環境都市工学部

学びのスタイル

理工学研究科 環境都市工学専攻
博士課程前期課程 2年次生
神野 七海

研究テーマ

物質の相溶性の評価 毛髪表面のダメージ評価のための新技術の開発

毛髪表面の物性を把握するために数値的評価を行い、AIを使ってより客観性を高める研究に取り組んでいます。 毛髪表面の物性を把握するために数値的評価を行い、AIを使ってより客観性を高める研究に取り組んでいます。

パーマやヘアカラーといった科学的処理は毛髪にダメージを与える原因になっています。傷んだ毛髪を修復する製品を効率的に開発するためには、毛髪表面の物性を把握することが重要です。この研究ではそれぞれの物質に固有の値を評価する「ハンセン溶解度パラメータ(HSP)」を用いて、毛髪表面の物性評価に取り組んでいます。さまざまなベクトルで測定したHSPの値が近い物質同士は親和性が高いことが証明されるため、物質を混ぜたり、攪拌したりする際に用いられています。本研究では、毛髪表面を電子顕微鏡を使用して高倍率で観察し、専用ソフトを用いてHSPを算出します。これまでは得られた毛髪表面の画像を人による目視で判定して数値的評価を行っていましたが、評価する数値にバラツキがでるためにさまざまな評価方法を模索。現在はAIによる画像分類技術を用いてより客観的に評価する方法を検討しています。

環境調和型・省エネルギー型の機能性材料開発ツール

これまでの材料開発をさらに低コスト・高効率に実施するための、新しい開発ルールは重要であります。エネルギー環境・化学工学科、プロセスデザイン研究室では、物質の凝集エネルギー密度であるHansen Solubility Parameter(HSP)を用いた新しい材料開発ツールを研究しています。近年、ポリマー、石油材料、微粒子分散、化粧品、医薬品開発で大変注目されています。

エネルギー環境・化学工学科
山本 秀樹 教授

  • ※この学びのスタイルは2021年度のものです。

理工学研究科 環境都市工学専攻
博士課程前期課程 2021年3月修了
田中 瑛

研究テーマ

湿式プロセスにより作製した複合粒子を用いたセラミックスの微構造制御

各種プロセスを駆使して微構造を制御することで高機能なセラミックスの創製をめざす。 各種プロセスを駆使して微構造を制御することで高機能なセラミックスの創製をめざす。

湿式プロセスにより高強度、高靭性を示すジルコニアとアルミナを複合させた粒子を作製し、複合セラミックスのミクロレベルでの微構造制御をめざしています。具体的には、母粒子の表面に微粒子を析出させて被覆化することで、各種特性を高めるものです。例えるなら、ボールを泥の中に入れ、泥で均一にコーティングされた多数のボールの集合体を高温で焼き固めるようなイメージです。電子顕微鏡を用いて複合粒子の形態観察や、焼結体(セラミックス)の微構造観察を行っていますが、被覆の有無や程度を明確に評価することが難しく、さまざまな試行を重ねています。溶液のpHのわずかな変化や組成の違いによって、セラミックスの微構造が大きく異なり、機械的特性が変化することがわかりました。特異的な微構造を示すサンプルの評価を進めることで、微構造と特性の相関を明らかにしていければと思います。

環境問題の解決につながる、新たな生産プロセスの開発をめざしてほしい。

田中さんの研究は新材料の開発に留まらず、生産プロセスの開発をめざす化学工学の考え方をベースにしています。研究室スケールでの研究成果を、工場の生産工程に導入できるようにスケールアップすることが、生産技術者のテーマです。社会に出てからも、自分の頭で考えて研究を進めた経験を活かして、生産効率だけでなく地球環境に配慮した持続可能な生産プロセスの開発に取り組んでほしいと思います。

エネルギー環境・化学工学科
松岡 光昭 准教授

  • ※この学びのスタイルは2021年度のものです。

理工学研究科 環境都市工学専攻
博士課程前期過程 2020年3月修了
莊司 英紀

研究テーマ

ゼオライトを触媒とするグリセリンのアセタール化

生産過剰の物質から、有用な物質を効率よく作り出すルートの開発に取り組んでいます。 生産過剰の物質から、有用な物質を効率よく作り出すルートの開発に取り組んでいます。

廃油由来のバイオディーゼル燃料は、環境への負荷が小さい再生可能エネルギー。京都市バスの燃料として活用されるなど、利用が広がりつつあります。その製造過程で10%ほど産生されるグリセリンは生産過剰の状態ですが、グリセリンの化学構造を少し改変した1,3-プロパンジオールという物質には、高機能性繊維の材料となるなど高い付加価値があります。私は、グリセリンから1,3-プロパンジオールを効率よく作り出すルートを確立するという課題に取り組み、他の人がやらない方法で研究を行いました。副反応を抑制してねらった反応だけが進むように、反応に使用する物質や触媒を選択。反応条件にもこだわって実験を重ねました。結果は従来の方法とあまり変わらない60%台の収率にとどまりましたが、研究室での3年間で、失敗に見えるデータこそ「次はこうしよう」と考えるための第一歩で、研究に終わりはないということを学べました。この貴重な経験を元に、今後は企業の技術部門で努力していきたいと思います。

「研究とはこういうものだ」という一番大事なところを自分のものにしてほしい。

研究とは高い山に挑むようなもので、山頂をめざす道筋は幅広く考えた方がチャンスは広がります。ルートが多いほど、全ルートが失敗する確率は小さくなるからです。莊司さんは新たなルートの確立をめざして研究と研究室に貢献するとともに、研究力の基礎を身に付けました。国際会議での英語発表や海外の大学での共同研究も、今後につながる貴重な経験になったと思います。

エネルギー・環境工学科
三宅 孝典 教授

  • ※この学びのスタイルは2020年度のものです。

理工学研究科 環境都市工学専攻
博士課程前期課程 2019年3月修了
齊藤 康祐

研究テーマ

マリモナノカーボンを用いた直接メタノール型燃料電池用電極触媒の開発

研究室から生まれた材料の特性を調べ、環境にやさしい次世代燃料電池の開発に生かせることを確認。 研究室から生まれた材料の特性を調べ、環境にやさしい次世代燃料電池の開発に生かせることを確認。

近年は、高圧下で液化した水素を用いた燃料電池がさかんに開発されています。しかし、現時点で液体水素を生成するには化石燃料から取り出す方法が主流であり、扱い方によっては爆発の危険もあるため、メタノールを使った燃料電池の開発が注目されるようになりました。アルコールは液体水素に比べて取扱いが容易であり、微生物発酵からも得られるため、化石燃料の消費抑制につながる利点があります。私は研究室で開発されたマリモ型のナノカーボンを用いて、メタノール型燃料電池の高性能な触媒を開発し、発電の効率化を推し進める研究に取り組んでいます。マリモナノカーボンは球状の炭素繊維で、触媒に利用する場合、繊維と繊維の隙間を有効に使い、白金の粒子を分散して載せることができます。実験を重ねることで、マリモナノカーボンを使えば、普通のカーボンナノチューブを使用した場合に比べ、白金の使用量を大きく減らすことができ、同じ量の白金を使えば3~4倍の発電量が得られることが分かり、国際学会でも発表させていただきました。

地球環境、人の暮らしなど広い視点から研究の意義を見つめ、考え続けることが大切です。

学生に伝えたいことは、「大きな視点で考えて研究すること」です。自分の研究が地球環境の保全、エネルギー問題、人々の生活などにどう関わるのか、何のために研究するのかを、常に意識して取り組んでほしいのです。また、アイディアや成果を共有し、他の学生のアプローチに触れて異なる視点を得て、共に成長してほしいと考えています。

エネルギー・環境工学科
中川 清晴 教授

  • ※この学びのスタイルは2019年度のものです。

理工学研究科 環境都市工学専攻
博士課程前期課程 2年次生
和田 佳也

研究テーマ

固体酸化物形燃料電池の電極材料の合成と評価に関する研究

環境に優しく、有用な燃料電池を作るためナノ粒子に無数の孔をあける実験に挑戦。 環境に優しく、有用な燃料電池を作るためナノ粒子に無数の孔をあける実験に挑戦。

固体酸化物形燃料電池は、水素と酸素を化学反応させるため、廃棄物が水のみというクリーンエネルギーです。ただし稼働には1,000℃近い高温を要することから部品のコストが高いというデメリットもあります。私の研究は「原料の粒子にたくさんの孔があいていれば、反応する面が増えるぶん発電効率がアップし、温度を下げても性能が維持できるのでは」という仮説の検証です。実験では、電池の原料にクエン酸を加え、超音波振動と高温によって数百ナノメートルサイズの粒子にします。すると約400℃でクエン酸だけ焼失し、粒子に孔が残りました。研究をスタートしてから孔があくまで約半年。より小さな孔が数多くあくように実験を繰り返し、電池としての性能を評価しています。孔が小さくなり増えているという変化が、顕微鏡で確認できるのも実験の大きな楽しみ。「この方法で正解だった」という実感が得られます。同様に化学プラントの稼働効率をよくすることも環境改善につながるのだと納得。社会に出てからも、プロセスに工夫して環境改善を試みたいです。

社会の最重要課題と密接に関連している化学工学。「小さい環境負荷で、大きい成果を」が目標です。

私の研究室では、教員と学生は共同研究者。一緒に考えながら研究を進めています。この学科で学ぶ「化学工学」は、エネルギー材料や環境という、近年話題になることの多いテーマと直結する学問分野。環境に配慮して少ないエネルギーで効率よくたくさん生産する技術を学びます。化学製品はもちろん食品や薬品など幅広い産業のプラント設計に不可欠なので、人材ニーズも豊富です。

エネルギー・環境工学科
木下 卓也 准教授

  • ※この学びのスタイルは2017年度のものです。

理工学研究科 環境都市工学専攻
博士課程前期課程 1年次生
石川 北斗

研究テーマ

メソポーラスシリカ担持金属触媒を用いるエタノールからのBTX合成

プラスチックなどの原料となるBTXを生成。環境にやさしい触媒を生み出すのが目標です。 プラスチックなどの原料となるBTXを生成。環境にやさしい触媒を生み出すのが目標です。

バイオエタノールからBTX(ベンゼン、トルエン、キシレン類の総称)を生成するための触媒について研究しています。BTXはプラスチック、ゴム、医薬品など、私たちの生活に欠かせない物質の原料。現在は石油、石炭といった化石資源から作られますが、これらの枯渇が進むなか、新たな方法として注目されています。生成物中に含まれるBTXの割合を高め、また、少ないエネルギーで、できるだけCO2を発生させないような、生産効率アップも、環境保護もかなえる触媒を探しています。多孔質物質と金属を組み合わせた触媒をバイオエタノールと反応させ、生成物を分析するのが一連の流れ。自分の手で作りあげた反応装置を使います。温度、触媒に含まれる金属の種類や割合によって反応が変わるため、何十回、何百回と試行錯誤します。触媒ごとに、よりたくさんのBTXができる最適な条件を見極めます。良い結果が得られたときは、この上ない喜び。「いつか完璧な触媒を完成させたい」という気持ちを胸に、大学院進学後も研究を続けます。

プラスチック原料の製造、廃水の浄化など、私たちの生活に根づいたテーマに触媒で挑みます。

生成物を作る際、化学反応を促進するのが触媒の役割。より小さなエネルギー、より少ないCO2排出量で生成できれば、生産効率アップや環境保護に良い効果をもたらします。現在は主に、バイオエタノールからプラスチックなどの原料となるBTXを作るための触媒について研究中。また、触媒を用いた廃水の浄化も大きなテーマです。ともに、エネルギーや環境について考えていきましょう。

エネルギー・環境工学科
池永 直樹 教授

  • ※この学びのスタイルは2016年度のものです。

理工学研究科 環境都市工学専攻
博士課程前期課程 2年次生
西山 達一郎

研究テーマ

ZIF-8を用いたアルコール水溶液の吸着・分離に関する研究

バイオ燃料の精製に用いる多孔質材料を環境に優しい方法で合成しています。 バイオ燃料の精製に用いる多孔質材料を環境に優しい方法で合成しています。

私の研究対象は、ZIF-8(ジフエイト)という、液体や気体の吸着・分離に用いられる多孔性の物質です。従来、吸着・分離にはゼオライトという無機物質が幅広く用いられてきましたが、ZIF-8は表面積が大きい、構造設計が容易であるなどの特徴から、近年ゼオライトに代わる材料として注目を集めています。ただし、ZIF-8は今までは有機溶剤を用いて製造するのが一般的で、人体や環境への影響が懸念されることから、新たな製法の開発が求められるようになりました。そのなかで私は、環境に負荷を与える溶液を用いないでZIF-8を簡単に合成できる、乾式法の確立に取り組んでいます。さらに、この方法で得られた ZIF-8を、化石燃料の代替燃料であるバイオアルコールの精製に用いた場合の性能などについても研究中。この製法が将来実用化して、バイオ燃料が今よりも普及し、社会が化石燃料に依存しない方向に向かっていけばと期待しながら、実験を進めています。

研究室で分離工学の基礎力を伸ばし、社会に出ても成長し続けることを期待しています。

西山さんは、分離工学の技術者を志望しています。企業では、現在取り組んでいるテーマと関連する研究に携わる可能性は薄く、異なる研究開発に取り組む方が多いといえます。しかし、分離工学の知識や技術などは変わりません。また、後輩を指導し、計画を自分で進めていった経験も、課題解決に生かすことができるでしょう。これからの活躍を期待しています。

エネルギー・環境工学科
三宅 義和 教授

  • ※この学びのスタイルは2015年度のものです。

理工学研究科 ソーシャルデザイン専攻(現 環境都市工学専攻)
博士課程前期課程 2014年3月修了
赤井 友香

研究テーマ

グリセリンの水素化分解による1,3-プロパンジオール合成

産業廃棄物から価値ある物質を作る研究にチャレンジしています。 産業廃棄物から価値ある物質を作る研究にチャレンジしています。

バイオディーゼル燃料は、環境への負荷が小さい再生可能エネルギーとして注目されています。しかし、製造過程で生成するグリセリンという副産物には、現在、有効な使い道が少なく、供給過剰の状態になっています。私の研究テーマは、グリセリンを触媒を使って水素化分解※し、紫外線や雨水に侵されにくいなど、優れた性質をもつ樹脂の原料「1,3-プロパンジオール」を作り出すこと。使い道に困っているグリセリンを有効利用して、工業的に価値が高い物質を作る方法の確立をめざしています。先輩から受け継いで始めたこの研究は、取り組むようになってから4年が経ちますが、ねらったとおりに水素を付加する反応を起こすことが非常に難しく、初めの数ヶ月は何の進展もありませんでした。悩んだ末に、反応に使用する金属化合物の種類を変え、また、酸の強度という点でも検討を重ねました。実験を繰り返した結果、秋頃から少しずつ研究の方向性が定まってきたように感じています。確かに手強いテーマですが、いずれ画期的な結果が出ると信じています。

  • ※水素化分解:炭素と酸素の結合を切って、水素を付加すること

環境にやさしい研究開発を一歩ずつ先に進めています。

1,3-プロパンジオールは現在、グルコースを発酵させて生産されています。しかし私たちは、資源の有効利用をめざして出発物質にグリセリンを使用しており、その扱いにくい化学構造ゆえに、研究の進展に時間がかかっています。他大学でも活発に研究されていますが、工業化できるような成果は出ていません。そのなかで、赤井さんは研究を前に進めるために貴重な貢献をしてくれたと思います。

エネルギー・環境工学科
三宅 孝典 教授

  • ※この学びのスタイルは2014年度のものです。

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