2.「人間」からみた
社会安全学

「食」を安全学の
視点から見つめる

研究テーマ
茶系飲料の機能性表示食品における
表示問題

辛島 奈美子ゼミ 堀口 千裕さん
(大阪府立和泉高等学校出身)

堀口 千裕さん

このテーマに興味を持った理由

 辛島ゼミでは「薬・水・食べ物」という、普段の生活に身近なものをテーマに研究を行っています。3年次生の時、ゼミで健康食品の安全性について考える機会があり、同じように見える健康食品でも国の審査を受けている「特定保健用食品」と、審査を受けていない「機能性表示食品」があるという事実を知りました。大学に進学してから健康食品を口にすることが増えていたため、自分がいつも口にしている健康食品が本当に安全なのか知りたいと思ったのが、「機能性表示食品」をテーマに選んだきっかけです。そこで多くの人にとって身近な茶系飲料を題材にして、調査することにしました。

研究の流れ

STEP1 特定保健用食品と機能性表示食品の成分の違いを調査
STEP1

 まず茶系飲料の特定保健用食品と機能性表示食品で、入っている成分に差異があるのかを調査することから始めました。ペットボトルで販売されている茶系飲料を一覧できるようにパッケージを並べ、特定保健用食品と機能性表示食品それぞれの飲料に含まれる原材料を表記に従い比較していきます。その結果わかったことは、含まれている成分に大きな違いはないということ。これなら国からの認可の有無の違いはあっても、成分が同じなら特定保健用食品より安く購入できる機能性表示食品の方がお得なのではないかと思いました。
 そこで、次は中身ではなく機能性表示食品を認可する制度について調べました。

STEP2 世の中に出るまでの制度の違いを比較
STEP2

 特定保健用食品は国の審査を受けていますが、機能性表示食品は果たしてどのような工程で、どの機関に認可されているのかを文献やホームページで調べました。そこでわかったことは国の審査は受けていないものの、国の定めた基準はクリアしており、その商品情報を消費者庁に届け出ているということ。つまり個別審査はありませんが、安全である情報を国に提出しているということです。
 ただし、ここで一つの疑問が浮かびました。提出している情報については各企業が独自に調査しているため、企業に有利な方法で調査が行われている可能性はないかということです。そこで、実際にどのような調査が企業ごとに報告されているかを調べることにしました。

STEP3 茶系飲料の機能性表示食品における商品比較
STEP3

 近年、機能性表示食品の報告内容は、消費者庁のホームページで確認することができます。機能性表示食品のパッケージに記載されている届出番号を入力すると、どのような調査を行ったかという情報を誰でも閲覧できるのです。その情報を商品ごとに比較していくと、安全性・機能性を評価するための調査対象人数や摂取期間が全く違うことがわかりました。つまりパッケージに記載されている情報の科学的根拠のレベルは、企業によって違うということです。また特定保健用食品と異なり、その飲料をどれくらいの期間摂取し続ければ、パッケージに記載されている効能が得られるのかという記述がないこともわかり、機能性表示食品の情報には数々の気になる点があることがわかりました。

STEP4 問題点の考察
STEP4

 機能性表示食品は、2015年4月から始まったまだ新しい制度です。その背景には、機能性をわかりやすく表示した商品を増やし、消費者が商品の正しい情報を得て選択できるようにするという目的がありました。しかし、調査の基準が企業ごとに違う場合、果たして「正しい」情報と提供していると言えるかは疑問に感じます。
 また、機能性表示食品を購入する健康志向の高い消費者にとって、パッケージに書かれている効能を得るためには、どのくらいの期間、どのくらいの量を摂取すればよいかという表記の有無は重要なポイント。その表記がないということも、問題視されるべきだと思います。
 この研究を通して、機能性表示食品が消費者にとって有益なものとなるためには、まだまだ改善の余地があると感じました。

次にめざしたいStep!  ここまでは文献やインターネット等の情報を通して、茶系飲料における機能性表示食品の記載に過剰な宣伝や詐欺性はないか、といった視点から比較検討を繰り返してきました。
 今後は生活条件や体質等も踏まえたうえで、実際に記載されている効能が本当に得られるのか、またそのためにどのくらい期間や摂取量が必要かということを調査したいと考えています。