1.「社会」からみた
社会安全学

防災の知識を専門家と市民が
ともに学び合う仕組みを作る

研究テーマ
防災をめぐる専門家と市民の協働実践

城下英行ゼミ 大西 一輝さん
(兵庫県立明石清水高等学校出身)

大西 一輝さん

このテーマに興味を持った理由

 学部の先輩に誘われたことがきっかけで、大阪府にある「津波・高潮ステーション」という防災学習施設を拠点とする、学生サポーター団体で活動しています。施設の職員・スタッフの方々と意見を交わしながら、さまざまな啓発イベントを企画・運営。主に子どもたちを対象に、楽しみながら防災の知識を身につけてもらい、子どもたち自身の意見を取り入れる「学びあい」を実践しています。この活動をより深め、自分の成長につなげるために、城下先生のゼミに所属して防災教育を研究しています。

研究の流れ

STEP1 防災教育に関する文献を読む
STEP1

 津波・高潮ステーションで、子どもたちをはじめ市民の皆さんに、楽しく防災を学んでほしい。そのために、教育に関する書籍を読み込みました。教育と聞くと、教わった知識を反復して勉強した結果、「わかる」「できる」ようなイメージがあるかもしれません。しかし防災教育においては、この「教える側-教えられる側」という関係を超えて、お互いに学び合う方が、より効果的なのではないかと思っています。文献を読んでいくなかで、防災の知識をもった専門家と、地域で生活する市民が、対話を通して自分と異なる考え方に触れ、お互いにより納得度の高い課題解決の方法を見つけ出すことが大切だと考えるようになりました。

STEP2 イベント企画の打ち合わせを行う
STEP2

 主に子どもたちを対象にした啓発イベントなので、楽しみながら自然と興味がわくことを重視しています。今までも「魚釣りゲーム」や「防災脱出ゲーム」などを企画してきました。そして今回は子どもたち自身にクイズを考えてもらって、参加者がお互いに問題を出し合う形を提案。職員・スタッフの方々が、私たち大学生のアイデアを積極的に取り入れてくださるので、モチベーションが高まります。打ち合わせを重ね、子どもたちに伝えたい内容を絞り込んでいきました。

STEP3 イベントの実施
STEP3

 いよいよ当日、東日本大震災の追悼イベントの一環として、私たちのクイズイベントも行われました。館内の施設を子どもたちがまわって、津波・高潮をはじめとする自然災害についてクイズを作成。夢中で私たちや専門家が考えつかないようなクイズも飛び出して、盛況のうちに無事終了することができました。

STEP4 イベント内容の分析、フィードバック
STEP4

 イベント終了後の振り返りで、私たち学生スタッフからは「子どもたちには内容が難しすぎたかも」「クイズの内容に偏りが出た」など、もっと改善できたのでは、という声があがりました。しかし一方で、「学び合い」を掲げるイベントなのだから、最初から啓発目的を強く打ち出しすぎると、子どもたちが自由に発想しづらくなるという意見も。
 ステーションの職員の方からはフィードバックとして、「子どもたちが作ったクイズを、イベントが終わった後も館内で出題していきたい」という声をいただきました。

次にめざしたいStep!  今回のイベントは、地域の人々が防災学習施設を訪れるきっかけを作り、防災を自分のこととしてとらえてもらうことが目的でした。その点では、専門家と大学生と市民が一緒に考え、学び合う場になりました。今後はこのつながりの継続と拡大が課題だと思っています。