授業のサポート

教員インタビュー

ふれあうことの価値を実感。どんな場面でも「学び合い」を大切に

社会安全学部

近藤 誠司教授

研究分野

社会情報学、災害情報論、災害ジャーナリズム論

プロフィール

近藤 誠司(こんどう せいじ)

関西大学 社会安全学部 教授。京都大学法学部卒業後、NHK(日本放送協会)の報道部ディレクターとして20年間勤務した。博士(情報学)。

災害情報学の構築、情報理論における「リアリティの共同構築モデル」の確立、コンサマトリーな防災のありかたを主な研究テーマとする。

防災まちづくり大賞で消防庁長官賞、そのほか、総務大臣賞、復興大臣表彰など受賞。関西大学学長奨励表彰4年度連続受賞(2018-2021

 

【書誌情報】

「災害報道とリアリティ」

https://www.kansai-u.ac.jp/Syppan/2022/01/b423eb54acf95edb156aab495396c808edd24ff8.html

「防災教育学の新機軸」

https://www.kansai-u.ac.jp/Syppan/2022/10/9a0aa4bb8dbb3e8c89c82460532fd7eb6ced3127.html

 

 

 

【インタビューの経緯】

20217月に実施した「2021年度遠隔授業に関する教員アンケート」内の自由記述欄において、遠隔における授業実践の工夫や新たな取り組みについて回答いただいた教員5名にインタビューを実施しました。

未だコロナ禍で授業の実施方法について模索が続く中、回答いただいた先生方の授業に対する取り組みをGood Practiceとして広く公開することで、授業運営に悩んでいる・困っている先生方に少しでも役立てていただきたいという思いで、今回のインタビューを企画しました。

また、このページをFD活動の一環として利用いただけると幸いです。

授業形態:演習

#各種ツールの活用_Zoom

#各種ツールの活用_その他

#アクティブ・ラーニングの実施

回答いただく科目について

・専門演習(履修者数8名)(災害情報論)
・卒業研究(履修者数7名)(災害情報論)

Q.コロナ禍において、どのような方法・形態・ツールで授業を実施しましたか?

 2021年度の専門演習・卒業研究では、おもにZoomを使ったオンライン形式のアクションリサーチを展開しました。Zoomの録画機能を使って、防災に関する動画コンテンツを学生が作成し、研究室のWebサイト内に設けたプラットフォームで次々と公開していきました(2022年12月現在で250本ほど http://kondoseiji.main.jp/movie/)。
 コンテンツのテーマの設定は、学生が主体的に決めています。学生同士は、ZoomやLINEで打ち合わせをします。教員からの助言は、Zoomやメーリングリストでおこないます。このとき、研究室として有償契約したSlackも連絡手段、情報共有ツールとして活用することによって、同時に進む複数のプロジェクトを一元管理できるようにしました。
 コロナ禍となったことを契機に取り組みの幅が広がったことを実感しています。たとえば、コミュニティFM放送に学生が出演して防災のトークをおこなう「ラジオ番組制作プロジェクト」(滋賀県草津市)を2017年度から続けています。放送は隔週で、番組は1本、30分サイズです。しかし、コロナ禍によってラジオスタジオで収録作業ができなくなりました。このとき、オンラインで台本の打ち合わせをして、Zoomで収録した音声を使えば、比較的スムーズに対応できることがわかりました。出演者が大勢いるときは、かえって(スタジオが使えたとしても)Zoom収録したほうが作業しやすいという発見さえありました。結局、コロナ禍にあって、放送は1度も休まずに持続することができています。
 また、コロナ禍でステイホームを余儀なくされた小学生を対象とした教材動画や、お年寄り向けのストレッチ動画なども作成しました。さらに、マスクによって口話できなくなった聴覚障がい者を支援するために、手話の動画を作成したりもしました。このように、情報とメディアに関する研究の成果を、できるかぎり広く社会へ還元するように努めています。

Q.オンラインでの取組を実践していかがでしたか?

 コロナ禍となり、直にふれあうことの価値の大きさを実感しました。オンライン授業をいち早く安定化・充実化させたことによって、学生からはポジティブな意見をたくさんもらいましたが、物理的に離れていると、どうしても心を通わせるための基盤が弱まっていきます。直接会うことがいかにかけがえのない機会であるか痛感しました。また、1回の出会いを大切にしたいという想いを研ぎ澄ます学生が増えたことを実感しており、学生の感受性の変化は、コロナ禍におけるポジティブな変化と捉えています。一方で、学生が抱える不安や悩みに気づきにくいという点があったことも事実です。功と罪、光と影を、バランスよく評価する必要があるでしょう。
 ゼミを運営する上では、「学び合い」を大切にしています。学生同士の切磋琢磨はもちろんのこと、フィールドで出会った人たちといかに学び合えるかがポイントとなります。たとえば、子ども向けのコンテンツを作成しても、内容が子どもに伝わらなければ意味がありません。そのため、言葉遣いや演出に工夫をこらします。そして、それがフィットしたのかどうか、子ども自身に教えてもらうのです。学生には、「学び合い」の精神を大切に、弱い立場や困っている人がいないか想像する心をもって人生を歩んでいってほしいと思っています。それこそが、暮らしの豊かさや安全・安心の理念を支える根本であると思っています。

Q.次年度以降も続けていきたい事、挑戦したい事について教えてください。

 情報やメディアという「アーティファクト(人々を媒介する物)」の価値を考えるうえでは、決して短視眼に陥るのではなく、長期的な展望を持って、独創的なアクションリサーチを持続していく必要があると思っています。社会安全学部が扱っている「安全」や「命」のありかたを考えるという「アポリア(難題)」は、混沌とした21世紀社会においてこそ向き合う意義のある、最重要の領域だと考えています。大学という組織にいる以上、チャレンジングな課題に積極的に挑戦し続けたいと思っています。

取材記録

インタビュアー:教育推進部 教授 山田剛史
記事編集:教育開発支援室 上田果歩
(取材日:2022年3月16日)

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