2.「人間」からみた
社会安全学

高齢者の心も体も元気に!
「筋トレ」でつくる
健康で安心な社会

研究テーマ
筋トレ文化の広がりで、
健康社会を築き医療費を減らすには?

元吉 忠寛ゼミ 桐木 士さん
(私立岡山学芸館高等学校出身)

桐木 士さん

このテーマに興味を持った理由

 私は子どものころ、洪水警報で避難した経験があります。そのとき、避難している人が思ったより少なかったこと、そして避難所で見た大人たちの不安そうな顔が今でも忘れられません。そんな経験もあったため、災害時の人の行動や心理に興味がありました。大学では災害心理学を学ぶことができる社会安全学部に進み、元吉ゼミを選びました。
 現在は、「筋トレ」をテーマとした高齢者の心理を研究しています。実は私自身、過去に無理なダイエットをして拒食症を経験したことがあります。しかし、筋トレを始めたことで少しずつ自信が取り戻せて、前向きになることができました。筋トレを続けることは、体力だけでなく、精神的な充実感や仲間との繋がりなど、人生を前向きに変える多くの効果があることを実感しています。そんな経験から、「筋トレが高齢者の心や社会とのつながりの両方に良い影響を与えるのでは?」と思い、この研究をはじめました。社会安全学部では災害時に自力での避難が困難で支援が必要な「要支援避難者」の問題や、医療費増大の問題について学んだのですが、高齢者の筋トレは、このような問題を解決する糸口にもなるのではないかと考えています。

研究の流れ

STEP1 文献・先行研究の分析
STEP1

 まず、厚生労働省『第3期医療費適正化計画』などの統計資料を分析し、医療費が年々増えていることを確認しました。また、先行研究を調べたところ、筋トレの身体的効果や阻害要因に注目したものが多い一方、「心の健康」や「人とのつながり」に焦点を当てた研究は少ないことが分かりました。そこで私は、「筋トレが人々の心の健康や人とのつながりにどんな良い影響をもたらすのか」を明らかにしたいと考えました。

STEP2 アンケート調査の設計
STEP2

 私がアルバイトをしているスポーツジムに通う方々を見ていると、よくジムに通っている人ほど病院に行く回数が少ないという印象を得ています。そこから、「楽しく筋トレを続けている人は、健康で、安心して暮らしているのではないか?」という仮説を立てました。この仮説を検証するために65歳以上の方を対象としたアンケートを行う計画を立てました。
 アンケート調査は、筋トレを習慣的に行っている「実践群」と、運動習慣を持たない「非実践群」に分けて行い、質問項目には、「体力の変化」、「気分の前向きさ」、「健康についての意識」、「病院の利用回数」、「社会的孤立感の変化」など、心身と人とのつながりの両側面を含めました。

STEP3 調査の実施  アンケート調査の実施はこれからになりますが、回答者100名(各群50名)を目標として、「実践群」の方は、自身のアルバイト先であるスポーツジムに通う方にご協力いただくこととしています。また、高齢者の方にも答えやすいように、やさしい言葉や説明を工夫しています。

STEP4 分析と考察  収集したデータを統計ソフトで分析し、実践群と非実践群の回答を比較し、筋トレが、「心身の健康」や「社会のつながり」にどれくらい効果があるかを検証します。さらに、筋トレの頻度や継続期間がどのように影響するのかも詳しく見ていく予定で、筋トレの総合的な効果を明らかにしたいと思っています。

次にめざしたいStep!  研究を卒業論文としてまとめるだけでなく、実際の社会への還元を目指しています。特に、「安全に、楽しく、仲間と」筋トレを始められる環境づくりを自治体や地域コミュニティと連携して進め、高齢者がいきいきと暮らせる社会を実現したいと考えています。