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呉報告「台湾における中国人配偶者の法的地位―政治に揺れるマイノリティの権利」

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呉准教授報告「台湾における中国人配偶者の法的地位―政治に揺れるマイノリティの権利」

呉准教授の報告では、中華人民共和国籍を有する女性が台湾国籍の男性と結婚するためには、何度か中華人民共和国と台湾を往復しなければならないことが話題となった。


1991年5月30日に公布された台湾の「中華民国憲法増修条文」は、その前文に「国家の統一前の要請に備えて憲法の条文を増修する」という文言を掲げたうえに、1947年の憲法施行当時からの「国内法」体制に対して、「自由地区」(=台湾・中華民国)および「大陸地区」(=中国・中華人民共和国)という地域別の法領域を作り出し、法的に分断することを宣言した。これを受けて、翌年の7月中に、台湾政府は、台中間人民関係法としての「両岸人民関係条例」という法律を制定・公布し、公法ならびに私法の領域にわたり、台湾人と中国人との間の権利義務に関する諸事務の準拠法として発足させた。本法の下では、中国人(=中華人民共和国の国民)は、台湾人に対しても平等な「国民」として扱われていないのみならず、外国人よりも明白に不利な法的地位に置かれている。台湾における「国民」とは、台湾での戸籍の有無に関わるものを指す。


近年台湾社会における国際結婚の増加に伴い、この法律が敷いた戸籍による中国人配偶者への特別扱いの法的構造は、人権保障と国家安全との均衡性をめぐって社会内部の論争の焦点となりつつあるとともに、それにおいて台湾主体的意識対中華民族主義というナショナリズム的要素が内包されている。こうした構図は、自由かつ民主的社会となった台湾社会の多様性と複雑性をも物語っている。そこには同時に、戦後の「中華民国」が台湾という場所に置かれる矛盾性が象徴的に現われている。


呉准教授によれば、台湾の中国人配偶者に関する法制とその心理をあらためて解明することによって、国籍と戸籍との間の交錯の下における台湾民主化以後の法的特殊性を探究することができるという。呉准教授は、台湾社会における中国人女性の現実を熱く語られた。

 


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