良く知られるとおりである。

服部南郭『物夫子著述書日記』には、『読荀子』4巻・『読韓非子』3巻・『読呂氏春秋』4巻など6部の書が未定稿であったと記されているが、これら3種、計11巻は『徂徠山人外集』や『徂徠外集』の名で、写本により世に伝わっていた。

本文庫所蔵本は『徂徠山人外集』11巻の中で特にすぐれた写本であり、今中寛司・奈良本辰也編『荻生徂徠全集』第3巻(河出書房新社、1975年)所収の『読荀子』『読韓非子』『読呂氏春秋』は、すべて本文庫所蔵本を校訂に使用している。巻末の今中寛司氏による解題には、本文庫所蔵本『徂徠山人外集』に関する詳細な解説が見える。

また、同巻の月報である柴田実「徂徠学と泊園文庫」は、徂徠学の顕彰に泊園書院が果たした役割につき実例を挙げて説明しており、本書に代表される泊園文庫蔵の書籍が徂徠学や近世・近代における大阪の学術研究に欠かすことのできないことを物語っている。