Kansai Univ
 
第12回マイノリティセミナー

目的と意義

意義と独創性

構成員

総括

市民権

国家形成

国際関係

2012年度

2011年度

2010年度

2009年度

2008年度

紀要

ニュースレター

中間報告書

『差異と共同』

最終報告書

 

 

 

ニュースレター

紀要

 

第12回マイノリティ・セミナー(法学研究所第90回特別研究会)
「アイヌ民族問題と所有権・知的所有権」

12月18日(土)、関西大学において、法学研究所とマイノリティ研究センター共催の研究会が開催された。法学研究所では、これまで山名美加研究員(本学法学部教授)を中心とする「インド・南アフリカ財産的情報研究班」のプロジェクトが進められてきた。これは、民族が有する伝統的知識の保護や活用の法的枠組を、インドと南アフリカの実践を通して検討することを目的とするものである。今回の研究会では、そのプロジェクトの一環として日本の少数民族の伝統的知識の保護を対象として取りあげることとなり、吉田邦彦教授(北海道大学大学院法学研究科)が「アイヌ民族問題と所有権・知的所有権」というテーマで報告を行った。

日本では、2008年6月6日に、衆議院及び参議院が「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を受ける形で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を採択した。この決議を受けて、政府は、アイヌ民族がわが国の先住民族であるという認識をもとに、総合的な施策の確立に取り組む姿勢を示している。もっとも、今日のアイヌ民族問題は、遡れば明治政府による近代化政策にその根源を有しており、単にアイヌ民族を先住民族と認めて表面的な文化振興を促すだけでは解決することのできない複雑な問題と結びついている。近代化の中でアイヌ民族はどのような変容を迫られるのか、その経験は近代法にいかなる反省を迫るのかなど、検討すべき課題は多い。

一般に、国内における少数民族の利益を保護する法的枠組には、国家が多文化主義的な政策を採用することで対応する方向性、また、少数民族の権利という「集団の権利」として構成する方向性などが主張されてきた。しかし、前者については、当該政策の採用や内容の問題は政策的判断の中で行われることとなり、国家の裁量の問題として改善が困難であること、従って、国家が当該政策を廃止すれば、少数民族の利益を保護する枠組自体が存在しなくなってしまうことなど、様々な問題点も指摘されうる。他方、後者についても、権利主体が個人ではないため、近代人権思想との整合性の観点から批判が多いことなど、やはりクリヤーすべき問題は少なくない。

今回のテーマは、所有権・知的所有権という私法の枠組を通してアイヌ民族問題の現在を考えようとするものであり、従来のアプローチを越えて新たな地平を切り開こうとする試みとして重要な問題提起がなされた。フロアーとの議論も活発に行われた。

髙作 正博(関西大学法学部教授)

 


Copyrighted 2008, Center for Minority Studies, Kansai University
関西大学マイノリティ研究センター
〒564-8680大阪府吹田市山手町3-3-35 総合研究室棟2階
電話06-6368-1111 FAX 06-6368-1463