各種取組み

TSネットワークTA研修TA通信実践事例

TA通信第11号

「共学・共成」

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舟越寿尚(文学部「地理学・地域環境学実習a」TA)

 私は、文学部地理学・地域環境学専修の地理学・地域環境学実習a(担当:伊東理教授・野間晴雄教授)のTAを担当しています。
この授業は春学期の地理学・地域環境学実習aと秋学期の地理学・地域環境学実習bを、セットで履修することが基本となっていて、2011年度は地理学・地域環境学実習a・bともにTAを担当させていただき、TAは今学期で3期目となりました。

1.授業形態とTA活動内容
 地理学・地域環境学実習aは学部3回生以上を対象とした必修科目で、地理学・地域環境学コースのハイライトと言える内容です。年によってややばらつきはありますが、今年は14名の3回生が履修しています。授業では、地理学の調査および研究に必要となる知識・技術・手法の習得と、共同作業によるチームワークを身につけることを目的として、春学期(地理学・地域環境学実習a)に巡検を、秋学期(地理学・地域環境学実習b)にはフィードワークを実施します。実施地は毎年違っていて、2012年度は、春学期に実施する巡検は三重県亀山市および伊賀上野方面で、秋学期に行うフィードワークは静岡県島田市で行います。
 
 春学期(地理学・地域環境学実習a)の前半は、5月下旬に1泊で行われる巡検のための文献資料や地図などの収集整理、またそれらを用いた下調べと資料の作成を主に行います。そして現地では、履修者全員に、自ら作成した資料を用い、実際に説明してもらうことを義務づけています。今年度は、自然・農業、歴史・観光、統計、産業・交通の4班にわかれ、自然環境、製茶、まんぼ(地下水路)、宿場町と城下町、人口や産業の動向、工業団地、伝統工芸品、道路網と鉄道などについて、説明してもらいました。それが終わると春学期の後半は、秋学期(地理学・地域環境学実習b)の10月上旬に、4泊5日程度で実施するフィードワークの準備に取りかかります。まずは先の巡検と同様に、履修者は興味ごとの班に分かれ、文献や地図などの資料収集および下調べも行いますが、調査テーマの設定、調査項目の検討、質問調査票やアンケート調査票の作成など、多岐に渡る作業を共同で進めます。フィードワークを終えると、実地調査で得た結果の分析や検討を行い、実習報告書『○○の地理(○○にはフィードワーク先の地域名が入ります)』として一冊の冊子にまとめ、翌年の3月に発行します。この冊子は、フィードワークでお世話になった地元住民の方、調査地の市役所や図書館など関係機関、さらには地理学関連の学部学科が設置されている大学にも配布しています。
 私はこの授業で主に、履修者が巡検やフィードワークを行うにあたり、文献や地図の収集、資料や調査票を作成するための、全般的なアドバイス、準備の支援を行っています。

2.TA活動における工夫
 今年の履修者は14名と多くはないのですが、地理学が対象とする事象の範囲は広く、履修者の興味によって、また各人の調査項目や方法によって、必要とする資料や地図はもちろんのこと、現地での調査手法も違ってくるため、履修者が作業に行き詰まることのないよう、先生方とも連携しながら、きめ細やかにアドバイスを行うことを心がけています。ただ、最初から踏み込みすぎた助言をしないようにも、気を付けています。なぜならば、この科目は卒業論文へ向けての、言わば足がかりのような役割でもあるため、この授業を通して自らフィールドで問題を発見し、分析を行い、実証するという手腕を身につけた上で、卒業論文へとステップアップしてもらいたいからです。
 しかしながら、自ら調査すると決めた事象について興味や関心は深いものの、どのように資料収集をすれば良いのか、そのプロセスに戸惑う履修者もみられます。その時には授業時間外であっても、一緒に図書館へ行くなどして文献資料の探し方を指導し、時には履修者と共に探すこともあります。また、質問票やアンケート調査票の作成については、私自身が過去に行った聞き取り調査やアンケート調査で使用した資料を提示し、それを作成した時に検討した点などを示し、ひとつの見本として参考にしてもらうことで、ノウハウをより具体的に理解してもらえるよう心がけています。さらには、実際に現地でアンケートや聞き取り調査を行う上で、服装や言葉遣い、調査させて頂いているという初心を忘れないことなど、基本的な事ではありますが、留意点についても教示しています。

 このように、実際に履修者にアドバイスや補助を行っていると、他の授業の話や、時には卒業論文や就職活動に向けての相談を受けることもあります。その時にTAとして、また先輩として、先生と履修者の関係とは違った立場から、何をアドバイスできるのか、何か力になれることはないか、授業内のTA活動を超えた役割にも、嬉しさ、楽しさ、やりがい、使命感を感じています。先に書きました通り、私のTA活動も3期目となりましたが、まだまだ至らない点が多々あり、先生方にアドバイスを頂くことも少なからずあります。これからも、履修者と「共に学び、共に成長」できるようなTA活動ができるよう、精進していきたいとおもいます。