研究活動 2016年度

2016年度 第2次バーレーン現地調査を実施平成29年(2017年)3月

2017年3月23日(木)から30日(木)にかけて、バーレーンのバルバル神殿およびアル・ハミースモスクにて現地調査を実施しました。本調査は、バーレーン文化省のサルマン・アルマハーリ氏の協力のもと、エジプト学・エジプト社会グループ氏の吹田浩氏、サラーハ・エル・ホーリ氏、文化財修復グループのアフメド・シュエイブ氏、アーデル・アカリシュ氏、マイサ・マンスール氏、科学技術グループの伊藤淳志氏、鶴田浩章氏、安室喜弘氏、中村吉伸氏を中心に行いました。

バルバル神殿では、前回に引き続き神殿内の岩盤強度の測定やドローン(無人航空機)による空中からの遺跡の記録調査をおこなうとともに、新たに3Dレーザースキャナーを用いた遺跡全体の3次元測定、過去の発掘報告書の記録と現状の比較調査等をおこないました。また、アル・ハミース・モスクでは、ドローンや3Dレーザースキャナーを用いた遺跡の記録を実施しました。これらの調査の成果を活かし、当センターはバーレーンの文化遺産の保全を目的とした本格的な研究を進めていきます。

2016年度 第3次エジプト現地調査を実施平成29年(2017年)3月

2017年3月6日から17日にかけて、当センターの吹田浩氏(エジプト学・エジプト社会グループ)、サラーハ・エル・ホーリ氏(エジプト学・エジプト社会グループ)、アフメド・シュエイブ氏(文化財修復グループ)、アーデル・アカリシュ氏(文化財修復グループ)、安室喜弘氏(科学技術グループ)、藤井信之氏(当センター研究員)が、エジプト、サッカラにて現地調査を行いました。

今回の調査では、温湿度の計測をはじめとするイドゥートのマスタバでの調査に加えて、日本・エジプト・ポーランドの研究者による合同ワークショップを開催しました。このワークショップは、古代エジプトの壁画保存の技術協力を目的として行われたもので、文化財に関する様々な講義や、実際の壁画モデルを使用した表打ち・裏打ち・剥ぎ取りの実習を通して、積極的な技術交換がなされました。

平成28年度文化財保存修復セミナーを開催平成29年(2017年)2月

当センターでは昨年度に引き続き、「文化財保存修復セミナー」を2016年2月20日(月)から25日(土)にかけて開催しました。文化財について学ぼうとする大学生や、文化財保護に強い関心を持ち、学ぼうとする一般社会人の方々を対象に、現場で活躍している研究者や技術者など、一流の専門家を講師陣に迎えて講義が行われました。当センターからは、吹田浩氏(エジプト学・エジプト文化グループ)、伊藤淳志氏(科学技術グループ)、安室喜弘氏(科学技術グループ)、高鳥浩介氏(科学技術グループ)が講義をしました。

受講生は、文化財に関する基礎的な知識や、各素材に基づく修復方法の実例、文化財保護に関する最新情報を幅広く学び、また実際の文化財や調査機器を手にとる機械を得ることが出来、大変充実した時間を過ごしました。

全日程を履修した受講生には、修了証書が授与されました。

サラーハ・エル・ホーリ氏による講義平成29年(2017年)1月-2月

2017年1月23日から2月5日にかけて、当センター研究員のサラーハ・エル・ホーリ氏(エジプト学・エジプト社会グループ)が来日し,関西大学の学生に向けたヒエラティックと後期エジプト語の講義を行いました。

ヒエラティックの講義では「難破した水夫の物語」を題材として、ヒエラティックで書かれた資料の読解に取り組みました。また、後期エジプト語の講義では「アメンエムオペトの教訓」を通して文法を実践的に学びました。ヒエラティックや後期エジプト語文法を学ぶ講義は日本では少なく、学生たちが多くの新たな知識を得る良い機会となりました。

関西大学大学院にて「文化財科学研究B」を開講平成29年(2017年)1月

2017年1月23日から25日にかけて、成瀬正和氏(元宮内庁正倉院事務所)が集中講義「文化財科学研究B」を行いました。

この講義は、文化財の保存修復に関する自然科学的な基礎知識を学び、実際の事例から保存修復技術への応用についての理解を深めることを目的としています。

25日(金)には、仏像修復家の矢野健一郎氏の研究所を訪問し、仏像修理の現場を間近で見学させていただきました。その後、元興寺文化財研究所総合センターにおいて、金属製品や木製品、土器など、文化財に応じた修復の方法を学びました。

「中期エジプト語講座 中級」を開講平成28年(2016年)11月

当研究センターは、2016年11月12日(土)、19日(土)、26日(土)の3日にかけて、「中期エジプト語講座 中級」を開講しました。

この講座は、古代エジプト語について学習経験のある方や、古代エジプトの社会・文化に興味のある方に向けたもので、初級編の修了者を含めた多くの方々にご参加いただきました。

講座では、「シヌヘの物語」と中王国時代の碑文、そしてツタンカーメンの厨子に描かれた文字を読み解くことで、初級編で身に着けた力を試すと同時に、古代エジプトの文化や社会についての知見も深めることができました。

受講生には、全3回の講義を終えて、当研究センターから「中期エジプト語講座 中級」の修了証書が授与されました。

2016年度 第2次エジプト現地調査を実施平成28年(2016年)11月

2016年11月、当センターの吹田浩氏(エジプト学・エジプト社会グループ)、アフメド・シュエイブ氏(文化財修復グループ)、アーデル・アカリシュ氏(文化財修復グループ)、伊藤淳志氏(科学技術グループ)、鶴田浩章氏(科学技術グループ)、中村吉伸氏(科学技術グループ)が、エジプト、サッカラにて現地調査を行いました。

今回の調査では、2016年の夏季調査における実験の結果を確認し、今後の調査の見通しについて検討しました。

2016年度 第1次バーレーン現地調査を実施平成28年(2016年)11月

2016年11月、当センターの吹田浩氏(エジプト学・エジプト社会グループ)、岡絵理子氏(エジプト学・エジプト社会グループ)、アフメド・シュエイブ氏(文化財修復グループ)、アーデル・アカリシュ氏(文化財修復グループ)、マイサ・マンスール氏(文化財修復グループ)、伊藤淳志氏(科学技術グループ)、鶴田浩章氏(科学技術グループ)、安室喜弘氏(科学技術グループ)、中村吉伸氏(科学技術グループ)が、バーレーン王国での現地調査を行いました。

関西大学は今年、バーレーン文化省との協定を締結し、バーレーンの文化遺産の1つであるバルバル神殿での保存修復のための研究を開始しました。今回の調査では、遺跡の保存状態の確認と過去の発掘報告書との比較に加えて、遺跡の岩盤強度の測定、ドローンによる遺跡全体の測量に取り組みました。その後の打合せでは、遺跡の現状を踏まえ、今後の遺跡の保存修復活動の方針を決定しました。

公開シンポジウム「エジプト文化財の保全に向けて」の開催平成28年(2016年)10月

当センターは、2016年10月29日(土)、関西大学東京センターにて公開シンポジウム「エジプトの文化財の保全に向けて」を開催しました。

このシンポジウムでは、サッカラにあるイドゥートのマスタバ墓の保存修復に取り組む当センター研究員による活動報告に加え、カイロ地域と中エジプト地域の保存修復の責任者であるサブリ・アブデル・ガッファール氏とシハーブ・ファッデル氏から現地の最新の修復成果について報告が行われました。

サブリ氏の発表では、イドゥートと同様に地下で深刻な損傷を受けている壁画保存の実例として、サッカラにある新王国時代のマヤ墓の保存修復活動が紹介されました。シハーブ氏の発表では、2013年に起きた暴動に巻き込まれ、多くの文化財が破壊・略奪されたマラウィ国立博物館での地道な修復活動が紹介されました。

また、2019年に開催されるICOM(国際博物館会議)の京都大会の開催を踏まえ、当センター研究員の藤井信之氏から、日本国内のエジプト文化財の紹介も行われました。

シンポジウムには、エジプト駐日大使館から特命全権大使、イスマイル・カイラット閣下にご出席いただき、ご挨拶にあたって、日本とエジプトの文化財をめぐる協力関係の重要性を強調するお話をしていただきました。


講演プログラム

「関西大学のエジプト調査プロジェクト」
                吹田浩(関西大学CHC センター長)
          西浦忠輝(国士舘大学イラク古代文化研究所)

「サッカラ遺跡群の保存と修復」
              アフメド・シュエイブ(カイロ大学考古学部)
         アーデル・アカリシュ(エジプト国立研究センター)

「サッカラにおける修復のためのデジタル・アーカイブ」
                安室喜弘(関西大学環境都市工学部)

「イドゥートの地下埋葬室の構造調査」
                伊藤淳志(関西大学環境都市工学部)
                   西形達明(関西大学名誉教授)
                 中村吉伸(大阪工業大学工学部)
              鶴田浩章 (関西大学環境都市工学部)

「ギザの文化財の保存修復
 -サッカラ、マヤ墓の事例を中心に-」
                     サブリ・アブデルガッファール
                (考古省大カイロ地域保存修復局長)

「マラウイ国立博物館とエル・ミニヤの文化財の保存修復活動」
         シハーブ・フセイン・アブデルナーセル・ファッデル               (考古省中エジプト地域保存修復局長)

「日本国内のエジプト文化財」
                     藤井信之 (関西大学CHC)

ギザ・サッカラの遺跡管理事務所が感謝状を贈呈平成28年(2016年)8月

2016年8月、関西大学と当センター長の吹田浩氏 (エジプト学・エジプト文化グル―プ) に、エジプト考古省ギザ地域保存修復部門長、モスタファ・アブデルファッターハ氏、同省サッカラ地区保存修復部門長、アシュラフ・ユーセフ氏から感謝状が贈呈されました。本感謝状は、関西大学が取り組むサッカラの文化財保存修復活動での評価をうけ、贈呈されたものです。今後も文化財保護を目指す日本とエジプトの更なる協力関係の形成が期待されています。また、当センターの研究員・職員にも感謝状が贈られました。

2016年度 第1次エジプト現地調査を実施平成28年(2016年)8月

2016年8月6日(土)から、8月21日(日)にかけて、当センターの吹田浩氏(エジプト学・エジプト社会グループ)、サラーハ・エル・ホーリ氏(エジプト学・エジプト社会グループ)、岡絵理子氏(エジプト学・エジプト社会グループ)、アフメド・シュエイブ氏(文化財修復グ ループ)、アーデル・アカリシュ氏(文化財修復グループ)、マイサ・マンスール氏(文化財修復グループ)、ラファオ・クーン氏(文化財修復グループ)、鶴田浩章氏(科学技術グループ)、安室喜弘氏(科学技術グループ)、中村吉伸氏(科学技術グループ)、池永昌容氏(関西大学環境都市工学部)が、エジプト、サッカラにて合同の現地調査を行いました。

今回の調査では、イドゥートのマスタバ埋葬室の岩盤強化の実験や、天井部分のGPR調査、そして今後の調査の方針を決める議論を中心とした活動に取り組みました。議論では、ポーランドの壁画修復の専門家であるラファオ・クーン氏(文化財修復グループ)を中心に、埋葬室の保存状態の実情を踏まえた修復についての意見交換がなされ、今後の埋葬室内の保存修復活動についてのより具体的な見通しが立てられました。

また、安室喜弘氏(科学技術グループ)によるシャフト部分の画像計測や、岡絵理子氏(エジプト学・エジプト社会グループ)によるサッカラ村の調査も実施されました。

「エジプト学研究セミナー」の開催平成28年(2016年)7月

2016年7月31日 (日) 、当センターは「エジプト学研究セミナー」を開催しました。

 本セミナーでは、現在エジプト学研究の第一線で活躍する専門家をお招きし、古代エジプトの初期王朝時代、古王国時代、新王国時代、第三中間期(リビア王朝時代)の 歴史をテーマとしたご講演をおこないました。各講義ともに充実した内容となり、それぞれのテーマの概説に加えて、研究史や近年の研究動向の報告を含む本格的な講義となりました。

当センターからは、吹田浩氏(エジプト学・エジプト文化グループ)と藤井信之氏(当センター非常勤研究員)が講演をおこないました。

 講演プログラム

 (1) 「王墓にみるエジプト初期国家の王権」
                中野智章氏 (中部大学国際関係学部)

 (2) 「古王国時代第5王朝最後の王、ウニスの時代」
                     吹田浩氏 (関西大学文学部)

 (3) 「トゥトゥアンクアメン(ツタンカーメン)王時代のエジプト」
        河合望氏 (金沢大学国際文化資源学研究センター)

 (4) 「リビア王朝時代(第22王朝-第24王朝)の支配体制と墓制」
      藤井信之氏 (関西大学国際文化財・文化研究センター)

関西大学大学院にて「文化財科学研究A」を開講平成28年(2016年)7月

2016年7月27日(水)から29日(金)にかけて、成瀬正和氏(元宮内庁正倉院事務所)が集中講義「文化財科学研究A」をおこないました。

講義では、文化財科学の概要や保存修復に関する基礎知識を学び、文化財の保存と調査研究に関する理解を深めることを目的に、多くの事例を紹介してくださり、みな興味深く講義を受けました。

7月29日(金)には、独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所を訪問し、分析機器や分析手法、CTスキャンやテラヘルツ波による調査研究の概要、木材の保存処理法に関する説明をしていただきました。 また、午後からは、正倉院を訪問し、宝物の保存および調査手法についての説明を拝聴し、正倉院正倉を間近で観察させていただきました。

「中期エジプト語講座 初級」を開講平成28年(2016年)5月-6月

当研究センターでは、2016年5月28日(土)から6月18日(土)にかけて、全4回の集中講義「中期エジプト語講座 初級」を開講しました。

本講義では、単語の読み方や区切り方、辞書の使い方から、古代エジプトの実際の文字資料に見られる文法の基礎までを集中的に学びました。本講座を通して、受講生は中期エジプト語の文法のポイントを理解することができました。

この講座は、中期エジプト語を初めて学ぶ人を対象に開かれたものですが、一昨年度、昨年度の講座受講生を含めた、古代エジプトに関心を持つ幅広い世代の方々にご参加いただきました。

受講生には、全4回の講義を終えて、当研究センターより「中期エジプト語講座 初級」の修了証書が授与されました。