3.「自然」からみた
社会安全学

昔から興味のある自然環境に
ついての研究に挑戦する

研究テーマ
CDF-DEMによるグラウト注入条件の
検討

小山倫史ゼミ 保木勇介さん
(私立滝川第二高等学校)

山村 紀香さん

このテーマに興味を持った理由

 子どもの頃から森や海など自然が好きだったので、大学でも自然環境から「安全」にアプローチしたいと考えました。
 今回の研究では、岩盤や地盤の亀裂に流動性の液体「グラウト」を流し、地盤を補強強化する「グラウト注入」について研究しました。グラウト注入は、建設工事で強度のみならず透水性を改善するために使われる手法です。一般的にグラウトを注入する際にはセメントと水を配合し、圧力をかけて流していきますが、効率的に注入するために様々な方法が提案されています。ただし、その配合や圧力に明確な規定はありません。また注入メカニズムについてもよくわかっていません。現場の職人の経験で作られているという現状を知り、より頑丈な地盤づくりができるグラウトについて効率的な注入方法(今回の研究では動的注入という振動を与えながら加圧注入する工法)に関する研究をすることにしました。 ※「グラウト」とは
建設工事において空洞、空隙、隙間などを埋めるために注入する流動性の液体のこと。

研究の流れ

STEP1 文献研究
STEP1

 地盤やグラウトに関する論文を15冊分ほど読み、グラウトが使用されている現状など、社会的な背景について学びました。専門的な研究が進んでいない未開拓な分野なので、文献や資料を探すのに苦労しましたが、ゼミの小山先生に協力していただき、先生の研究室にある貴重な論文なども読ませていただくことができました。

STEP2 シミュレーションのためのシステムを構築
STEP2

 グラウトの動的注入工法では、セメントと水を振動させながら圧力を加えて注入していきます。セメントと水の配合の違いはもちろん、振動の振れ幅や圧力によっては岩盤の割れ目にうまく入らず、詰まってしまうため最適な地盤強化にはなりません。私は、この振動と圧力の割合を少しずつ変えて、最適な条件を探るため、パソコンでシミュレーションを行えるシステムを半年間かけて作成しました。同じ研究に取り組んでいる学生がいないため、試行錯誤の連続でしたが、なんとか完成しました!

STEP3 シミュレーション開始
STEP3

 2台のパソコンを使ってシミュレーションを開始しました。1回のシミュレーションで、1度に5パターン同時進行させて毎日データを収集しました。結果が出るまで8時間かかるため、1日最大10パターンまでしかデータを得ることができません。これを約1ヵ月間毎日繰り返し、現在は最適な数値に近いと思われるデータを得ることができましたが、まだ納得のいく結果は得られておらず、現在も研究を続けています。

STEP4 データをさらに分析
STEP4

 グラウト注入は、建設工事で実際に使われている工法のため、現場に生かしてもらうことが最大の目標です。そのため、材料や施工にかかるコストについても最適なデータを探りたいと思っています。
 グラウトを構成するセメントと水の配合では、水が多い方が岩盤に入りやすく扱いやすいという特徴がありますが、セメント量が少ないため、頑丈な地盤になるまでには時間がかかり、また耐水性が弱くなってしまうという弱点がありあます。水とセメントの配合比、振動と圧力、そして注入に必要な時間と材料のコスト。このすべての最適なバランスを探っています。

次にめざしたいStep!  2015年8月に、海外で土木分野の学会があるため、そこでこの研究成果を発表したいと思っています。それまでに、納得のいくデータを得られるよう、研究に取り組んでいきます。学会は英語での発表になるため、英語力の強化にも力を注いでいきたいです。