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当センターの松森奈津子研究員が第31回サントリー学芸賞・思想・歴史部門を受賞いたしました!

<著者紹介>

松森奈津子(まつもり なつこ)
(静岡県立大学国際関係学部 講師)

1973年東京都生まれ。スペイン政府給費奨学生として、2001年スペイン国立マドリード(コンプルテンセ)大学政治社会学部社会政治思想史学科博士課程修了。博士(政治学、国立マドリード大学、2004年)。

青山学院大学国際政治経済学部国際政治学科助手(2001年4月~2004年3月)、明治学院大学法学部政治学科非常勤講師(2003年4月~2004年3月)を経て現職。その他、2006年2月~4月にはスペイン国立サラマンカ大学地理歴史学部近現代史学科招聘教員など様々な活動を経て、2008年より関西大学マイノリティ研究センター(文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業)研究員としても活躍中。

<受賞作品>

『野蛮から秩序へ:インディアス問題とサラマンカ学派』(名古屋大学出版会、2009年5月)

書籍の内容:(名古屋大学出版会ホームページから)http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0612-5.html

大航海時代を拓いたスペインにおいて、非ヨーロッパ地域の「野蛮」な人々との関係をめぐり支配の正当性や征服戦争の是非などを問いかけ、新たな政治秩序を模索したサラマンカ学派。ラス・カサスにいたるその思想の展開を丹念に跡づけ、主権国家論に連なる近代の政治思想を見直す力作。


<目次>

序 章 「もう一つの国家論」の生成

第1章 近代政治秩序とインディアス問題
第1節 ヨーロッパ秩序の主体としての国家
第2節 ヨーロッパ ― 非ヨーロッパ間関係の主体としての国家

第2章 理性と賢慮 ―― インディオの本性
第1節 「野蛮人」インディオという言説
第2節 目的論的階層秩序観と自然奴隷説
第3節 教育の欠如と自然児説
第4節 多様性の承認と理性的人間説

第3章 政治権力の本質 ―― インディアス支配の正当性
第1節 ビトリアによる伝統的諸権原の否定
第2節 サラマンカ学派の諸権原
第3節 ラス・カサスにみる正当性の否定

第4章 正戦の要件 ―― インディアス征服戦争の是非
第1節 「戦争への法」と「戦争における法」
第2節 戦争開始の正当性
第3節 戦争遂行の正当性

終 章 「もう一つの国家論」の意義と課題

 

<受賞のことば>

サントリー文化財団のホームページよりhttp://www.suntory.co.jp/news/2009/10600-3.html#matsumori

『野蛮から秩序へ ―― インディアス問題とサラマンカ学派』(名古屋大学出版会)

このたびは、栄えある賞をいただき、財団ならびに選考委員のみなさまに、心より御礼申しあげます。また、出版に携わってくださった方々、これまで研究活動を支えてくださった方々に、深く感謝いたします。

『野蛮から秩序へ』の舞台は、大航海時代ただなかの16世紀前半期スペインです。主な考察対象は、インディアス問題、つまりコロンブスを介して出会った「新世界」、ラテンアメリカとのあるべき関係をめぐって生じた諸議論です。

このテーマに出会って十数年、ずっと感じてきた違和感が、本書執筆の動機となりました。それは、一方で、英・米・独・仏中心の思想・歴史研究においては、インディアス問題の重要性が十分に顧みられず、他方で、スペイン・ラテンアメリカ研究においては、「ピレネー以南」や「新世界」の特異性が強調されがちなために、西洋主流の知的伝統との関連がほとんど語られない、ということです。ここから、双方の不足を補ってこそ、より実像にみあったインディアス問題の意義を提示することができるのではないか、という問題意識をもちました。最終的に引きだされた結論は、インディアス問題を通じて示されたサラマンカ学派を中心とする思想は、その後主流となる近代国家論とは別のベクトルをもった「もう一つの国家論」であった、というものです。

この結論にいたる道のりは、かならずしも順調なものではありませんでした。むしろ、主流の歴史(観)を前に、いつも自信のなさと孤独感に押しつぶされそうになっていました。それでも、引きよせられるかのように、次から次へと関連文献に出会い読みすすむうちに、迷いは消えてゆきました。今にして思えば、自分自身の確固とした意志のもとに取りくんできたというよりも、このテーマが発する強い輝きを追いかけるうちに、自然に導かれてきたような気がします。

今回の受賞は、そのような私を勇気づけ、本書の延長上に温めている今後の方向性に対する自信を与えてくれました。初期近代を中心とするスペイン思想には、汲めども尽きぬ埋もれた輝きが、まだたくさん残されています。それらを掘りおこして「主流」に合流させ、定説をより豊かなものにしてゆくこと。それが、日本、スペイン両国で育ててもらった私にできる、ささやかな恩返しではないかと思っています。そして、新たな感性をもった若い世代があとに続きやすいように、道筋を少しでも整えることができればと考えています。

今後の研究・教育活動に大きな励みをいただきましたこと、あらためて厚く感謝申しあげます。

 

 


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