研究員会議
「最終年度に向けたマイノリティ研究センターの活動方針について」
2011年度研究員会議および研究会を2012年3月23日、関西大学総合研究室棟多目的室で開催した。この会議は、文科省戦略的研究基盤形成支援事業の「マイノリティ研究」最終年度を迎えるにあたり、①当研究センターの研究目的と研究の意義をあらためて確認し、②これまでの研究の到達点、研究成果を明らかにし、③研究の現状と問題点、そして残された課題をふまえ、④最終年度における研究活動の進め方と研究成果の集約(とりまとめと公表)について話し合うことを目的として開かれたものである。
全体会議では、はじめにセンター長から上記開催目的をふまえて研究活動の到達点が示され、研究開始当初と比べると「マイノリティ研究」の国内外における認知度と研究内容が大きく変化・発展してきたことが述べられた。ただ、当研究センターとして、あるいは個々の研究成果として優れたものも多々「発信」してはきたが、「共同」研究の成果としては不充分なところもあり、また「時代」の急速な展開の中で予想以上に研究課題も深化、多様化してきているとの認識が示された。そして、基本的な研究課題を確実に扱うとともに現代および将来的な課題とも切り結んだ研究成果を当研究センターの最終的な研究成果として公表するための研究活動を最重点に取り組んでほしいとの要望が述べられた。
各研究班からの研究報告として西澤希久男研究員による「タイにおける人権侵害と国家人権委員会への救済申立─共同体の権利を中心として」(マープタプット事件を手がかりに1997年憲法および2007年憲法に明記された「共同体の権利」の内容および特質を分析するもの)、蔡孟翰研究員による「東アジアのナショナリズムとマイノリティを考える」(東アジア各国・地域のナショナリズムの共通性を問いかけ、この共通性の内実を明らかにし、「東アジア」のナショナリズム像を示そうとするもの)、そして斎藤民徒研究員による「マイノリティと国際法」(国際法の認識・判断枠組みにかかわる支配的言説の問題点を示し、「一般的国際法」論、「国際立法」論の再構成を試みるもの)という研究報告が行なわれ、従来にもまして活発で論争的な意見交換が行なわれた。
孝忠 延夫(関西大学政策創造学部教授、マイノリティ研究センター長)