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第20回マイノリティ・セミナー

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ニュースレター

紀要

 

第20回マイノリティ・セミナー(アジア法学会共催)
「1.イスラームの法
 2.法整備支援とアジアの民法」

                      
 第20回マイノリティ・セミナー(2012年アジア法学会研究大会)が、2012年6月16日(土)と17日(日)の両日にアジア法学会との共催で行われた。16日は「イスラーム圏の法」として、桑原尚子(高知短期大学)の司会により、3つの報告が行われた。第1報告は、堀井聡江(桜美林大学)により「オスマン民法典(マジャッラ)翻訳プロジェクト-イスラーム法研究におけるその意義」と題して、日本で現在進行中のオスマン民法典(マジャッラ)翻訳プロジェクトの紹介を中心に、近代におけるシャリーア(イスラーム法)の変容とその研究の意義について報告がなされた。第2報告は、岩崎葉子(アジア経済研究所)により、「イランにおける「サルゴフリー方式賃貸契約」制度-賃貸人・賃借人関係法における「営業権」問題をめぐって」と題して、「サルゴフリー方式賃貸契約」と呼ばれる商業施設に特有の賃貸契約制度を具体例に、イスラーム法と西欧近代法の考え方の相違が現実の社会にもたらしたインパクトについて報告がなされた。第3報告は、沖祐太郎(九州大学)により、「イスラーム国際法の概念と国際法史研究への示唆」と題して、イスラーム世界を対象として、前近代の国際秩序から近代国際法秩序への変化が如何にして発生したかについて報告がなされた。それぞれ対象とする分野は異なるが、イスラーム圏の法について3本の報告が行われるのは初めてのことであった。

 17日は、「法整備支援とアジアの民法」と題するシンポジウムが、五十川直行(九州大学)の司会により行われた。各報告に先立ち、企画責任者の松本恒雄(一橋大学)から趣旨説明が行われた。当該シンポジウムは、日本が10年以上にわたり法整備支援を行ってきたカンボジア王国民法典の適用が2011年12月に開始されたことを受けて、法整備支援との関係でアジアの民法を取り上げた。対象国は、ベトナム(報告者:角紀代恵・立教大学)、カンボジア(松本恒雄・一橋大学)、ラオス(松尾弘・慶應大学)、モンゴル(蓑輪靖博・福岡大学)とし、民法学の面からと法整備支援学の面の双方からの考察と検討を加えることが目的である、とされた。

 第1報告のベトナムでは、日本による法整備支援の経緯、2005年民法の制定過程および内容を紹介するとともに、日本側の2005年民法改正への関与の状況、さらには、法整備支援の課題についても報告がなされた。

 第2報告のカンボジアでは、カンボジアにおける民法および関連法の歴史、日本による法整備支援の特徴、その成果としての民法のシステムを概説するとともに、同法適用直後から大きな政治的論点となっている土地担保制度の問題について詳細な報告がなされた。

 第3報告のラオスでは、現時点では民法典が存在しないため、実質的民法としての個別的制定法の制定プロセスに言及した後、物権法、不動産登記手続、債権法、担保法、家族法におけるいくつかの論点を取り上げて、ラオス民法の内容を検討するとともに、ラオスにおける法整備支援の現状と将来について考察が行われた。

 第4報告のモンゴルでは、モンゴル民法の制定過程とその背景、モンゴル民法典の特徴について財産法に関連する部分を日本法と比較しながら行うとともに、モンゴル民法の課題について、用語の使用法、内容、および意義役割の視点から検討が行われた。

 報告に引き続き、日本の法整備支援に実務、理論の両側面から長期間かかわっている、山下輝年(法務省)、鮎京正訓(名古屋大学)の2名から報告に対するコメントが行われた後、フロアの参加者を含めた議論が活発に行われた。

 大学関係者、法曹関係者を中心に約70名の参加者を迎えることができ、法整備支援に対する関心の高さがうかがえた。

西澤 希久男(関西大学政策創造学部准教授)

 


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