所長あいさつ
MESSAGE所長あいさつ
長い伝統をふまえつつ、
グローバル化やデジタル化に
積極的に対応し、
また若手人材の育成に努める

関西大学東西学術研究所は1951年(昭和26年)4月に設立され、2021年(令和3年)に70周年を迎えました。
今や東西学術研究のメッカとして世界にその名を知られているといってもいいでしょう。
今日でこそ学問の越境や学際的研究が声高に叫ばれるようになっていますが、設立当初から「東西両洋文化の学術研究、殊に比較研究を行い、世界文化の融合に貢献する」という高い理念を掲げた本研究所は、まさに今日的学知のあり方を先どりしてきたといえます。ここには東西にわたる広範な視野、一国主義に陥らない複合的な見方、異文化間交流に着目する柔軟な視点、そこに通底する共生的理念があります。そして、その一つの形が具現化されたのが、「文化交渉学」という新しい学問体系の構築を目指したグローバルCOEプログラム(2007-11年)(平成19年~平成23年)であり、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に採択された「アジア文化研究センター」(CSACII、2011-15年)(平成23年~平成27年)でした。さらに、2017年(平成29年)4月、私立大学研究ブランディング採択事業として「関西大学アジア・オープン・リサーチセンター」(KU-ORCAS)が設立されました。2022(令和4年)年4月からは、本研究所内の常設研究拠点となっています。これらの事業は、すべて国内外から高い評価を得られました。
現在、本研究所はKU-ORCASも含め、8研究班の体制をとり、それぞれの課題のもとに幅広い研究活動を展開しています。①研究、調査およびその成果の発表、②研究例会・講演会・シンポジウムの開催、③外国人研究者の受け入れなどの活動です。
研究員は本学の専任教員のほか、委嘱研究員・客員研究員・非常勤研究員として外部研究者に参画していただくとともに、多くの海外研究機関とネットワークで結び研究分野の開拓に注力し、対外的発信力を高めています。また若手研究者の養成にも力を入れ、準研究員制度を設けて大学院生の研究能力の向上に努めています。
本研究所の研究成果としては、学術論文が『関西大学東西学術研究所紀要』(2024年に第57輯を刊行)に毎年掲載されるほか、各研究者の研究成果を集成した研究叢刊(同69冊)、訳注シリーズ(同21冊)、資料集刊(同93冊)、索引シリーズ(同1冊)、国際共同研究シリーズ(同10冊)、東西学術研究所研究叢書(同17冊)などの刊行があります。これほど多くの成果を継続的に挙げている研究所は国内でも稀であり、まさに私どもの誇りとするところです。
このほか、大阪の著名な漢学塾「泊園書院」の蔵書約1万6千余冊が寄贈されたことが機縁となって1961年(昭和36年)、本研究所内に泊園記念会が設けられました。毎年秋に市民講座として開催される「泊園記念講座」はすでに60回を数え、雑誌『泊園』も63号を刊行しています。
このように、当研究所は70年以上にわたって活動を展開し、多くの実績を蓄積してきました。ただし、取り組むべき領域はなお多く、グローバル化やデジタル化などの時代的要請に応える必要もいっそう増しています。今後とも大方のご理解、ご支援を得てさらなる変革と発展を期したいと考える次第です。