各種取組み

TSネットワークTA研修TA通信実践事例

TA通信第2号

「授業を繋ぐ!担当教員とのディスカッション」

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小島亜華里(総合情報学部 マルチメディア教育論TA)

 「マルチメディア教育論(担当:黒上晴夫教授)」は、総合情報学部の3回生以上を対象とした授業で、約240名が受講しています。この科目では、教育の情報化やブロードバンドが普及する中で、学習の質や教育の質はどのように変わっていくのか、学習者にどのような力が形成されていくのかを考えていきます。受講生は、情報化がすすんだ学習環境における、学習者、教師、コンテンツ開発者、学習管理者の関わりを多角的に検討します。
また、この授業では、授業終了後「授業で扱った内容に関連することを自分で調べてCEASのフォーラムに投稿する」という課題があります。書き込みは平常点として加算されます。私は、授業の初めに、前回の授業のリフレクションとして、CEASに書き込まれた受講生のコメントを紹介しています。授業開始当初、寄せられるコメントは、「今日はインターネットを活用した授業に関するビデオを見た」といった授業内容そのものをまとめているだけの意見や、授業内容に対する感想に留まっていました。ところが、1か月が過ぎた頃、授業でわかったことに加えて、授業外に調べたことを合わせたコメントが寄せられるようになり、受講生のコメントに変化が出てきました。

 それは、コメントを紹介する際に、氏名を公開していることが、受講生の調べる活動への意欲の向上や、質の高い意見が投稿されることにつながっているのではないかと考えています。名前の公開については、最初は「恥ずかしい」という受講生の意見もありました。しかし、氏名を公開することにより、受講生は、情報の信憑性や正確な文章表現を意識できるようになってきたと感じられます。このことは、授業の本質を捉えていないコメントや授業と関係のないコメントの減少からも見て取ることができました。

 また、TAとして、コメントを見ていておもしろいのは、授業の回を重ねるごとに、受講生の意識が変容していくのを感じられることです。授業では、ほぼ毎回、メディアを活用した国内外における授業実践のビデオを視聴します。そこで紹介される実践をどう捉えるかが、担当教員が講義で扱う情報(PC普及率など数値データ、答申や指導要領、実際の教材など)とうまく繋がることで、受講生の教育に対する意識も変わってきたように感じます。逆にビデオ視聴から、そういった背景へと関心が向けられることもあります。

 私は、こういった受講生の意識の変容には、授業の構成が強く影響していると思いました。そこで、私自身もリフレクションの位置づけをもう一度考え直し、前後の授業内容との関係を考えながらコメントを紹介するようになりました。そのためには、次の授業で扱う内容について担当教員に確認しておく必要があります。また、その際には私から授業内容に関連する受講生の反応や関心を担当教員に伝えることもしました。それは、担当教員に受講生の反応を伝えることで、授業に反映してほしいという思いがあったからです。
 担当教員とのディスカッションを経て構成された授業の反応を、コメントとしてフィードバックするサイクルは、TAのおもしろさに繋がっていると思います。担当教員の描いている授業のイメージを共有し、受講者に近い立場でディスカッションし、さらに授業の評価として受講生の反応を知ることができるような仕組みを作ることで、担当教員と受講生を繋ぐTAにしかできない意義を見いだせるのだと思います。

<<TAとしての工夫!>>
 掲示板に寄せられたコメントにフィードバックをするとき、前後の授業内容との関係を意識して紹介しています。受講生が週1回の断続的な授業を関連づけながら授業に臨むことで、担当教員が構成した13回の授業の意図が伝わりやすくなると思うからです。そのためには、TAは各授業で扱う教材や講義内容を担当教員と共有し、担当教員の授業全体の意図を理解しておく必要があります。