環境都市工学部

学びのスタイル

建築学科
2022年3月卒業
檍 健太

研究テーマ

森林の密度分析による土砂崩壊危険域の抽出~二次林における樹木密度分析図の作成~

リモートセンシング技術で森林の密度を測定し防災や森林管理の効率化に役立てる。 リモートセンシング技術で森林の密度を測定し防災や森林管理の効率化に役立てる。

LiDAR(light detection and ranging)というリモートセンシング技術を応用して森林の密度を分析し、そのデータを視覚化しました。近年熱海市や熊本市でも発生した土砂災害は、森林の管理が行き届かず、樹木の密度が低下して土砂が崩壊したことにも要因があります。私も関西大学のサテライトキャンパスがある兵庫県丹波市の森林を調査したところ、想像以上に周辺の集落が土砂災害に巻き込まれることを知りました。そこで本研究では兵庫県がLiDARで測定した最新のデータから森の密度を調べ、GISという地理情報システムに落とし込み、住民情報や傾斜といったデータをいくつも重ね合わせて分析図を作成しました。図は専門知識がない人でも森林のどこを植樹・間伐すれば良いのか、どの地域まで土砂が押し寄せるのかが分かりやすいようなマップで示しました。この研究が森林管理を効率化させたり、地域の方の安全につながればうれしく思います。

環境の現状、リスクを捉えた研究が日本の都市計画に新たな指針を示す

近年起こった土砂災害では、山林から流された樹木が家屋を破壊するということがありました。一つひとつの建物の集合体が都市であるとするなら、この時代に都市を考えるということは、山林を含む周辺の自然について考えることにもつながります。GISをうまく取り入れた檍さんの研究は、気候変動によって自然災害のさらなる激甚化が予想される日本の都市計画や国土計画に対して1つの指針を示すものだと考えています。

建築学科 宮﨑 ひろ志 専任講師

  • ※この学びのスタイルは2021年度のものです。

建築学科
2021年3月卒業
福島 宏佳

研究テーマ

絵巻物にみる前近代の屛風と几帳

絵巻物に描かれた屛障具と登場する人物から、中世の人々の暮らしや文化を明らかにする。 絵巻物に描かれた屛障具と登場する人物から、中世の人々の暮らしや文化を明らかにする。

平安時代の貴族社会を描いた絵巻物を見ると、大きな室内空間を屛風や衝立、几帳といった屛障具で間仕切っていることが見て取れます。しかし、時代が進むにつれて住宅様式の主流が寝殿造から書院造へと転回する中で、几帳は姿を消していきました。その一方で屛風は屋内装飾として残り、現代でも披露宴で金の屛風が使われています。こうした屛障具の歴史を学んだことで、古代や中世の人々が屛障具をどのような用途で、どのように使い分けていたのかを知りたいと思い、絵巻物を史料として研究しています。何枚もの絵を調べていくうちに、几帳は女性とともに描かれることが多いと気付き、当時の女性に顔を隠す文化があったのではと推測するようになりました。登場する人の身分や男女の違いによって、使われる屛障具が異なる点に注目して研究を続ける中で、一枚の絵から読み取れる情報が増えてきたと実感しています。

従来の解釈にとらわれず、自分の視点から調べることが大切です。

「建築や都市がどのように生まれ、変化し、あるいは変化しなかったのか」を、その背景や要因にまで遡って検証し、実態を解き明かすことが建築史研究の目的です。日本の絵巻物は、私たちの祖先が暮らした住空間や生活文化を具体的に知るには格好の史料です。今までの学説に左右されず、福島さんの視点で細部まで調べることで、新たな発見も期待できると思います。

建築学科 藤田 勝也 教授

  • ※この学びのスタイルは2019年度のものです。

建築学科
2020年3月卒業
中上 和哉

研究テーマ

伝統産業の継承と環境デザイン

藍染めを伝統産業とする地域において、自然エネルギーを建築に生かす設計を提案。 藍染めを伝統産業とする地域において、自然エネルギーを建築に生かす設計を提案。

徳島県を流れる吉野川沿いでは、伝統的な産業として藍染めが行われてきました。しかし、美馬市舞中島という地域では治水堤防によって藍の畑と加工場が分断されたことで、産業が衰退傾向にあります。私は卒業設計として、この地域に根付く藍の生産・加工を後世につなぎ、他地域からの観光客を呼ぶことを目的にした施設の設計に取り組みました。工房とともに宿泊施設やレストランなどを併設する施設は、作業工程で発生する熱などのエネルギーを再利用するとともに、この土地の風土を活用して光や風を取り込む形を検討しました。また、吉野川沿いの堤防上に施設を建設することで、藍の畑と加工場を近接させることを考えました。観光で訪れた人は、作業工程を経て藍が姿を変えていく様子を見学、体験することができます。こうして建築、土木、設備を一体にして環境デザインを行うことで、伝統産業の継承と地域の活性化を図ることがねらいです。今後もさまざまな設計に挑戦したいと思います。

広い視野を持つことが、豊かな発想に、そして新しいデザインの可能性につながります。

建築物のみに着目するのではなく、建築も人を取り巻く環境の一部として広く捉えるのが環境デザインの視点です。中上さんの卒業設計は、建築の背後にある自然や人の営みに着目し、地域の自然風土や産業をよく調べ、建築にできることを広く考えている点が評価されます。広い視野を身につけ、新しい建築や環境デザインの可能性について考えていきましょう。

建築学科 大影 佳史 教授

  • ※この学びのスタイルは2019年度のものです。

理工学研究科 建築学専攻
博士課程前期課程 2019年3月修了
中村 穂希

研究テーマ

イスラム都市における公的空間の私的利用に関する研究

エジプトで歴史ある町並みを現地調査。都市の空間利用に対する考え方が広がった。 エジプトで歴史ある町並みを現地調査。都市の空間利用に対する考え方が広がった。

エジプトのサッカラという村で、都市空間の研究調査を行いました。サッカラの道端では、おしゃべりをする人、路面で店を広げる人などが思いおもいに時間を過ごしています。その道の両側には、腰掛けるためのベンチ(=マスタバ)があります。これは、公的空間を私的に利用することができる「フィナー」という考え方によるものです。こうした私的利用は通行人に迷惑がかからないように配慮され、また、そこは誰でも自由に利用できます。私はサッカラを3回訪ね、複数のマスタバを実測調査し、人々の生活事情をヒアリングしました。調査を行うことで見えてきたのは、公共空間に対するイスラムの人々の考え方であり、その背景にある文化、宗教の影響です。日本では、道や広場などの公共空間を私的に利用する場合は、管理者や警察などに使用許可を取る必要があります。イスラム文化の「人に迷惑をかけなければ自由にしてよい」という考え方に触れたことで、都市の空間利用に対する考え方が広がりました。

人々が心から豊かに暮らせる環境を考えるため、フィールド調査を交えて研究します。

住環境学は、都市において人が暮らす場所全てを研究対象とします。人々が心から豊かに暮らすことのできる場、その環境を考える学問です。研究室の活動は文献等の研究だけにとどまらず、フィールドでの体験的な調査研究を重視。エジプトで伝統的な都市環境と暮らしの関わりを調査した中村さんのように、自分の興味を掘り下げたい人を歓迎します。

建築学科 岡 絵理子 教授

  • ※この学びのスタイルは2018年度のものです。

建築学科 2017年3月卒業
定行 美穂

研究テーマ

色覚異常を想定した地下街のサインに関する研究

色覚に着目して、大阪梅田地下街のサインを調査。内定したハウスメーカーでも色彩にこだわりたい。 色覚に着目して、大阪梅田地下街のサインを調査。内定したハウスメーカーでも色彩にこだわりたい。

3年次の授業でピクトグラムについて学んだことをきっかけに、地下街のサインを研究テーマに選びました。サインは、色彩とピクトグラムが一体化した構造です。目の病気で色が判別しにくい方の場合、どのように認識しているのかを検証しました。赤と緑それぞれの色覚異常を疑似体験できるメガネをかけた場合、何もかけない場合の3パターンに分け、大阪梅田の地下街で実験。学生数十名の協力を得て、歩き方、行動、見たサインの違いを調べました。さらに「すぐ見つかるか」「すぐ理解できるか」「目的地への移動に役立つか」という3つの質問を投げかけ、全てのサインを5段階で評価。目を引くはずの赤が、色覚異常だと黒に見えて認識しづらく、比較的誰にでも見やすい色は青という結果が出ました。見過ごしがちなことを明らかにできるのが研究の魅力だと感じました。就職先はハウスメーカーです。色彩にこだわった家づくりに力を入れ、真っ白になりがちな場所にアクセントになる色を加えて落ち着きを演出するなどの工夫を考えています。

建物を含めた街全体を体感し、ヒントを発見して、能動的に研究することで多くのことをつかめます。

幅広い分野をカバーし、先生方の得意分野も多種多様な学科。建物を含めた街全体の音、匂い、温度、空気感など多くの判断材料を得て、五感はもちろん六感も働かせるフィールドワークは、特に大きな魅力です。アンテナを張って自分自身でヒントを発見し、面白いと思ったことを深めてほしい。「こんなことがしたい」という希望を持って、先生と一緒に考えていく姿勢を歓迎します。

建築学科 亀谷 義浩 教授

  • ※この学びのスタイルは2017年度のものです。

理工学研究科 環境都市工学専攻
博士課程前期課程 2016年3月修了
ウィー イーチェン

研究テーマ

シンガポールにおける都市再開発庁を中心とする省庁横断型の水辺開発に関する研究

魅力的といわれる街はどのように作られたのか。先進的事例研究は新たな都市開発のヒントです。 魅力的といわれる街はどのように作られたのか。先進的事例研究は新たな都市開発のヒントです。

住宅や公園、道路や河川などの開発事業はそれぞれ行政の担当部署が異なるため、都市づくりにおいては相互の連携が重要です。私は、多くの外国人観光客が集まる観光都市へと発展を遂げたシンガポールの水辺開発をテーマに、どのような組織体制のもとで開発に取り組んだのかを研究しました。我々がふだん見ている地図は必ずしも正確ではありません。まずは現地へおもむき、地形や標高などを一つひとつ実測するとともに、地図には記されない建造物や道路の構造などを調査。正確なデータをもとに図面化することで、都市構造の視覚的な理解につながりました。また、開発の背景やその変遷についても知識を深めるため、関連資料を収集。その際、我々の研究室と国際交流事業を行った縁のあるシンガポール国立大学のご厚意で、大学所蔵の貴重な資料を閲覧させていただけました。なかには軍管轄の機密資料もあり、研究者間の良好な関係構築がいかに大切かを実感しました。帰国後、膨大な量のデータを整理・分析、修士論文にまとめました。今回の研究が新たな都市開発に役立てばうれしいですね。

人びとに寄り添い、幸せな空間を作り出す建築のおもしろさをともに実感しましょう。

ウィーさんの武器はコミュニケーション能力の高さ。聞く能力や相手の真意を理解する能力に優れています。依頼主の求めるものをくみ取り、それを形にする建築という仕事には欠かせない力です。研究室では海外調査や国際交流、留学支援も活発に行いますので、さまざまな土地で、いろいろな人びとと接することで、他者と共感・共有する感覚が磨かれます。自分の力を積極的に試してください。

建築学科 木下 光 教授

  • ※この学びのスタイルは2016年度のものです。

建築学科 2015年3月卒業
鈴木 美里

研究テーマ

先端閉塞単管杭の支持力性状に関する研究

ものづくりから生まれた杭の能の高さを実証しました。 ものづくりから生まれた杭の能の高さを実証しました。

建設現場での足場などに使う杭の、先端形状による性能の違いについて研究しています。共同研究を行っている企業が開発した「先端閉塞単管杭(先が閉じて尖った形をした杭)」は、一般的に足場に使う単管パイプに比べ、約2.5倍の支持力をもつ強力な杭です。しかし、先端閉塞単管杭の代わりに、単管パイプの先端にコーンをつけて使用されるケースも多く見られます。そこで私は、先端閉塞単管杭とコーンを付けた単管パイプの性能を、実験で比較しました。実験用の土漕のなかに地盤を作り、そこに2種類の杭を打ち込んで、地盤の動きを計測しました。その結果、打ち込んだときの杭付近の土の密度変化の違いから、先端閉塞単管杭が打ち込まれたときの地盤の締め固め効果は、コーンを付けた杭よりも大きいことが確認できました。均一な地盤を作るだけで3カ月近くかかり、研究のむずかしさを実感しましたが、先端閉塞単管杭の性能の高さを実証できただけでなく、地盤を研究することの重要性についても理解が深まりました。

建物を安全に支える地盤の研究は、建築学の重要なテーマです。

私たちは、建物を安全に支える基礎部分の研究に取り組んでいます。土は場所により千差万別の性質をもっているため、性状の予測がむずかしいのですが、軟弱な地盤のなかにも建てることができる、新しい下部構造の開発は、社会から期待されています。建築学科をめざす人には、予想外の現象に立ち向かう地盤工学の魅力を、もっと知ってもらいたいですね。

建築学科 伊藤 淳志 教授

  • ※この学びのスタイルは2015年度のものです。

理工学研究科 ソーシャルデザイン専攻(現 環境都市工学専攻)
博士課程前期課程 2014年3月修了
西田 拓真

研究テーマ

伝統木造構造接合部の力学特性の解明

木造の「塔」が地震に強い理由を力学的な見地から探りました。 木造の「塔」が地震に強い理由を力学的な見地から探りました。

法隆寺の五重塔のような木造の層塔建築は、地震の揺れに強いといわれています。なかでも、地震時のエネルギーを吸収していると考えられているのが、「組物(くみもの)」と呼ばれる、軒下にある木材の集合体。しかし、その構造上の秘密はまだ解明されていません。私の研究テーマは、組物の力学的な特質を、実験と解析を通じて明らかにすることです。実験のため、まず実在する塔の2分の1模型を自作し、地震を想定しながら、模型の桁※に対して水平に力をかけていきました。その後、個々の部材がどのように変形、回転したかなどを測定し、組物の特性を考察。その結果、部材が他のパーツのなかにめり込んだり、表面を滑ったりして力を吸収していること、また、金物で固定せず木製の栓を使って組み立てていることが、衝撃を和らげるのに役立っていることがわかりました。また解析では、めり込む力や摩擦をうまくモデル化し、実験結果とよく合致するシミュレーションを作成することができました。この研究成果は、より複雑な構造をもった建築物の挙動を予測するのにも応用できるのではないかと思っています。

  • ※ 桁(けた):組物の上に水平に渡す部材のこと

伝統工法をヒントに、新たな構造設計手法の開発をめざしています。

独自の免震性を備えた木造の層塔建築は、最近では、東京スカイツリーの「心柱構造」にも応用されるなど、再び注目されています。現在のところ、法律上の制約があるため、伝統工法をそのまま使って新しい構造物を建てることは認められていません。しかし、私たちは古来の木造建築のからくりを解き明かすことで、新しい構造システムへのヒントを見出していきたいと考えています。

建築学科 桝井 健 教授

  • ※この学びのスタイルは2014年度のものです。

建築学科独自のホームページへ

このページの先頭へ