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教員が語る専門領域の魅力 vol.14

田村 祐 助教

当たり前を問い直す:言語を習得するとはどういうことか

田村 祐 助教

Profile

第二言語習得研究が専門であるが、応用言語学に広く関心がある。また、実践的な観点からはタスク・ベースの言語指導にも関心があり、教室内をリアルな言語使用の場とすることに日々奮闘している。

第二言語習得研究とは?

 私が対象としている研究領域は、第二言語習得と呼ばれるものです。人はどのような環境に生まれたとしても、第一言語(人が最初に身につける言語)を獲得することができます。しかしながら、第一言語を獲得した後に学習する第二言語の習得は第一言語獲得とは異なり、様々な要因の影響で発達のスピードや最終到達点に大きな個人差があります。第二言語習得研究は、この差がなぜ生まれるのかといった謎を解き明かす研究と言えるでしょう。語彙・音声・文法など、様々な領域の研究がありますが、私が中心的に扱うのは文法です。文法の習得で面白いのは、「知っているのに使えない」という現象と、「ルールを説明できないのにも関わらず、なんとなく直感で文法的な誤りがわかる」という現象です。

「知っている」のに「使えない」

 例えば、「3単現の-s」と聞けば、中学で英語を習ったことがある人なら、「主語が三人称単数なら動詞に-sをつける」という規則を説明することができると思います。しかしながら、実際に英語を使う際に、この-sを間違わずに使いこなすことは難しいとされています。私が担当している学部1年生向けのライティングクラスでも、難しい語彙や文構造を使って流暢に英作文をする学生が、”This tell us an interesting thing”のような誤りをするケースは少なくありません。おそらく、スピーキングであれば誤りはより多く観察されるでしょう。このような場合、教師がルールを説明する必要はあまりなく、実際の言語使用のなかで間違いに自分で気づいて修正できるようなレベルをまずは目指すことになります。

「知っている」けど「知らない」

 以下の英文は、文法的に正しいでしょうか。それとも誤りでしょうか。
(a) My younger sister was difficult to become an actress.
実は、この英文はtough構文と言われる英語の規則で、(b)が典型例です。
(b) The question is difficult to solve.
(b)の英文はsolveの目的語であるthe questionが主語の位置に移動したものと考えられており、誤りではありません。一方で、(a)の英文は、becomeの目的語の位置にも名詞句があり、文法的には誤りとなります。実は(a)のような英文が誤りであると学習者は判断できるにもかかわらず、彼・彼女らは規則を知らないと答えます。つまり、「自分たちでは規則を説明できないながらも、規則を『知っている』」状態だといえます。もちろん、このような知識は不安定であり、いつどのような文でも正しい判定ができるわけではありません。そうではあっても、規則を知らないとは考えにくいほどの確率で正しい判断ができるのです。

学生のみなさんへのメッセージ

 上の2つの例は、言語の知識とは、単に「知っている=使える」、「知らない=使えない」という単純なものではないことを示しています。みなさんには、外国語学部での学びを通して、言語を習得するとはどういう営みなのかということを考えてもらいたいです。そのために必要なのは、「知っている」、「知らない」といった普段何気なく使っている言葉の意味、その「当たり前」を問い直すという作業です。そしてそれこそが大学の学びだと思っています。