VIVA!学び場 「わからないこと」があるから面白い 建築の安全を支える建築基礎工学の世界 環境都市工学部 建築学科
濱田はまだ 純次じゅんじ 教授 

 2026年4月、環境都市工学部建築学科に着任した濱田教授は、建築基礎工学の専門家として、地震が起きた際の地盤や、建物を地中で支える杭の強度について研究をしています。地震大国・日本において欠かせない分野でありながら、その重要性は一般にはあまり知られていません。
 実は、濱田教授自身も学生時代からこの分野の研究を志していたわけではありませんでした。思い描いていた進路とは異なる環境に身を置きながらも、目の前の課題に向き合い続けるなかで研究の面白さを発見し、国際的に活躍する研究者になりました。
 今回は、建築基礎工学の社会的意義や、地盤・基礎を学ぶ面白さについて伺いました。

基礎工学は建物の安全を支える「見えない部分」の研究

—現在はどのような研究をされていますか?

 建築基礎工学を専門としており、高層ビルなどの建物を地中で支える杭や、地盤に関する研究をしています。普段は目にすることのない部分ですが、地震発生時には建物や街の安全を左右する重要な役割を担っています。


 実際の建物の地下に計測機器を設置し、長期間にわたって観測を続けています。
 地盤は場所によって性質が異なることから、数学的に解明するのが難しい分野です。土質力学として研究され始めたのも100年ほど前と歴史が比較的浅く、まだわかっていないことも多くあります。そうした未知の部分を明らかにしながら、より安全で合理的な建築基礎の設計につなげることにやりがいを感じています。

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土質試験に取り組む濱田ゼミの学生

—子どもの頃はどのようなことに興味がありましたか?


 子どもの頃はアインシュタインに憧れていて、物理学者を目指していました。大学受験でも物理学科が第一志望でした。
 相対性理論は難解でしたが、「わからないこと」にこそ強く関心を持っていました。それは大人になった今も変わりません。
 人はわからないことに出会ったときにこそ知的好奇心が生まれますし、その好奇心こそが学ぶ意欲につながります。ですから、子どもの知りたいことに対して、先生や大人たちが何でもわかっている必要はないと思っています。

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第一志望ではなかった 東北大学での土木との出会い

—学生時代は海岸工学を専門にされたと聞きました。

 第一志望は物理でしたが、実際に合格したのは東北大学工学部でした。そこで土木と出会い、大学4年から修士課程まで海岸工学を専門に研究しました。
 当時は波の研究をしていましたが、この分野は地盤と違い、どのような波形を描くのか数学的に答えを導き出せます。とても難しいけれど、非常にエレガントな数式で解明できることを好ましく思っていました。

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国際地盤工学会議で発表する濱田教授
(2026年6月、オーストリア・ウィーン)


—望んだ進路ではありませんが、どのように向き合われましたか?

 振り返ってみると、私の人生は思いがけない出会いによって現在まで進んできました。土木は第一志望ではありませんでしたが、結果的にとてもやりがいのある研究分野に出会えたと感じています。
 何事も取り組んでみると「わからないこと」があり、それを突き詰めると面白くなっていきます。

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建築基礎の実験を行うための設備(千里山キャンパス)

研究者としての道を開いた、想定外の転機

—建築基礎工学との出会いを教えてください。

 建築基礎工学との出会いは大学院卒業後、竹中工務店に就職してからです。
 当初は海洋開発の事業に携わるため、海岸工学の研究職として入社しましたが、先輩の研究者はほとんどおらず、具体的なプロジェクトもない環境にやきもきしたものです。しかもバブル崩壊とともにこの事業がストップ。海岸工学から建築基礎工学に専門領域を移すことになりました。
 このキャリアチェンジは想定外でしたが、非常にやりがいのある仕事になりました。社内には優れた先輩研究者が多く、学びながら経験を積むことができました。

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月刊「基礎工」の誌面。掲載されているプロジェクトには、濱田教授が携わったものもある。

—研究や仕事のやりがいを教えてください。

 建築の基礎に関する基準や法律は大変複雑ですが、実は学会の指針を反映して法改正されることも多々あります。研究が世の中に役立っていることを実感します。
 あべのハルカスや中之島西部地区開発など、関西を代表する高層ビルの基礎工事に携わる機会にも恵まれました。
 国際的な研究発表の機会も多く、メキシコやチリ、オーストラリア、ベトナムなど、世界各国で開かれる学会へも参加します。海外の研究者と出会えるのも刺激になりますし、各国の文化や食と出会うのもひそかな楽しみです。

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メキシコでの会議のバンケットで

選択に迷ったら「世の中のためになる方」を選ぼう

—関西大学ではどのような授業を行っていますか?

 環境都市工学部で、1~2年次生向けの概論と、3年次生以上に向けた建築基礎工学などを受け持っています。
 関西大学では、建築設計から景観や環境づくり、建物の構造、まちづくりまで、さまざまな角度から学ぶことができます。
 一般的に建築の分野では意匠設計といわれる建築デザインの分野に人気が集まりがちですが、授業を通じて、建築を足もとから支える地盤や基礎などの面白さを伝えていきたいです。

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ゼミの学生と濱田教授

—学生に伝えたいことはありますか?

 受験や就職で挫折を経験する学生は多いと思います。たとえ希望がかなったとしても、実際にやってみたら想像と違うということもあるでしょう。
 だからこそ、今いる環境で何かひとつでも関心を持てることを探してみてください。仕事でも学問でも、わからないことや課題は必ず存在します。そこに関心を持てば面白さを発見できるはずです。
 特に企業に属する研究職は、会社の利益や経営的な判断を迫られることもあると思います。もし判断に迷ったときは「世の中の利益につながるかどうか」を考えてほしいと思っています。私はそれこそが企業の本質であり、人の存在価値そのものだと信じています。

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濱田教授のお気に入り

退職記念に贈られた傾斜計

 竹中工務店を退職するときに、共に働いた取引先が贈ってくれたものです。地盤の傾斜を測定するための高価な道具で、模型ではなく実際に使用できる本物です。
 建築基礎の研究は実際に工事現場を訪れ、土に触れて、目で見て観測する手ごたえのある仕事です。

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趣味のサーフィン

 大学のあった仙台はサーフィンの盛んな場所でした。大学時代は波を研究するかたわら、サーフボードを担いで波乗りに出かける日々。サーフィンの大会にも出場しました。大人になってからは家族と海に行くこともあり、長く続けている趣味です。波とは、どうも縁があるようです。



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環境都市工学部 建築学科
濱田はまだ 純次じゅんじ 教授

●プロフィール
1992年、東北大学大学院工学研究科土木工学専攻博士課程前期課程修了。同年、株式会社竹中工務店に入社し、2026年3月まで研究員として勤務。この間、建築・土木分野における研究開発に長年携わる。2024年より東京理科大学客員教授。日本建築学会委員、日本鋼構造協会委員、建築センター評定委員など、関連学協会において多数の委員を歴任。2026年4月に関西大学に着任。目下の研究テーマは「建物基礎杭の耐震性能評価」。
現在は単身赴任中。隔週で千葉の自宅に戻り、おいしい料理を食べるのが楽しみ。