2.「人間」からみた
社会安全学

「震災」と「心理学」の
視点から学べる

研究テーマ
指定廃棄物の処理施設の受け入れに
関するアンケート調査

広瀬 幸雄ゼミ 網 夏野さん
(大阪府立北野高等学校出身)

網 夏野さん

このテーマに興味を持った理由

 高校2年生の3月に、東日本大震災が発生し、被災地の様子をテレビで見ていました。これをきっかけに「社会安全」の分野に興味を持ち、人々の精神的なケアの視点から安全・安心な社会をつくりたいと心理学にも特に興味を持つようになりました。
 震災から数年たった今も、被災地の指定産業廃棄物の処理が進んでいない現状を知り、その原因には指定産業廃棄物を受け入れる地域の人々の「感情」が影響しているのではないかと考え、この研究テーマに取り組むことにしました。

研究の流れ

STEP1 指定廃棄物に関する文献を読む
STEP1

 まずは、自分自身が指定廃棄物について知ることからスタート。広瀬先生から学術論文や参考図書を教えていただき、たくさんの文献を読みました。廃棄物にもさまざまな分類があります。放射性物質の無力化に30年ほどかかる「指定廃棄物」と、無力化まで何万年もの時間が必要な「高放射性廃棄物」との違いなど、知らないことがたくさん。専門用語は辞書で調べ、わかりにくいところはゼミの仲間と相談し合いながら知識を深めていきました。

STEP2 アンケート調査の準備
STEP2

 アンケートの目的は、指定廃棄物処理施設の受け入れの賛否にどのような心理的理由が影響しているかを知ること。また、どんな要因があれば、指定廃棄物を受け入れようと思うかを知ることでした。
 文献研究の段階で事前に読んでいた「高放射性廃棄物」の論文に類似するアンケートがあったため、それを参考にしながら、どんな質問項目をするのがいいかをみんなで考えました。
 実際のアンケートでは、「あなたはA市の住民です。選定方法に従い、指定廃棄物の処理施設の設置場所を選定した結果、A市が選ばれました」と、回答の前提条件を設定し、施設の受け入れの賛否とそれに関する心理的理由についての質問項目を作成しました。

STEP3 アンケートを実施  アンケート調査は、社会安全学部の学生を対象に行いました。短期間でアンケート回答を集める必要があったため、大講義室などで行う授業終了後にアンケートを配布してその場で回収しました。回答時間を十分に設けることができなかったため、未解答欄もありましたが、有効回答66名分を調査結果として回収することができました。

STEP4 アンケート結果の分析
STEP4

 1・2年次のIT実習の授業で学んだアンケート分析の技術を活かして、「どのような要因があれば指定廃棄物の受け入れに賛成するか」を分析。ほぼ毎日、ゼミの仲間と授業の空き時間に集まって分析作業を進めました。
 今回の調査では、「国や行政の選定の手続が構成であれば受け入れやすい」という結果に。しかし、実際の社会では、手続きの公正性だけでは受け入れに賛成しない現状があります。データと現状との大きな差は、アンケート対象者が学生だったことや回答数の少なさが大きく影響していました。思うような結果が得られず、調査の難しさを実感。この経験を、今後の調査に生かしていきたいと思っています。

次にめざしたいStep!  社会安全学部の研究発表で、今回の研究を約300名の前で発表しました。プレゼンテーションの練習にも力を入れて臨み、とてもいい経験になったと思います。質疑応答では、アンケートの言葉の難解さや、専門用語についての質問があり、あらためて人にわかりやすく伝えることの難しさと大切さを実感しました。
 心理学の視点から震災について調査した今回の経験を生かし、今後は「南海トラフ巨大震災」の防災に向けて研究したいと思っています。